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前みたいに手を繋いでもいいですか?

 朝起きると隣にはもう瑞季はおらず、布団は畳まれていた。


 起きるの早いな……。もしかしたら朝ごはんを作っているのかもしれないと思い、急いで布団を上げて、寝間着から私服に着替えた。


 服を着替えた後、キッチンへ向かうと瑞季は、予想通り朝食を作っていた。物凄い絵になるな。将来、もし2人暮らしとかしたらこういう瑞季の姿か見られるのだろうか。


「おはよう、瑞季」


「あっ、おはようございます。朝食は、和食でよろしかったですか?」


「うん、大丈夫。俺も何か手伝おうか?」


 料理には自信があるので手伝おうと思えば手伝うことはできる。瑞季1人に作らせるわけにもいかないので聞いてみたが、彼女は首を横に振る。


「いえ、後は運ぶだけですので」


「じゃあ、運ぶよ」


「ありがとうございます。では、私は飲み物とお箸を持っていきます」


 役割分担し、2人分の朝食をテーブルへ運ぶ。長谷部さんと清美さんはゆっくりと起きるそうなのでまだ寝ている。


「碧くんと一緒に朝食というのは何だか不思議ですね」


「俺もそれ思った。何年後、これが当たり前になったりするのかな……」


 そう言うと瑞季は、嬉しそうに微笑んだ。


「それはつまり私とこれからもいてくれるという意味で受け取ってもよろしいのですね?」


「……うん、まぁ、そうだな」


 向かい合わせに座り、「いただきます」と言って瑞季が作ってくれた朝食を食べる。


 朝食のメニューは、ごはん、野菜、目玉焼き、味噌汁だ。家では朝はいつも洋食なので和食は新鮮だ。


「うまっ、瑞季、この味噌汁美味しい」


「味が薄すぎるかと思いましたが、大丈夫なら良かったです」


 3連休2日目。その日は家でゆっくりと過ごし夕食は俺と瑞季が作ったものを4人で食べた。


「碧くん、お泊まりと言えば何かわかりますか?」


 お風呂上がり、お互い後は寝るだけとなったその時、瑞季は自分の枕を持って俺に尋ねてきた。


 今いる情報ではないが、瑞季は、自分の枕じゃないと寝れないらしく家から持ってきたらしい。


「恋ばなか?」


「この2人で恋ばなをするのですか?」


「まぁ、面白くはない気がするな。じゃあ、怪談話でもするか? 俺、結構怖がらせる自信ある話あるけど」


 そう提案すると瑞季は、首を横に振り、俺の服の端を掴んできた。


「だ、ダメです……怖い話をされると思い出して寝れません」


「そうか……あっ、瑞季、確かトランプやりたいって言ってたよな?」


「はい、トランプ持ってきました。お話ししながらやりませんか?」


「いいよ。ただ単にトランプやっても面白くないし、負けた方は勝った方の言うことを聞くっていうルールにするのはどうだ?」


「えぇ、いいですよ。やるからには負けませんから」


 そう言った彼女の表情は、とても自信に道溢れていた。


 トランプでやったゲームは、シンプルなババ抜き。2人なので自分がババを持っていない場合は瑞季が持っているとわかってしまう。

 なのでババを誰が持っているかは気にせずどちらが早くペアを作っていき終わらせれるかに集中できる。


「負けた……」


「勝ちました。では、1つ碧くんにお願いしますね」


「あぁ、負けたからには無理なことじゃなければなんでもやる」


 瑞季のことだから無茶なことは言わないだろうと思うけど。彼女の言葉を待っていると瑞季は、枕を抱きしめ半分顔を隠した。


「い、一緒の布団で寝ませんか?」


「一緒に?」


「は、はい……」


 昨日はお互い1枚の布団で寝ていたので何とか寝れたが、一緒の布団って大丈夫なのか? けど、負けた方が勝った方の言うことを聞くって俺が提案しちゃったしな……。


「わかった。狭いだろうけど瑞季がそう言うなら」


 午後11時。そろそろ寝ようとなり、瑞季が先に仰向けになって寝転ぶ。すると、瑞季は隣をポンポンと叩いた。


(1つ1つの言動が可愛すぎる)


 早く隣に来てくださいとアピールした彼女に俺は、ドキッとした。


「電気消すぞ。おやすみ」


「はい……おやすみなさい」


 電気を消し、瑞季の隣に寝転んだ。電気は、保安球にしているため部屋は真っ暗ではない。


 瑞季の方を見ていると寝れないので仰向けになって寝ることにする。


 今日も楽しかったな。明日にはもう家に帰ると思うと何だか寂しいような気もする。


 学校でも瑞季と会えるが、それは学校だけ。休日じゃなければいる一緒にいられる時間が少ない。


「碧くん、起きてますか?」


「起きてるよ……。瑞季さんや、何か怖いことでもありました?」


「いえ、そう言うわけではないのですが、前みたいに手を繋いでもいいですか?」


「いいよ」


 左手を出すと瑞季は、その手を右手で優しく握る。


「明日は、俺が朝食を作るよ」


「それは楽しみです。碧くんの手料理、私、大好きです」


「それは嬉しいな……俺も瑞季の手料理好きだ」


「ふふっ、ありがとうございます」


 数分後、隣からすぅすぅと寝息を立てて寝ていたので瑞季にもう一度おやすみと言う。


「明日は、ゆっくり起きてもいいからな……」





***





 3連休最終日。目が覚めて横を見ると隣には寝息を立てて幸せそうに寝ている瑞季の姿があった。


(無防備だな……)


 俺は、手を伸ばし、彼女の頭を優しく撫でた。触り心地が良く、さらさらの髪を触っていると彼女が、小さく笑った。そして、彼女は俺に抱きついてきた。


 どうやら起こしてしまったようだ。起こしてごめんと謝ろうと思ったが、瑞季は、俺の手を握る。


「碧くん、もっと触ってもいいのですよ」


「えっ、それはどういう……」


「そのままの意味ですよ」


 彼女はそう言って起き上がり、上に着ていたカーディガンのようなものを脱ぎ、髪を耳にかけて俺に顔を近づけてきた。


 な、なんか今日の瑞季さん、積極的過ぎない!?


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