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夕飯ができるまでの間

「お母さん、私、学校のテストで100点取ったんだよ」


 私に興味をもってほしかった、自分のことを見てほしかった。けど、お母さんはいつも仕事のことばかり。


「そう、当たり前のこといちいち報告しなくていいから。今、大事な会議のための資料作りしてるから話しかけないで」


「ご、ごめんなさい……」


 少しぐらい褒めてほしかった。けど、当たり前なんだから褒められるわけないか……。


 お母さんに嫌われないためにも仕事を邪魔しないためにも私は極力お母さんに話しかけないようにした。


 お母さんは、私より仕事の方が大事なんだとだんだん思うようになった。


 夜ご飯は基本1人だった。お父さんは帰りが遅く、お母さんは私の夕飯を作ってすぐに仕事へ行ってしまう。


 本当は一緒に食べたい。けど、仕事は大切だからわがままなんて言えない。


 何かしら人より頑張っていたらいつかお母さんが私に興味をもってくれると思って今日まで私は勉強もスポーツも頑張ってきた。


 けど、お母さんは私のことに興味を示すことなく時が経つにつれてお母さんとの距離が遠くなっていった。


「お母さんは、私のことどうでもいいと思ってるのでしょうか……」


 話終えた彼女は、とても寂しそうな表情をしていたので俺は優しく手を握った。


 ずっと頑張ってきたけれどお母さんは、彼女の頑張りを認めることはなかった。


「どうでもいいかどうかは本人に聞かないとわからないけど瑞季は、お母さんにどうしてほしいの?」


「どうしてほしいか……私のことを見てほしいです。興味がないから、私のことが嫌いだから別々に住むことにしたのか……そこをちゃんと本人から聞きたいです」


 瑞季は、今まで何度か聞いてみたいと思っていた。お母さんは、私のことを愛しているの、なぜ距離を置くのかと。


「じゃあ、聞きに行こう。聞くのが怖いなら俺も付いていくからさ」


「はい、碧くんが居てくれると嬉しいです」


 彼女がどうしたいかは決まった。なら、後は行動を起こすのみだ。


 来週の土曜日。瑞季のお母さんは、この家に帰ってくるらしいのでその日に聞くことになった。

 

「お母さんに念のため碧くんが来ると伝えておきますね。と言ってもあの人は、私の友達に興味ありませんし、無視されると思いますが……」


「うん、伝えておいてほしい。急にお邪魔するのは迷惑だと思うし」


 瑞季のお母さんとは一度会ったが、挨拶をした程度で話したことはない。厳しそうな印象があったので会うのには少し緊張する。


 来週のことが決まり、そろそろ帰ろうかと思ったその時、ガチャとドアが音がした。


「ただいま。瑞季、夕飯だけど……って、あっ、もしかして噂の彼氏? 初めまして、瑞季の父親の露崎明人つゆざきあきひとです」


 仕事から帰ってきた若くてキチンとしたスーツ姿で現れたのは瑞季の父親だった。


 俺は、慌ててソファから立ち上がり頭を軽く下げた。


「お邪魔してます。初めまして、鴻上碧です」


「丁寧なご挨拶どうも。せっかくだし鴻上くんも夕食食べていかないか? 今日は、私の自慢料理を作る予定なんだ」


 瑞季のお父さんのイメージってもっと怖い人かと思ったが、初対面関係なくフレンドリーに接してくれた。


「い、いえ。そんな家族の食卓にお邪魔するわけには……」


「遠慮せずに食べていってよ。あー、でも鴻上くんの親が家でもう夕飯を作ってるなら食べずに帰りなってなるけど……どう?」


 自慢料理が気になるといえば気になる。けど、遠慮がちになってしまう。


「碧くん、お父さんの料理は美味しいですよ。食べていきませんか?」


「……じゃあ、食べていこうかな。母さんに聞いてみるわ」


 母さんは、おそらく家にいると思うので電話をかけるとご迷惑でなければ食べてきなさいと言われた。


「どうでしたか?」


「食べてきなさいだってさ。露崎さん、お願いします」


 瑞季のお父さんにそう言うと小さく笑われた。


「明人でいいよ。露崎と呼ばれたら私と瑞季のどちらを呼んでいるかわからないからね」


「そうですね、わかりました」


 明人さんが3人分の夕飯を作っている間、瑞季に部屋に案内された。


「ここが私の部屋です」


 女子の家に来るのは初めてじゃないが、やはり彼女の部屋となるととても緊張する。


「瑞季って感じの部屋だ。あっ、この本、俺も持ってる」 

 

 部屋を見渡していると本棚に立てられている1冊の本が目にとまった。


「そんなんですね。私、その本が1番好きなんです」


 本の話は瑞季とはあまりしたことがなかったので彼女と同じ本を持っていてその本が好きなことに嬉しくなった。


「夕飯ができるまでここでお話しましょう」


 そう言って瑞季は、スマホを片手に持ってベッドへ座るので俺は、どうするべきか悩み立ち尽くしていた。


「碧くんも座りませんか?」


「えっと……」


 さすがにベッドに座るわけにはいかず、地べたへ座ると瑞季が後ろからツンツンと肩をつついてきた。


「隣に座ってくれないですか?」


「座ってもいいのか……?」


「いいですよ」


 いいと言われたのでベッドへ座ると瑞季が腕にぎゅっと抱きついてきた。


「先ほど香奈さんから猫の動画が送られてきたのですが、一緒に見ませんか?」


「あぁ、猫って香奈が買ってるシュガーちゃんか?」


「会ったことがあるのですか?」


「1回だけな。晃太と一緒に家に遊びに行った時に会った」


「そうなんですね。香奈さんとはどうやって仲良くなったんですか?」


「香奈は晃太と仲良くなったから話すようになったって感じかな」


 晃太が香奈の彼氏でなければ多分彼女とは今のように親しくはなっていないだろう。


「私が香奈さんと仲良くなれたような感じですね」


「そうだな……」


 2人で香奈から送られてきた猫の動画を見た後は、明人さんから夕飯ができたと声をかけられ、下へ降りた。


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