第33話 男の不安
◇条件◇
田嶋の衝撃の告白から翌日、今日は特に変装する必要もないので、俺は余裕を持って家を出た。
昨日は土田に会うのが怖かったが、何故か家に帰ってきていなかった。
仕事が忙しいのだろうか?
俺としてはラッキーだが、少し心配だな。
まあ土田にみたいな奴が、やらかすことは無いだろうけどな。
そう思い俺は、もう見慣れた海城組の本部への道を歩いた。
海城組の本部に来ると、俺はすぐに組長室に呼び出された。
仕事の内容でも話すのだろうか?
そう思い俺は、長い廊下を歩き、組長室の扉を開けた。
すると、昨日ぶりの男が、昨日の雰囲気からは考えられないような明るい声で挨拶をしてきた。
「よう、昨日ぶりだな」
「お前、仮にも組長だよな。もう少し緊張感を持ったらどうだ?」
「うるせえよ。お前だって昨日までみたいな、ぎこちない敬語を使ってくれていいんだぜ」
俺が皮肉混じりに言葉を発すると、田嶋も負けじと反論してくる。
実は昨日の雑談で、歳の差はあれど話は合う事が分かった俺たちは、何故か一気に仲良くなった。
だからもうお互い友達感覚だ。
「まあそんなことはどうでもよくてだな、今日お前を呼び出したのは、お世話係をやる上での"注意事項"を伝えるためだ」
田嶋が明るい雰囲気を打破するかのように、本題に入ってくる。
まあ大事な娘を預けるわけだし、田嶋も不安なんだろうな。
そう思い俺は、田嶋の話を黙って聞く事にした。
「注意事項は3つある。1つ、華音は1人でもある程度家事ができるからあまり手を貸すな!困っていた時にだけ力を貸せ。」
まあそれは分かるな。
我が娘の将来の独り立ちを考えると、ある程度のスキルは必要だし、経験をさせておこうという魂胆だろう。
「2つ、華音に身の危険が起きたら守ること!もっと言うと、未然に防ぐのが好ましい!」
まあこれも分かる。
田嶋は日本中に影響力を与える、海城組の組長だ。
当然しょうもない事を考える輩もいるだろう。
未然に防ぐのは流石に厳しいと思うが、土田がくれた護身用アイテムを使えば、これもなんとかなりそうだ。
「3つ、華音に手を出すなよ」
「出すわけねえだろ!」
気づいたら大声が出ていた。
本当に田嶋は、俺を何だと思ってるんだ。
その反応を聞いた田嶋は、ガハガハと笑いながら、
「そりゃそうだろうな!お前には土田さんがいるもんな!」
と言ってきた。
まじで何なんだコイツ…。
そう思っていると、田嶋は急に冷静な顔になって、
「本当に頼むぞ。今年17の娘を29の男に渡すなんて、絶対にしたくないからな」
と、さらに釘を刺された。
どんだけ俺への信頼ないんだよ、とは思ったが、俺はそれを了承して、ある程度仕事内容の再確認をした後、部屋を出た。
次の仕事は華音の起床確認らしい。
しっかりしていると言うので、俺は少し安心し、華音の部屋まで歩いた。




