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不倫盟約  作者: 鍵香美氏
第4章 潜入編
35/57

第35話 少女の危険

   ◇少女の登校◇

 牧野さんが見送ってくれた後、私は静かに学校までの道のりを歩いた。

 いつもは朝が苦痛なのに、何故か今日は気分が良い。

 学校に行っても周りから恐れられ、誰にも話しかけられない私が、何故か今笑ってしまっている。

 それが何故なのかは分からない。

 やはり、牧野さんの影響なのだろうか。

 まあそんな事は考えても仕方ないかと、思考を放棄する。


 30分くらい歩くと、私の通う高校、景栄高校(けいえいこうこう)が見えて来た。

 景栄高校は、様々な事情の生徒を受け入れてくれる、いわば裏社会の教育組織だ。

 とはいえ行われる授業は、普通の高校の教育課程と変わらないため、とくに不安に思うことはない。

 それに、この高校に通う生徒は大体海城組以下の組織の子供だ。

 私に危害を与える人間はそうそういない。

 そのため私は非現実ながらも、現実に近い教育を受けているわけだ。

 何も困ることはない。

 そう思いながら私は歩みを進め、校舎へと入っていった。



   ◇急変の使者◇

 私は校舎に入ると、そそくさと歩みを進ませ、すぐに教室に入り、席に着いた。

 そしてお気に入りの本を開き、その文字を読む事に意識を集中させた。

 基本ひとりぼっちな私は、本当にやる事がなく、退屈な日々を過ごしている。

 だから私は、できる限り1人で出来ることを、普段からの探すようにしている。

 その時にたどり着いたのが、この読書だ。

 読書は良い。

 読むだけで一般社会の流れを知ることができ、一般人の考え方を学ぶ事が出来る。

 別に友達が欲しいわけじゃないけど、今後のコミュニケーションのためには必要な事だ。

 いつか使う日が来るはずだからね!

 そう思いながら本のページを着々と進めていると、急に校内中にうるさい音が鳴り響いた。


 ビービービー!


 私は何事かと思い本を閉じ、周りを見渡すと、さっきまで普通に過ごしていた人達が、血を流して倒れていた。

 

「どういう事?」

 

 私が呟くと、背後から野太い男の声が聞こえた。


「マイペースな奴だな、田嶋のとこの女。それとも単に、ビビり過ぎて声もでねえだけか?」


「ごめんなさい。私、集中すると周りが見えなくなってしまうの」

 

 茶髪のロングヘアーの男の煽りに、私は声色を変えて返答する。

 私お得意の威圧だ。

 これに動じなかったのは過去に2人、父さんと牧野さんだけだ。

 だから私は、油断していた。


「へっ、やっぱりマイペースなだけか。そんなお前に1つ教えてやろう、俺はお前をさらいに来たんだ。来田正成さんの命令でな!」


 男はまったく動じる素振りを見せず、そう言った。

 私の威圧感を受けないことへの驚き、その感情がいつもの私にはあったのかもしれない。

 だが私は、ある一言を聞いた瞬間、我を忘れていた。


 来田正成、私の母さんを殺した男…!

 許せない。 


 その感情を抑えられず私は、スカートのポケットに入れていた小型ナイフを手に取り、男に斬りかかろうとした。

 だが、正気を失った私の攻撃を避けるのは、男にとって容易かったのだろう。

 私の攻撃は無情にも空を切り、そのまま私は、背後からスタンガンを当てられてしまった。

 一瞬にして身体中を襲う電撃。

 私はそれに耐えきれず、倒れ込んでしまった。


「口程にもない女だ。正直がっかりだぜ」


 男の勝ち誇った声が聞こえてくる。

 私は、殺されてしまうのだろうか?

 母を殺した来田正成への復讐も、今まで1人で私を育ててくれた父さんへの親孝行も、牧野さんに感じた運命の正体の確認も、まだ何ひとつ達成出来ていない。

 そんなままで、私は死にたくない!

 私は強くそう思った。

 だから私は最後の力を振り絞って、胸ポケットに隠してあった、"あるボタン"を押した。


『助けて、牧野さん…』


 私はそう強く願い、そのまま意識を失ってしまった。


 



 

 


 

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― 新着の感想 ―
Xの方から伺いました。 不倫だったり殺人事件だったり、ネット小説の流行から外した感じの要素を詰めているのは個人的にシンパシーを感じます。私も裏社会絡ませた物語を書くのが好きです。 ただ、物語の運び…
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