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不倫盟約  作者: 鍵香美氏
第5章 動乱編
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第45話 消えた男と謎のファイル


 会社に入るとそこには、俺にとっては見慣れた、ただっ広いエントランスが広がっていた。

 ブザーが鳴らないということは、おそらく潜入は成功ということだろう。

 俺は会社勤め時代を思い出しながら、エレベーターでデスクのある階まで向かった。

 俺の記憶では、"福田"と俺のデスクは隣同士で、いつも何かと話していたのを覚えている。

 まさか俺が、"福田"になるとは考えてもいなかったが。


 エレベーターから降りて少し歩くと、"福田"のデスクは依然と変わらぬ場所にあった。

 だが変わっているのは俺のデスクがあった場所だ。

 俺は勝手に辞職された扱いになっているため、跡形もなくその場所はなくなっていた。

 まあ特にショックだとかそういう感情は湧いてこない。

 会社の人自体は悪くなかったが、何せトップが来田だからな。

 まあ今はこんな私情どうでもいい。

 まずは情報を集めないとな。

 そう思い俺は"福田"のデスクに座り、パソコンをログインした。

 パソコンのどこに秘密が隠されているかは分からないが、ひとまず俺が田嶋から教わったルートで、周りにバレないように探ってみた。

 しかし、どのルートでどのツールを使っても、パソコンは有用な情報を吐いてはくれなかった。

 やはりこんなところにも来田の注意深さがでているのだろう。

 そう思い俺は一旦すべてのタブを閉じて、新たな作戦を練ろうとした。

 

 しかしその瞬間、パソコンのホーム画面にある、"謎のファイル"が目に入った。

 ファイルの題名は"mt3kmkj"と入力されている。

 周りには普通の題名なのに、1つだけタイピングミスをしたようなファイルを見て俺は、思わずダブルクリックをしてしまった。

 罠だとしても分かり易すぎる。

 普段なら絶対に押さないのに、本能的に手を止められなかった。

 すると少しのロードが済んだ後、パソコンの画面に"謎のQRコード"が表示された。

 逆にQRコードしか表示されていないため、俺は少し不安になった。

 だが俺は、恐る恐るスマホを取り出して、それを読み込んでみた。


 するとそのスマホの画面に表示されたのは、衝撃的なものだった。


 ーー今日の深夜0時、お前が牧野怜奈と過ごしていた場所に1人で来い。ーー


 たった一文だけが表示されたのだ。


「は?」


 俺はつい口に出して困惑してしまった。

 すると遠くから、俺と"福田"の同期の"寺井"が、


「何かあったのか?」


と言いながら近づいてきた。

 俺は反射的にパソコンのタブを閉じ、スマホをポケットにしまった。


「ごめん、ちょっと間違えただけだから大丈夫だよ」 


 俺は怪しまれないように、何とか応答する。

 しかし、会社のパソコンに辞職したはずの俺の名が何故隠されていたんだ?

 そして、何故こんなにも分かりやすい位置においてあるんだ?

 もしかすると来田は、"俺が今日潜入すること"を知っていた?

 俺の頭で、数々の仮説が交差する。

 俺は、さらに考察を加速し始めたところで、華音からメールが送られてきた。

 何だろうと思い、メールを開いてみる。


 ーー時間的にもうすぐターゲットが帰ってくると思う。急いで戻って来て。ーー


 俺はこのメールを見た瞬間急いで飛び上がり、


「トイレ行ってきます!」


と言いながら急いでエレベーターまで張り、エントランスまで戻った。

 正直色々考えたりすることが多すぎて混乱してきたが、俺は周りに怪しまれないよう再度注意しながら、会社を後にした。


  

 

 


 

 

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