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楽しむ時は楽しむ、それでいいんだって

「碧、生徒会の仕事も大事だけど休んだ方がいいよ」


 中学の時、同じく生徒会に入っていた優愛が、よく俺のことを気にかけてくれた。


 あの頃は親の期待に応えようと必死だった。父親にごちゃごちゃと何かを言われないような完璧な自分でいた。


 けど、そんな自分でずっと居続けるのは不可能だった。苦しくて、何かを失っていくあの感覚は今でも覚えている。


 高校に入ってからは目立たず、友達は数人だけ。できるだけめんどうなことから避けて、父親の言うことは適当にやってきた。


「また学年5位……。最近、勉強がおろそかになってないか? 勉強しに行くと言って遊んでるんじゃないだろうな?」


 1年の1学期の成績を見た父親に呼ばれ、目の前に座り、俺は、怒られていた。


「遊んでないよ……晃太と香奈とはちゃんと勉強会してたって」


 しつこく言われるのでややキレ気味な口調になってしまった。たまに嘘をつくが、3人で勉強会をやっていたのは事実だ。軽い雑談はしていたが。


「達也さん、碧に少し厳しすぎません? 碧も頑張っているんですし、たまには友達と遊んでもいいと思いますよ」


「碧のためを思って言っているだけだ。ちゃんとやっていたら遊ぶことを許す」


 俺のため? 俺は、父親に何を期待されているんだろうか。父親に何を言われても俺は、自分が決めた道を進む。


 親に決められる進路じゃなく自分が決めた進路に向かって。






***





「嫌な夢だ……」


 修学旅行最終日の朝。目覚めは最悪だった。父親に説教される夢なんて見たいわけない。嫌な過去を思い出し、いつもより早くに目が覚めてしまった。


 晃太と陸斗は、まだ寝ていた。朝食まで少し時間があり、もう一度寝てもいいが、二度寝できそうにない。


 外の空気に当たろうと部屋から出てエレベーターで1階に降りた。


 ホテルの入り口を出てうんと背伸びをした。朝だからか涼しく少し肌寒かった。


 夢のことなんか忘れて今日、瑞季と観光することだけを考えよう。どこに行くかは2人で何度か話し合って決めていた。


 寒くてすぐにホテルに戻り、部屋でごろごろしていたらあっという間に時間が過ぎ、朝食の時間になる。


 朝食後は、完全に自由で1時までにホテルに戻ってきてチェックアウトしなければならない。大きな荷物は食後すぐにトラックで運ばれていったので今手元にある荷物は小さめだ。


「碧は、瑞季さんとどこ行くんだ?」


 香奈と観光するらしい晃太は、忘れ物がないか確認しながら聞いてきた。


「いろんな店がある通りに行こうかと。晃太は?」


「俺達も同じ感じかな。よし、忘れものはなさそうだな。そう言えば陸斗は?」


 食事会場から帰ってきた様子がない陸斗はまだ部屋に荷物が残っていた。


「さぁ、俺達、結構早めに食事会場からここに戻ってきたしまだ食事会場じゃないか?」

 

「そうかもな。まっ、念のため忘れ物するなよってメールしておくわ」 


 晃太も香奈と下のエントランスで待ち合わせらしく下まで一緒に行くことにした。


「お待たせ、瑞季」


「では、行きましょうか」


 香奈はまだ来てないようで先に俺と瑞季は、ホテルを出た。ここから目的地まではバスで移動できると先ほどホテルの係の人に言われてバスに乗ることにした。


 ホテルから出ているバスなので空いていた。横並びに座り、バスはすぐに出発した。


「私、いろいろ調べてきたんですよ。お土産は荷物になるのであまり買えませんが、楽しめる場所みたいです」


「そうみたいだな。お昼ご飯とか食べたい店あったか?」


「お昼に食べていいのかわかりませんが、このジェラートが美味しそうでした」


 そう言って瑞季は、スマホの画面を俺に見せた。画面に映るのは、食べたら冷たそうなジェラートだった。


「確かに美味しそうだな。けど、冬は寒くてあんま食べる気にはならないな」


「そうですね。ですが、せっかく来たのですから食べてみたいです」


 バスから降りた後は、いろんな店を何件か回ることにした。


「綺麗なネックレスですね」


 瑞季は、青いガラスが付いたネックレスを見つけてうっとりしていた。


「綺麗だし高そうだな……」


「ですね」


 瑞季にプレゼントしてあげたかったが、この店にあるアクセサリーはほとんど2万円以上でとてもじゃないが、俺には買えなかった。





「やはり冬にジェラートを食べるもんじゃありませんね」


「そうか? 俺、結構冬にアイス食べたりするタイプだから。逆に夏の方が食べる機会少ないかも」


「凄いですね。私には無理です」


 そう言いながら彼女はジェラートをぱくっとゆっくり時間をかけて食べていく。



「癒し・安らぎ……」


「何かいいのあったか?」


「いえ、この水色のブレスレット、癒し・安らぎという願いが込められているそうなんですけど、碧くんといるだけで私は癒されてますのでこれは必要ないなと思ってたんです」


 俺は、いつから癒されるマスコットキャラクター的存在になったのだろうか……。


「綺麗な色だな」


「そうですね。碧くんなら何色がいいですか?」


「そうだな……」


 色は何種類かあり、白が財運・開運、青がモテ運、緑が健康運、赤が勝負、オレンジが金運・友情運、ピンクは恋愛・幸運と願いが込められていた。


「願いを考えたらピンクかな。瑞季は?」


「私は緑ですね。何事もなく健康で過ごしたいので。そろそろお昼にしませんか?」


「あぁ、そうだな」


 店を出て、昼食を取った後は、空港に向かった。もう少しいてもいいが、迷子になった時に焦らないよう早めに行くことに。


「おっ、2人とも早いね」


 空港に着き、バッタリ出くわしたのは香奈と晃太だ。手にはいろんな店の袋を持っており、どれだけ買ったんだよと思わされる。


「香奈達と早いな。集合時間までまだ先なのに」


「空港の中、散策しようってことになったの。みっちゃんと全然写真撮れてないから今から撮らない?」


「えぇ、いいですよ」


 香奈と瑞季は、写真を撮ろうと行ってどこかに行ってしまう。


「どうだ? 瑞季さんとのデートは楽しめたか?」


「あぁ、楽しめたよ」


「それは良かった。今の碧、出会った時より肩の力抜けてていいと思うよ。楽しむ時は楽しむ、それでいいんだって」


「そうだな……」

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