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い、いえ。碧くんと話したいなと思いまして

 明日から3連休。特に予定もなく勉強してたらあっという間に終わるんだろうな的なことを考えていると瑞季からメッセージが来た。


『3連休、予定ありますか?』


『特にないよ』


 メッセージを返信すると瑞季からまたメッセージが届いた。


『もし良ければ一緒に私のお婆様の家に行ってお泊まりしませんか?』


 俺が行ってもいいのだろうか……。もし、親戚の集まり的なものだったら俺はどう見ても邪魔者だ。


『俺が行ってもいいのか?』


『私とお婆様以外いませんので大丈夫ですよ』


 瑞季のお婆さん、清水さんとは何度か会ったことがあるが、他の人の家には簡単に行けない。けど、行きたい気持ちがあったので行くことにした。


『行ってもいいなら行きたい』


『では、一緒に行きましょう。お婆様には私から伝えておきますね』


『ありがとう』


 お礼を言って、スマホを机の上に置き、ドサッとベッドへ仰向けに寝転んだ。


 お泊まりのことわを母さんは言ったらすぐに許しそうだが、問題は父さんだな。何か上手い言い訳を考えるとしよう。





──────同時刻。





「お婆様、碧くんと一緒に明日そちらに向かいます」


 碧くんから行くとの連絡が来て私はすぐにお婆様に連絡した。


『来てくれるのかい。それは良かった』


「あ、あの……お母さんは?」


 家に泊まりに行くというのは、お婆様の家に住んでいるお母さんと会うということ。少し前まではお母さんに会えることが嬉しかったが、今は会うのが怖い。


 会うことも話す機会も少なっていくといつの間にか私はお母さんに会うことが怖くなってしまった。


『お母さんなら昨日から出張でいないよ。何かあったのかね?』


「い、いえ。何でもないです……」


『そう……。そう言えば光も明日この家に来るって言っていたから。鴻上くんにも伝えておくんだよ』


「光さんもですか。わかりました、伝えておきますね。では、おやすみなさいお婆様」


『おやすみ』


 お婆様との通話を切り、私は碧くんに光さんも来ることを伝えた。光さんのことは碧くんも知っているから大丈夫だろう。


 スマホをベッドの上に置き、明日持っていく荷物を準備することにする。


「パジャマ……」


 香奈さんからこれ碧に見せたら絶対可愛いって言ってくれるよと言われて買ったパジャマがあることを思いだし、予定していたパジャマと交換してカバンの中に入れた。


「碧くんとお泊まりか……」


 1日中一緒にいられる、そう思うと明日会えることが楽しみでしょうがなかった。


 碧くんも行くなら私服も少し気合いを入れなくては。可愛いと言ってもらいたく準備していた服を一度カバンから取り出し、もう一度どの服を持っていくか考える。


 結局持っていく荷物の準備が出来たのは1時間後だった。碧くんが来ると決まってから気合い入りすぎては?と自分でも思ってしまう。


 ベッドに仰向けになり、近くにあったクッションを取り抱き抱える。


 明日、会えるとわかっているのに今すぐに会って話したいと思ってしまう。


「今、電話したら迷惑ですかね……?」


 寝返りをうちスマホを手に取った。通話ボタンを押せば碧くんと話せる。けど、迷惑なんじゃないかと思うとボタンが押せない。


(……よし!)


 電話することを決心し、私は通話ボタンを押した。


(お、押してしまいました!)


 ビデオ通話ではないが、髪の毛、身だしなみを気にし出し、私は1人パニックになっていた。


『瑞季?』


「あ、あ、碧くん! こ、こんばんは!」


『こんばんは。何か明日のことで伝え忘れ?』


 メールでやり取りしていたがまだ言い残したことがあるのかと碧くんは思ったらしい。


「い、いえ。碧くんと話したいなと思いまして」


『俺も瑞季と話したかった』

 

 スマホから聞こえてくる碧くん声に嬉しすぎて私はベッドの上で足をバタバタとさせていた。


(碧くん、ズルいです。私ばかりがドキドキさせられている気がします)






***






 夜、瑞季から電話がかかってきた。明日のことで何か言い忘れたことがあったのかと思ったが、どうやら違うらしい。


「瑞季は、もう寝るところか?」


『はい、碧くんは?』


「俺ももう寝るところ。けど、瑞季から電話かかってきて目覚めたわ」


 驚いたから目が覚めたのではなく瑞季から電話がかかってきた嬉しさのあまりテンションがあがったからだ。


『ごめんさい、こんな時間にかけて』


「謝らなくても。さっき言っただろ? 俺も話したかった」


 そう言うと電話からバタバタと音がしたので何事かと思う。


『碧くんの顔みたいです』


 か、顔!? もしかして瑞季、寝れないから俺に電話をかけたのか? 俺の顔見たら寝れる的な。


「じゃあ、ビデオ通話するか?」


『碧くんが嫌でなければ……したいです』


「じゃあ……見えてるか?」


『み、見えてます。碧くん、カッコいいです』


「んんっ!?」


 カッコいいと言われて思わずニヤけてしまいそうだったので俺は咳払いし、我慢する。


『どうかされましたか?』


「いや、何でも……」


 そう言って画面に映る瑞季を改めてみるとパジャマ姿の彼女が目に移り俺は言葉を失った。


(可愛い……てか何かいつもより可愛くね!?)


『碧くんとお泊まり楽しみです。お泊まりの醍醐味であるトランプは絶対しましょうね』


「わかった」


 瑞季のテンションがいつもより高い。まぁ、お泊まりという楽しみがあるからだろうと思うけど。


 30分ほど雑談を交わし、気付けば午前0時を回っていた。瑞季からの返事がだんだんとゆっくりになっていき、うとうとし始めた。


「瑞季、そろそろ寝ようか。眠そうだし」


『そう……ですね』


 瑞季は、まだ電話を切りたくないみたいな表情をしていた。


「瑞季、おやすみ」


『はい、おやすみなさい』


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