第47話 電話と謎
◇人物不明な謎◇
ティータイムを終えた後、俺は一旦海城組本部に戻ってきていた。
ある程度の作戦はカフェで話してきたため、特にやることもなくなってしまった。
まあこうして1人で自由に過ごせる時間も、最近は中々取れていなかったし、たまにはいいなと思いながら部屋の椅子に腰を掛けた。
現在の時刻は3時30分、カフェで昼食も済ませていたので、小腹が空いているなんてこともない。
だが俺はリラックスができる唯一の時間なのに、何故か身体が縮こまってしまっていた。
そりゃそうだろう。
俺のスマホの着信履歴を見たら、ありえないぐらいの土田からの不在着信があった。
それも5分置きぐらいでかけてきている。
何かしらの急用なのだろうか?
それとも俺と華音が、土田に内緒で2人で任務に挑んだことに気づかれたのだろうか?
でもそれはしょうがないだろう。
華音の恐怖心の元凶は土田でもあるのだから、変に話すと華音の状態が悪化しかねない。
まあ田嶋にも手を回してもらっているから、そう簡単にバレることはないだろうけどな。
そう気持ちを落ち着かせ、俺はスマホの着信履歴ボタンをタップし、土田に電話をかける。
プルルルル…プルルルル…。
「もしもし、君やっと出たね」
「いろいろ忙しくてな、連絡できなくて悪かった」
不貞腐れた声で応答した土田に、俺は軽く謝っておく。
「それで用件は何だ?土田がここまで連絡してくるのも珍しいだろ」
俺は純粋な疑問を土田にぶつける。
「別に〜、君の声を聞きたかっただけだよ。最近は盟約者を差し置いて違う女と楽しそうだからねぇ」
土田が嫌味のようにそう言ってくる。
「別に華音とは何もねえよ。田嶋も似たような勘違いをしていたが流行ってるのか?」
「流行ってはいないさ、ただ君の思わせぶりな行動がホストみたいだなーと…」
「誰がホストだ!」
俺は土田の謎発言に、激しく反応する。
その声を聞き、土田は馬鹿にする様にクスクスと笑っている。
本当に相変わらずだな。
「まあそんな話はどうでもよくてね。来田について少し気になる情報が入ったから、それを君に伝えたかったんだよ」
そんな話って、土田が始めたことじゃねえか。
そう思いながらも俺は、その気持ちを押し殺す。
「それはね…、来田は今アメリカにいるらしいんだ。それも"マフィア"に会いにね」
「は?」
俺は口が詰まってしまった。
当然マフィアのことも驚いたが、それよりも気になるのが、来田が日本にいないことだ。
だって俺は今日、来田と思われる人物に呼び出されているんだぞ。
でもそれが来田ではないとしたら、いったい誰なんだ?
頭の中で様々な憶測が駆け巡る。
もしかすると濱島団の連中か?
いや、来田が暴力団をそこまでは信用するとは思えない。
じゃあまた別のヤクザか?
それとも来田と手を結んだ会社の奴が仕組んだのか?
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
「どうやらこの情報は、君にとっては良い情報だったのかもね。それじゃ私は特に用事もないから切るね〜」
俺の沈黙に何かを察したのか、土田はそう言ってすぐに電話を切ってしまった。
本当に能天気な奴だな。
そう思いながら俺は、謎になってしまった人物の正体を相談ために、部屋の扉を勢いよく開き、華音の部屋へ向かった。
 




