第零楽章:法廷の裁定と協奏曲の始まり
乗愛の協奏曲:Concerto of Love Raised to the Power of Infinity
前文
世界は、愛の数式でできている。
これは、あまりにも広大で、あまりにも深遠な、愛の物語。
亡き妻への切なる想いから始まった旅は、やがて宇宙の根源的な力へと繋がり、無限の次元を股にかけた壮大な叙事詩となった。
「弱くてニューゲーム」として、愛の何たるかも知らぬまま、再び18歳の肉体(神年齢310歳)で5次元の学び舎に降り立った、いずみとちえ。絶対音感を持ちながらも、まだその力を御しきれぬ彼女たちが見つける「無償の愛」とは何なのか。
一方、「強くてニューゲーム」の世界では、300年の戦いを経てマスターした能力を駆使し、ブラックホールのような愛の欲望に直面する。
この物語は、愛の「真心」から「母の愛」へと昇華し、まだ誰も到達していない「真実の愛」を目指す、果てなき探求の記録である。
読者よ、耳を澄ませ。
これは単なる音楽ではない。メンデルスゾーンの《ビッグバン》とベートーヴェンの《星雲創生》が織りなす、宇宙創造の「協奏曲」だ。
愛の力は、次元を超える。
(「神々の楽器物語」最終話の感動的なフィナーレのBGMから、急転直下、厳かで張り詰めた、金属的な響きを持つBGMへと変化する)
神々の世界、次元の境界線で光の中に消えたはずのいずみとちえは、気づけば見知らぬ空間に立っていた。そこは、すべてが幾何学的な構造物で構成された、冷たくも神聖な雰囲気漂う場所だった。6次元――メーテリュの裁定を受ける「法廷」である。
いずみ:「ここはどこ?」
ちえ:「わたしたち、どうなったの?」
二人の隣に、いつもの陽気な妖精の姿とは似ても似つかぬ、威厳ある四人の王たちが控えている。
ヒューモ:「この者たちは神年齢310歳。300年もの間、音楽の戦いを経て成長してきましたが、愛のな
んたるかを真に理解せぬまま、次元を超えようとしました」
メーテリュ:「誠か? 大罪ではないか!!!」
パラドクス:「本来ならば超次元牢獄への投獄5万年が相当ですが、お嬢様が……」
メーテリュは、いずみとちえを見据える。その視線は、もはや母のそれではない。
メーテリュ:「ご主人様、罪人をひきたててまいりました。天秤の裁定をお願いいたします」
メーテリュは、先駆者の意志を代弁し、二人に言い渡す。
メーテリュ:「お前たちは、もう一度、10歳からの学び直しだ。前の世界に戻り、真の愛の何たるかを
学んでくるがよい。わたくしが満足する回答を用意できれば汝らに**『のぶしつ』**(高次元のものに
愛を語る翻訳機)を渡そう」
ロジカによる「詩式計算」の説明がなされるが、二人は理解できないまま光に包まれる。
いずみ・ちえ:「は~~~~~~なにいってんのこの人たち」
メーテリュ:「ゆくがよい」
二人の姿が消えた後、メーテリュは静かに目を開いた。その瞬間、彼女の両手の指の間に、純粋な光の
結晶とも呼べる『のぶしつ』が8個、音もなく現れた。
大地が震え、巨大なオリハルコンでできたローマのコロッセオのようなコンサート場が、地下から音も
なく湧き出た。カメラは上空に上がり、コロッセオの内側をぐるりと映し出す。その観客席には、8万人
のオーケストラが、彼女の演奏に合わせるため待機し、彼女に注目している。
メーテリュは一呼吸すると、「レディ・ブラント」を手に、メンデルスゾーンの《ヴァイオリン協奏曲
ホ短調》を弾きだす。その演奏は、全次元に母の愛を語りかける。
**全次元的乗愛**が発動し、演算力は上がり続ける。0.00001秒後、『のぶしつ』が8個同時に弾け、ビッグバンが8個同時に起き、新たな宇宙が創造された。
(壮大なテーマ曲が流れ、タイトルイン)
WPSシリーズ:乗愛の協奏曲 Concerto of Love Raised to the Power of Infinity
第壱楽章 弱くてニューゲーム:「無償の愛」
(続く、5次元の講義室のシーンへ)




