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どんな髪型でも可愛いと思う

 修学旅行2日目。もう少し遅めに起きたかったが、そんなことも言ってられず7時から朝食となっていた。


 部屋から食事会場まで晃太と一緒に行くことにした。15階から地下に降りると瑞季と香奈に会った。


「おはよ、晃太。寂しかったよ〜」


 香奈が側から離れ、1人になった瑞季は、ゆっくりと俺の方に近づいてきた。

 

「碧くん、おはようございます」


 カーディガンを羽織った彼女は、そう言ってニコッと笑う。朝からこの笑顔で癒されるな。


「おはよう。まだ眠そうだな」


「昨日は夜遅くまで香奈さんとさやかさんでお話ししていましたから」


 楽しそうに話すので楽しかったんだろうなとこちらまで伝わってきた。女子が話すとなれば恋ばなだろうか。


 食事会場へ入り、自由に座っていいので瑞季、香奈、晃太の4人で1テーブルに座った。

 目の前にはすでに朝食が置かれており、瑞季と香奈が美味しそうと食べ物を見て話していた。


「碧、みっちゃんにしてほしい髪型とかある?」


「してほしい髪型? 俺は、どんな髪型でも瑞季は可愛いと思うけどな……」


 そう言うと瑞季は、顔が赤くして下を向いた。何か変なことでも言っただろうかと思ったその時、香奈がニヤニヤしていることに気付いた。


「じゃあ、ポニテにしよっか。香奈お姉ちゃんがやってあげるよ~」


「ありがとうございます」


 謎の姉キャラには瑞季は何も突っ込まず、お礼を言う。


 朝食後、部屋に戻る前に4人と軽い雑談をしていると食事会場から出てきた男女混合グループが瑞季のことを話していた。


「俺、実は露崎のこと狙ってたんだどさまさか付き合ってる人いるとか……」

「諦めなよ~」

「露崎さん好きって男子多いよね」

「ほんと。どこに惹かれたの?」

「美人なところ」

「それだけ?」

「それだけだ」

「努力せずに可愛くておまけに勉強できるとか羨ましいけど誰にでもいい顔して、ニコニコ笑ってんのはちょっと私、嫌いかも」

「あーわかる。いい子ぶってて苦手」

「おい、本人聞いてるって」

「うわっ、ほんとだ」


 聞こえてることに気付いていたが、男女グループの誰一人瑞季に何も言わずに立ち去っていく。瑞季のことを悪く言われた気がして俺は、苦手と言った女子に本当のことを言いに行こうとしたが、瑞季に手を握られ、彼女は首を横に振る。


