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第5章:土と光と、私の再起動(リブート)

源さんの言葉は、私の頭の中に、まるで古いOSに新しいパッチを当てるように、じんわりと染み渡った。システムは、ただ動けばいいってもんじゃない。土を耕すように、ゆっくりと、手間をかけて育むものなのかもしれない。私は、初めて、キーボードから手を離し、縁側で空を見上げた。


その日以来、私はシステム構築の傍ら、源さんの手伝いを始めた。畑仕事を手伝ったり、薪割りをしたり。泥だらけになりながら、生まれて初めて土の感触を指先で感じた。スマホの冷たい画面では決して味わえない、温かい感触。最初は不慣れでぎこちなかったが、少しずつ体が順応していくのがわかった。


合宿所の若者たちも、デジタルデトックスが進むにつれて変化していった。最初は不満ばかりだったアカリも、日が経つにつれて表情が柔らかくなった。化粧は薄くなり、常にスマホを握っていた手には、いつの間にか小さな野花が握られていた。


挿絵(By みてみん)


ある日のこと、突然、合宿所の電気が完全に落ちた。源さんが確認に行くと、落雷で電線が損傷したという。復旧には数日かかるらしい。合宿所全体が、本当の闇に包まれた。若者たちはパニック寸前。


「スマホの充電も残り少ないのに!」「どうしたらいいの!?」

彼らの声が、不安を煽る。その時、私の頭の中に、源さんの言葉が響いた。「システムとやらは、木を育てるのと一緒だ」。


私は、冷静に状況を判断した。バッテリーの残量、食料、そして…人々の心の状態。私のデジタル脳が、こんなアナログな状況で、フル稼働しているのが不思議だった。


「大丈夫。落ち着いて」

私が声をかけると、驚いたようにみんなが私を見た。普段の私は、感情を表に出さないクールな情シス。そんな私が、今、彼らを落ち着かせようとしている。


私は源さんと協力し、みんなで力を合わせて対処した。懐中電灯を頼りに、食料を分け合い、焚き火を囲んで暖を取る。夜には、源さんが昔の物語を語り、みんなで歌を歌った。


アカリは、スマホで撮り溜めた写真を見返す代わりに、スケッチブックに風景を描き始めた。他の若者たちも、スマホゲームの代わりに、トランプをしたり、昔話に花を咲かせたり。デジタルが使えない状況で、彼らは「人との繋がり」を再発見していた。


数日後、電気が復旧した。しかし、誰もが以前のようにスマホに飛びつくことはなかった。アカリは、描きかけのスケッチブックを広げ、源さんと楽しそうに話している。他の若者たちも、デジタルの便利さを享受しながらも、以前のような依存状態には戻っていなかった。


私は、合宿所のシステムを無事に稼働させた。高速なWi-Fi環境も整い、クラウドサービスも利用できる。都会のオフィスと遜色ない環境だ。しかし、この場所には、私が構築したシステム以外にも、目に見えない「システム」が息づいていた。それは、自然のリズムであり、人々の温かい繋がりであり、そして、自分自身との向き合い方だ。


帰りの列車の中、私は窓の外の景色を眺めていた。スマホは、もう充電切れの心配をするほど気にならなかった。私の指は、無意識に土の感触を求めていた。都会に戻れば、またデジタル漬けの毎日が待っているだろう。だけど、もう、以前の私じゃない。私の心には、あの古民家で手に入れた、小さな苔玉が置かれている。


「ただいま」

私は、自分自身にそっと呟いた。デジタル社会の渦中で、私は「私」を再起動リブートしたのだ。そして、この新しい「私」なら、きっとどんなエラーにも対応できると、そう確信していた。私のデジタルデトックス・サバイバルは、今、最高の「完了」コマンドを実行した。

あとがき:電波よ届け、私の愛!


皆さん、こんにちは! デジタルデバイスとガジェットをこよなく愛し、日夜キーボードを叩きまくっている作家の私です。この度、渾身の力作『デジタル泥んこサバイバル』、ついに完成いたしました!読み終えてくださった皆さん、本当にありがとうございます! 電波が届かない山奥で、情シス女子が泥まみれになりながらも、心とシステムを「デバッグ」していく物語、いかがでしたでしょうか?


さて、この物語、実は私の実体験がほんの少しだけ…いや、ほんの少しどころか、私の「もしスマホが圏外になったら死ぬ病」をベースにしています。「もしも私が、文明の利器を一切使えない場所に放り込まれたらどうなるんだろう?」そんな「充電切れの悪夢」から、この物語は生まれました。普段、私たちはどれだけデジタルに依存しているんだろう? そんな問いを、主人公のくるみに託して、コミカルに、そして時にじんわりと描いてみたかったんです。


執筆中は、まさに「デジタル泥んこサバイバル」状態でしたね。プロットを練るために、あえてスマホの通知をオフにしてみたり、Wi-Fiを切ってみたり…ええ、たったそれだけでも指が震えましたよ。くるみが泥だらけになるシーンでは、私も心の中で一緒に転がってましたし、サーバーが言うことを聞かない場面では、自分のPCを慰めるように撫でてました(笑)。特にこだわったのは、情シスならではの専門用語を、いかに読者の皆さんに伝わるように、そして笑える要素として散りばめるか。「人生、バグだらけだけど、自分自身をデバッグすればいいんだ!」というメッセージが、少しでも皆さんの心に響いたら、これ以上の喜びはありません。


私にとって、デジタルガジェットは単なる道具じゃないんです。それは、世界と繋がる窓であり、無限の可能性を秘めた相棒 でも、時にその「繋がり」が、私たちを息苦しくさせることもある。この物語で伝えたかったのは、デジタルもアナログも、どちらか一方が優れているわけじゃないということ。くるみが源さんの言葉に触れ、苔玉を大切にするように、私たちも自分にとっての最適な「バランス」を見つけることの尊さです。


さて、読者の皆さんとの繋がりを深めたい私としては、ぜひ皆さんの感想を聞かせてほしいんです! 「くるみに共感した!」「アカリの変貌に感動した!」「源さんのセリフ、刺さった!」など、何でも構いません。コメント欄やSNSで、ハッシュタグ「#デジタル泥んこサバイバル」をつけて、あなたの心の声を聞かせてくださいね!


そしてそして、実は今、次回作も密かに構想中なんです! 次はなんと、IT企業のオフィスで巻き起こる、AIと人間の「ドタバタ業務改善バトルコメディ」を考えています。「うちの会社にもこんなAIがいたら…」と、クスッと笑えて、少しだけ考えさせられる、そんな物語になるはず。どうぞ、ご期待ください!


最後に、この物語を読んでくれた皆さん、そして日頃から私の作品を応援してくださる全ての読者さんに、心からの感謝を。皆さんの応援が、私の創作活動の「電源」です!また次の作品でお会いしましょう!

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