第8話 進展
◇信頼と不満◇
「…濱嶋団の団員が裏切り?でもあいつ等も来田に資金を援助してもらってたんじゃないのか」
「そうだよ。だけど来田の度が過ぎた行動に、濱嶋団の団員も不満を持っていたんだよ。だから一部の団員が企てたんだ。"来田を潰す計画"をね」
濱嶋団の団員までもが不満を持つなんて、一体何をやってたんだ来田は。
「そして私は彼らと手を結んで、映像を手に入れたってことさ」
…コイツもコイツで何やってんだ。
何で暴力団と関係を持てるんだよ。
「でも、これだけじゃ証拠が薄いから、もう少し時間がほしい。裁判まではまだ時間があるから、君も頑張ってね」
なるほどな。
あくまで現状報告と。
まあそう簡単に何個も証拠は掴めないよな。
土田も頑張ってくれているんだ、俺も頑張らないとな。
…って、そう言えば一つ聞き忘れていたことがあったな。
そう思い俺は土田を引き止める。
「なあ土田、最後に一つ気になることがあるんだが」
「何?今まさにクールに立ち去ろうとしていたのに」
そう言いながら、土田は俺に向けてキメ顔を向ける。
アニメだったら周りにキラキラでも飛んでいそうなほど腹立たしい顔だ。
「いちいちキメ顔をしなくていい。俺が気になったのは、面会をしに来た連中についてだ」
「面会…、そう言えば何人か来てたね。海城組長に、濱島団長とかだったかな」
面会のことは土田にまだ詳しく話していなかったはずなのに、当たり前のようにポンポンと人を言い当ててくる。
多分敵に回しちゃいけないタイプの人間だな恐怖の対象だなこりゃ。
そう思いながらも俺は気持ちを入れ直し、土田にかねてよりの疑問をぶつける。
「ああ。俺が気になったのはそこなんだ。何で反社会勢力の奴らが警察署に面会に来れているんだ?」
俺の問を聞くと、土田まで難しそうな顔をした。
しかしその顔を拝めるのはわずか数秒しかなく、直ぐに答えが返ってくる。
「その理由は私も分からない。でも来田が何かしらの手を仕込んでいるのは確かだよ」
…流石の土田でもわからないことがあるのか。
俺はそのことに衝撃を受けつつも、感謝の意を伝える。
「そうか…。まあそれが分かっただけでも1つの収穫だ。ありがとうな」
「うん。それじゃあ今度こそ本当に面会終了!君も頑張ってね」
「ああ」
俺達は軽く会釈した後、面会室を後にした。