「瑞季?」


「いいんです。努力をしてるかしてないかなんて私のことを知らない人にはわからないのであんな風に言うのもおかしくないです」


「けど……」


「碧くんが何かをすることは何もありませんよ」


 ちゃんと裏で努力してるってさっきの人達に言いたい。けど、勝手に俺が何かしてもな……。言いに行くのをやめたその時、同じく香奈も俺と同じような行動に出ようとする。


「何さっきの人達! みっちゃんは、努力してるって言うのにぃ~。私、1回何か言ってくる!」


 何かってなんだよ。何を言うか考えずに行ったとしても言葉が出てこないまま沈黙で終わる予感しかしない。


「おい、考えてから行動しろ。香奈とは同意見だ。さっきの人は瑞季のことわかっていないだけ。無理やりわからせるのも違うだろ?」


「そ、そうだけどさぁ……」


「香奈さんも碧くんもありがとうございます。怒るようなことを言われたつもりはないので私は、大丈夫です」


 ニコッと微笑む瑞季だが、俺と香奈は、顔を見合わせて本当に大丈夫なのかと瑞季を心配していた。


「まぁ、人にはそれぞれ好き嫌いあるしな。中谷さん達に瑞季さんが努力してることを伝えても相手にとっちゃそれで?って感じになるだろうし」


 晃太がそう言うと香奈は、そっかと小さく呟く。


「私は、ちゃーんと知ってるからね? みっちゃんが頑張り屋ってこと」


 香奈は、真正面から瑞季にぎゅっと抱きつく。


「香奈さん……ありがとうございます」


 何もしなくていいと瑞季は、言ったが、ある人が何らかのことをした結果、数分後、先程瑞季のことを「努力してない」と言った人達が瑞季に謝りに来るのだった。




***




「そのヘアピン、誕生日にあげた……」


 水族館で瑞季と2人で大きな水槽を見ていたその時、ふと視界に彼女が長い髪の毛に付けているヘアピンが入った。


「はい、碧くんからもらったものです。学校では付けてませんが、休日はたまに付けてますよ」


 そう言って彼女は、優しくヘアピンを触った。ポニテにするとか何とか言っていたが、後で瑞季は、何もせず髪を下ろしたままがいいと言ったらしい。 


「髪下ろしてるのが1番好きだな」


「先ほどはどんな髪型でも好きだと言ってませんでしたか?」


「どんな髪型でも好きって言うのに嘘はないよ。けど、その中でも下ろしてる方が好きだ」


「……そんなに顔を見つめて好きって言われると照れます」


 彼女はそう言って視線を斜め下にやり、チラッと俺の方を見てきた。


「碧くん、手繋ぎませんか?」


「もちろん。人多いから俺から離れるなよ」


「わかりました、離れません」


 繋いだ手を離さないよう彼女は少しだけ力を入れた。


「俺は、ちゃんと知ってるからな。瑞季が頑張ってるところ」


「……朝のことそんなに気にしてませんよ。ですが、頑張りを見ていてくれるのは嬉しいです。碧くん、これからも私のこと見ていてほしいです」


「うん、瑞季のこと見てるよ」


 


***




 碧と瑞季が食事会場を出て部屋へ戻っていった30分前。


「みっちゃんは、ああ言ったけどさ……私は良くないと思う」


「まぁ、本人が聞いてて何も言わないのはどうかと思うよな……」


 瑞季と碧が食事会場へ行った後。香奈と晃太は食事会場を出たところに残って先ほどあったことを話していた。


 その時、食事会場から数人の女子が出てきたところを見てあっと声を漏らした。


「あっ、優愛ちゃん!」


 香奈は、優愛を見つけて名前を呼んで手を振ると優愛も香奈のことに気付いた。


「ごめん、香奈とちょい話してくるねぇ~」

「どうぞどうぞ」

「香奈っちじゃん! 私ら、今から部屋戻るから話せないけどまた話そ~」


「うん、話そっ」


 香奈は、交友関係が広く優愛の友達とも親しかった。たくさん友達がいても今は瑞季が1番の友人だ。


「何かあった?」


 食事会場を出た場所にずっといるものだから優愛は、不思議そうに香奈に聞く。


「それがまるまるしかじかで……」


「ごめん、香奈と親しくなっていってもそういう説明して理解できる日は来ない気がする」


「実はさ、さっき中谷さん達のグループが瑞季の目の前で『努力してない』って言ったの……。目の前っていってもみっちゃんがいることは後から気付いたからわざと聞こえるように言ったわけじゃないけど、普通、気付いたら最後は謝るべきだよね?」


 香奈がそう問いかけると優愛はスマホを取り出して何やら打ち込みながら話し出した。


「中谷さん達とあんま関わったことないから何とも言えないけど謝んないのは嫌だね。ちなみに露崎ちゃんのこと悪く言ったのは誰? 全員、名前言ってみて」


 優愛が何をしようとしているかわからなかったが、香奈は薄々何かに気付き、彼女に瑞季のことを悪く言っていた人の名前を挙げた。


「中谷さん、宮野さんね……オッケー」


「優愛ちゃん怒らせたら怖いんだろうなぁ……」


「怖い? 友達のこと悪く言われてたらこれくらいやるよ。香奈に前山くん、これ、見てみて」


 優愛が2人に見せたのは中谷さん宛のメッセージだった。


「……それ、大丈夫なの?」


「悪いって気付けば、中谷さん達もいい子だよ。さて、私ができるのはこれぐらいだし、またね、香奈」


「うん、またね~」


 優愛が立ち去っていった後、香奈と晃太は食事会場から離れて部屋に戻るため、エレベーターのある方へ向かっていく。


「優愛ちゃんの行動力、あれは真似できないや」


「まぁ、城市さんの立ち位置だからこそできることだろ」


「なるほど……」




***




「ごめん。露崎さんのこと悪く言って……」


 水族館へ行く前。瑞季とエントランスの方に行くと先ほど瑞季のことを悪く言っていた中谷さんともう1人女子がいた。


「いいのですよ。誰にでもいい顔をしていたのはそう見えるような行動をしていた私が悪いんですから」


「ほんと、ごめん。私が好きな人が露崎さんのこと好きだから露崎さんの悪いイメージ言ったら私に気が向くかなって思って……あんなこと言っちゃった」


 この女子は瑞季が好きな男子のことが好きだけど瑞季のことが好きで中々振り向いてもらえないからって……。


「ご存知かもしれませんが、私は碧くんとお付き合いしてます。なのであなたが好きという方を私が好きになることはありません。ですから、私はあなたの恋を応援してますよ。彼に私のことなんか忘れるぐらいアピールしてみては?」


 瑞季は、怒ることなくいつの間にか恋愛相談みたいな流れになった。

 

 なんだこれ……。暫くすると香奈と晃太が来た。その時にはもう中谷さん達はおらずなぜか香奈がなるほどみたいな顔をしていた。


「香奈、何したんだ?」


「さぁ~なんだろうねぇ~」


 香奈は聞いたが、何も教えてはくれなかった。一体、何したんだか……。

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