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初めてやるのでお手柔らかに

 プールから建物の中に入った俺と瑞季は、就寝点呼まで時間があったので地下にあるお土産が売っている店へと行くことにした。


「碧くんは、何かお土産買いましたか?」


「買ったよ。これとか……」


「辛子……辛そうですね」


「瑞季は、辛いの苦手か?」


「はい、苦手です。キムチとか明太子とかそういうちょっとしたものでも辛いものは無理です」


 瑞季が辛いものもが嫌いだと初めて知り、そう言えば彼女の好きな食べ物、嫌いな食べ物を知らないなと思った。


 今後、彼女にお弁当を作ってあげる時にそういうの知っていれば何を作るか決められるんじゃないか?


「ちなみに好きな食べ物は?」


「私は、オムライスとチーズケーキが好きです。碧くんは?」


「俺は、ハンバーグと婆ちゃんが作ってくれる味噌汁」


 ハンバーグは、誰が作ってくれたものが好きとかはないが、味噌汁は特に婆ちゃんが作ってくれたのが一番美味しい。


「碧くんのお婆様の味噌汁ですか……」


 彼女は、少し困ったような顔をする。


 俺、瑞季を困らせるような発言したっけ? 好きなものは、ハンバーグと婆ちゃんが作ってくれた味噌汁としか言っていないが、この会話でどこに困らせるような発言を?


「瑞季……?」


「あっ、すみません。ハンバーグ、私も好きですよ、美味しいですよね」


 そう言って瑞季は、店の出口へ向かって歩いていくので俺はその後を付いていく。


 するとポケットに入れていたスマホが振動したのでスマホの画面を見ると香奈からメッセージが来ていることに気付く。


「瑞季、香奈が今から俺達の部屋にトランプしに来るらしいけど、来るか?」


 先生からは、就寝点呼以降はダメだが、就寝点呼までなら自分達の部屋以外の部屋に行ってもいいらしい。

 就寝点呼までまだ2時間ほど時間があったので香奈も行くことにしたのだろう。


「行きたいです」


「ん、じゃあ、行くか」


 1階から俺達が泊まっている部屋へエレベーターで移動し、コンコンとドアをノックした。部屋のキーカードを持たずに部屋を出たため中から開けてもらうことになる。


「おっ、来た来た。どうぞ入って~」


「入ってって、ここ男子部屋なんだが……」


 香奈に突っ込みを入れつつ、部屋の中に入った。瑞季は、何だかそわそわしており、落ち着きがなかった。


「し、失礼します……」


「みっちゃん、彼氏の部屋に来た訳じゃないんだからもっと肩の力抜きなよ~」


 香奈が、瑞季の肩に手を置き、ポンポンと優しく叩くと瑞季は、そんなこと思ってませんと言って否定した。


「瑞季、立ってたら疲れるだろうし座ったら? そこ俺のベッドだし自由に使って」


 瑞季にそう言って、俺は、先ほど買ったミルクティーを飲んだ。


「じ、自由に……」

 

 彼女はそう呟いてゆっくりとベッドに座った。


「じゃ、今から王様ゲームやりま~す!」


「トランプはどうした? ゲーム変わってないか?」


「なんでもいいじゃん。じゃ、トランプ使ってやるよ。4枚のうち1枚がババだからそれ当てた人は、王様ね」


 ルールは、特に特別なものはない。参加者が各自、A、2、3、ババの4枚からトランプを引き、ババ(王様)を引いた人は、「○番と○番が○○をする」と言って「命令」を出す。


「王様ゲーム、初めてやるのでお手柔らかに」


 瑞季のその一言で香奈は、ふふっと笑い大丈夫だよと声をかける。


「王様ゲームは、そんか堅苦しいものじゃないし気軽に楽しもっ。じゃ、カードのシャッフルは、私が────」

「俺がやる」


 香奈が私がやると言う前に言葉を遮り、トランプを彼女からもらう。


 香奈にやらすと不正しそうで仕方がない。俺にトランプを取られて彼女は頬を膨らませていたのでやはり何か企んでいたんだろうな。


「じゃあ、やるぞ」


 カードを右周りで選んでいき、最後に余ったものを俺が選んだ。カードを確認すると2だったので俺以外が王さまとなる。


「王さまだーれだ!」  


「はい、私です」


 瑞季は、ジョーカーを皆に見せた。瑞季になら無茶なこと言いそうにないから安心だ。


「おぉ~みっちゃん! 何でもいいよ」


「何でも……では、1番が2番の好きなところを言うで」


 1番って俺じゃん。さて、2番は……。


「私が2番でーす! 1番は碧だね?」


 まだ1番と言っていないのに香奈は、俺が1番とわかっていた。


「また顔に出てたのか?」

 

「うん、出てたよ。さてさて、碧くんは、私のどこが好きなのかなぁー?」


 なんかうざい言い方だな……。香奈の好きなところか……。からかわれたりするが、香奈は俺の背中を押してくれたり、なんだかんだ一緒にいて楽しい。


「明るいところ」


「ほほう、碧は、私の明るいところが好きなのかぁ~。ありがとね、ちなみに私は碧の優しいところが好きだよ」


「ありがとな」


 1回目が終わり、カードを回収しシャッフルした。2回目、香奈が王さまになった。


「じゃあ、1番の人が幸せを感じた瞬間を発表」


「1番は、私ですね。幸せを感じた瞬間は、香奈さんや晃太くん、そして碧くんといる時です」


「ん~めっちゃいいこと言うじゃん! みっちゃん大好き!」


 香奈は、瑞季にそう言って抱きついた。


「私も香奈さんのこと大好きですよ」


「碧より?」


「同じくらい好きですよ」


 瑞季を困らせるような質問をした香奈は、何やら瑞季とコソコソと話し出した。


「そう言えば、みっちゃんは、碧とどこまでやったの?」


「か、香奈さん!?」


「うそうそ、言いたくないことは言わないでいいよ。もし、碧がへたれすぎるならいつでも言ってね。私が相談乗るからさ」


「……そういう香奈さんは、晃太くんとはどうなのですか?」


 これは、瑞季の香奈への仕返しだった。いつも香奈に聞かれてばかりなので次は自分が聞く側に回ろうと。


「えっと……気になる?」


「気になります。一応香奈さんは、恋愛の先輩ですので参考程度にいろいろ聞きたいなと思いまして」


「さ、参考……。私と晃太がどうかはみっちゃんの想像している通りかな。さて、次行くよ~」


 この後、20分ほど王様ゲームが続き、瑞季と香奈は就寝点呼の時間までに何とか部屋に戻れたらしい。

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