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わ、私だって碧くんがもう私のしか食べれなくなるようなもの作ってきますから!

「うぇーい! みんな盛り上がれー!!」


 皆がイエーイとかなんとかいっている中、俺は、大きなカラオケルームの端で座っていた。


 俺は、どちらかというと陽キャ陰キャでいうとどどちらにも当てはまらないがこういう場所は苦手だ。


 瑞季というと真ん中辺りで香奈と座ってお喋りしている。


「碧は、歌わないのか?」


 同じく端に座っている晃太がそう尋ねてきた。歌わないとわかっているくせに。


「歌わない。晃太は?」


「俺は、可愛い香奈が歌う姿を見られればそれでいいんだ」


「そうかそうか。取り敢えずこれ食べないか?」


「おう、歌わない組は雑談でもしながら端で食べてようぜ。陸斗も食べるか?」


 反対側に座る陸斗に頼んだポテトを勧めると頷き、3人で食べることにする。


「で、碧くんや、文化祭デートはどうだったのかね?」

 

 晃太は、そう言ってニヤニヤしながら俺が話してくれるのを待つ。


「楽しかったよ」


「それだけ!? そのもっとハプニング的なこととか、ドキドキした瞬間とかさ何かないわけ?」


 シンプルすぎる感想が晃太には気に入らず、他に言うことはないのかと聞いてくる。


「ハプニング……」


「お? その様子だとまさかおばけ屋敷に入って瑞季さんが『きゃー怖い』的なこと言って碧の腕に抱きついてきた展開があったのか?」


 間違ったことを一切言っていない晃太の発言に俺はぞわっとした。凄いというよりもう恐ろしいわ!


「そんな漫画みたいな展開あるわけ……えっ、あったのか?」


 晃太の発言を半分信じていない陸斗だったが、俺の反応を見て信じる。


「……ノーコメントだ」


「それ、合ってるって言ってるようなものだろ。碧は、わかりやすいなぁ~」


「晃太と碧って仲良しだよな。出会ったのは高1の時だっけ?」


 陸斗は俺と晃太のやり取りを見て思ったことを言い、尋ねてきた。


「あぁ、碧とは新入生オリエンテーションの時に偶然隣同士に座ったんだよ。碧とはまぁいろいろと気があってさ今も仲良くしてるわけですよ。碧は優しくて、お人好しで、何事も最後までやる努力家でさ……自慢の友達だよ」


 晃太の言葉に俺は泣いてしまいそうになる。こういうことを目の前でストレートに言われると恥ずかしくなるな。


 仲良くなった経緯を話す流れだったが、晃太は俺のいいところを言うので驚いたが、嬉しかった。


「それを言うなら晃太だっていいところたくさんあるし自慢の友達だ。晃太のおかげで香奈と出会えたし、陸斗と仲良くなれた」


「俺は、何もしてないって。それより俺は、瑞季さんと碧の出会い話が聞きたいなぁ~」


 晃太がそう言うと陸斗は、うんうんも頷く。なぜ打ち上げで友達に彼女との出会いを話さなければならないのかという疑問が浮かぶ。普通、文化祭に関しての話をするべきだろ。


「ここでは絶対に話さん」


 周りにはクラスメイトがいる。ここで話してもし、聞かれたとしたら反感を買うだろう。


「じゃあ、また今度の機会に聞こうかな」


「あぁ、そうしてくれ」






***






「碧くん、もっと頭を撫でてください」


「ん、これでいいか?」


「はい……とても癒されます」


 打ち上げ後、俺の家に瑞季は寄った。今日の打ち上げで瑞季は少し疲れたらしく、俺に甘えたいと言ってきたので今この状況である。


「絶対に寝るなよ」


 瑞季の目がだんだん閉じてきたので先に言っておく。寝たらいろいろと俺が困る。


「寝たらダメなんですか?」


「ダメだ。寝たら瑞季が無防備すぎて俺が何するかわからん」


「わ、わかりました。寝いようにします」


 寝ている間に何かされるのは嫌だと思った瑞季は、頬をつねり寝ないようにする。


「つねったら跡がつくからやめとけ」


 頬をつねっていた手を離し、俺は彼女の手を握った。


「碧くんといると落ち着きますね……。明日からお昼ご飯が必要ですが、私が作ってきてもいいですか?」


「えっ、いいのか?」


 この前作ってもらったときの味は今でも覚えている。それほど瑞季の作ったお弁当は美味しかった。それがまた食べれるなんて嬉しくないわけない。


「えぇ、作れるレパートリーも増えてきましたから」


「じゃあ、お願いしようかな」


「わかりました。美味しいお弁当作りますね」


「なら、瑞季のを俺が作ろう。どうだ?」


「た、食べたいです! 碧くんの手料理食べたいです!」


 作ると言うと瑞季の表情がパッと明るくなる。


「わかった。瑞季に負けないぐらいのもの作るから」


「わ、私だって碧くんがもう私のしか食べれなくなるようなもの作ってきますから!」

 

 今思うと瑞季って負けず嫌いだよな。まぁ、そんなところが可愛いんだけど。


「瑞季の料理好きだから一生食える。だからさ時間があれば作ってほしいかな」


「もちろんです! 希望があればいつでも碧くんのために作りますよ」


 俺のためにという言葉が頭の中で何度もリピートされ、嬉しい気持ちになる。


「じゃあ、そんときは頼む」


「はい」








***







「おおお? もしかしてお互いにお弁当交換してる?」


 お昼休み、すぐに香奈はお弁当を交換していることに気付いた。


「えぇ、碧くんが作ってくれました」


「いいなぁ~碧の手作り。絶対美味しいじゃん」


「ふふっ、あげませんからね」


 瑞季は、香奈に取られないようにお弁当を彼女から遠ざける。


「取らないって。もう、可愛いなぁ~」


「交換してるってことはその弁当は瑞季さんの手作り?」


「あぁ、最初より上達しているみたいで驚いた。どれも美味しいよ」


 晃太の質問に頷き、そして食べた感想を作ってくれた瑞季へ言う。


「それは良かったです。碧くんの作ってくれたお弁当も美味しいですよ」


 香奈と晃太は、俺と瑞季の会話を微笑ましく聞いているのだった。


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