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不倫盟約  作者: 鍵香美氏
第4章 潜入編
32/57

第32話 少女の独り言

本心を隠す少女の、語られる本音…

 ◇少女の本音◇

 私の名前は田嶋華音…いや、本名は違う。

 "坂倉静華(さかくらしずか)"、それが私の本当の名だ。

 わけあって今は、正体を隠して生活している。

 

 私は若い頃、ひどい事件に巻き込まれたらしい。

 どうやらその事件の真犯人を探るために、本名を隠す必要なあるらしい。ここまでは父から聞いている。

 だが私は、幼い頃の事件の内容を"覚えていない"。

 だから私は、その事件がどんなものなのか、どうして私は本能的に、自分の本心を本能的に隠すのかが分からなかった。


 そう、あの時までは。


 私が夜道で出会ったあの男、佐野雄也…いや、本名は"牧野大気"だったかな。

 彼に出会った瞬間私は、不思議な感覚がした。

 ヤクザ事務所の組長の娘として、周りからおそれられる人間を演じていた私に対して彼は、全く恐れる素振りを見せなかった。

 私はこれまで恐れられてきたのに、彼だけは私を分かってくれるかもしれない。

 そう思った。

 だから私は、父に彼にもう1度会ってみたいと伝えてみた。

 この運命を離してはならないと思ったから。

 

 しかし、そんな矢先、ある出来事が起きた。

 ある日、父に呼び出されいつも通り組長室に行くと、父に


『少し待っていろ』


と言われた。

 何かあるのだろうか?また仕事の相談だろうか?

 そう思っていた。

 だが、しばらくして現れたのは衝撃の人物、"牧野大気"だった。

 父は私の願いを叶えてくれたのだろうか?

 そう思っていたのに、目の前で繰り広げられたのは、私も知らない父の"昔の話"で、その中にはあの事件の内容も含まれていた。

 正直混乱した。

 今まで離されてこなかった事が、予告もなしに一気に暴露されたのだから当然だ。

 だが私は、また本心を隠してしまった。

 本当は公開された私の母を殺した犯人、"来田正成"を恨んでしまった。

 今すぐにでも殺したいと思ってしまっていた。

 だが私は、『仲間外れ、ずるい!』という、今考えると物凄く恥ずかしい言葉で誤魔化してしまった。

 それもこれも全部、牧野さんのせいだ。

 彼がいたせいでつい焦ってしまった。

 いつもだったらもっと冷静に、クールに対応できたはずなのに…。


 そこから話の流れは、牧野さんを私のお世話係にする方向に舵が切られた。

 正直今年で17歳になる私にお世話係をつける必要はないのでは?

 そう思ったけど、反論はできなかった。

 これが父の善意であることも分かってたし、何より私が牧野さんに興味が湧いてしまっていたから。

 彼の持つ恐れを知らない優しい目に、もう1度包まれてみたかったからかもしれない。


 そんなこんなで決まった、明日からの"牧野さんとの"生活。

 私は、『早く明日にならないかな』なんて考えながら、布団に潜り、眠りについた。

 

 


 

 


 

 

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