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夏休みの最後に

 夏休み最終日。香奈の家の庭で花火をすることになった。門限もあるのでやる時間は、8時までとなった。


「みっちゃん、どれやりたい? ススキ花火か、スパーク花火か、線香花火か……あっ、もしかして打ち上げ花火やりたい?」


「おい、それやったら近所迷惑なるわ」


 瑞季とどの手持ち花火をするか話し合っている香奈にすかさずにツッコミを入れる。


「じょーだんだって。取り敢えず、線香花火やってどっちが先に火が消えるかの勝負しようよ」


「おっ、それみんなでやろうぜ。碧もやるよな?」


「普通の勝負事ならやるが、罰ゲームがあるならやらないぞ」

 

 香奈と晃太がやろうとすると絶対に負けた人には何かあるはずだ。


「ないわけないじゃん。まっ、まずは、楽しむこと優先ね」


 あるのかよ。まぁ、瑞季もやりたそうにもう準備万端だし、やるか。


「じゃ、火ついたところタイムスタートね。よーい、スタート!」


 火がつくタイミングは皆バラバラで勝負の結果、一番長く火がついていたのは香奈だった。


「最下位はみっちゃんだから罰ゲームはなし!」


 瑞季だったらってことは俺の場合はあったのかよ。


 この後、いろんな線香花火をして、俺はずっとしゃがみこんでいたので休憩することにした。


「瑞季、こっち向いて」


 少し離れたところでスパーク花火をしていた彼女に横からカメラを向けた。


「撮ってくれるのですか?」


「うん、自分じゃ撮れないだろうし」


「ありがとうございます。撮ってもらった後は、私と交代しましょう」


 俺のはいいんだけどな……。スマホ越しに火を見ているとだんだん火が小さくなってきた。


「消えちゃいました……」


「綺麗だったな」


「えぇ、次は、私が撮ります」


 瑞季にスマホを貸し、立ち位置を交代する。あまりもののスパーク花火を手に取り、点火用キャンドルから火をもらってくる。


「碧くんは、夏休み楽しかったですか?」


「楽しかったよ。去年も晃太と香奈でいろんなところ遊びに行ったけど今年は瑞季がいたから特別な夏になった」


「……と、特別ですか。私も碧くんと過ごす夏休みは、とても楽しかったです」


 もう少し早く話していたら去年の夏もこうやって過ごしてたのかな……。


 去年の夏はまだ彼女とは話したこともなくただのクラスメイトだった。


「来年は、受験がありますし遊べる機会は減りますが、1日ぐらいはどこか行きたいですね」


「そうだな……。あっ、消えた」


 火が消え、明かりが玄関のところにある電気だけになってしまった。


「晃太、もう終わりにするか?」


「あぁ、ちょうど無くなったし終わるか」


 片付けをした後は、俺と瑞季、晃太は、途中まで一緒に帰った。


「俺と露崎さんが名字で呼びあってるとこの2人だけ不仲みたいに見えるって香奈から言われたんだけど、露崎さんは、下の名前で呼ばれても大丈夫?」


 晃太がなぜか俺の方を一度見たが、瑞季の方を向く。


「大丈夫ですよ。確かにずっと一緒に行動しているのに名字だと堅苦しいですね。では、私は晃太くんとお呼びすればいいのでしょうか?」


「どうぞ気軽にお呼びください。碧も今日から晃太くん呼びな?」


「何でだよ」


 晃太と別れた後、時間も遅かったので瑞季を家まで送った。


「じゃあ、おやすみ」


「はい、おやすみなさい」








***








 翌日、午後からの登校なのでそれまではずっと起きれず寝ていた。お母さんからそろそろ起きろと言われて目が覚めたのは10時だった。


 1月振りに制服を着て、1階のリビングへ向かう。この時間帯でもあり当然父さんは仕事に行っていなかった。


 寝すぎるのもあんまりよくないな。余計学校へ行くのがめんどくさくなってきた。


「碧、お昼はどうするの?」


 朝食を食べていると母さんがそう聞いてきた。


「朝ごはん遅かったし、コンビニで軽いもの買ってから学校で食べるよ」


「わかったわ」


 朝食を食べ終え、待ち合わせしているところへ行くと瑞季と晃太が待っていた。


「あれ、香奈は?」


「寝坊して遅れるとさ」


 香奈も午後からだと早く起きれないタイプか。まぁ、1回大遅刻してきたしな。


「じゃあ、先行くか」


「そうだな。待ってたら俺らも遅刻するし」


 3人で先に学校へ行って教室に着くと支倉さんが手招きしていたので駆け寄った。


「来た人から順に係どれがいいか決めてるんだけど4人も……あれ、香奈いないじゃん」


 さやかは、香奈がいないことにすぐに気付き驚いていた。


「遅刻だってさ。で、何がいいか黒板に名前書けばいいのかな?」


 晃太の質問に支倉さんは、頷いた。


 このクラスの出し物は、お化け屋敷。瑞季が嫌がると思っていたが、自分達がやるものだから大丈夫だそうだ。


「うん、何人かの人はもう書いてるけど被ってもいいよ。後で話し合いかじゃんけんするから」


 そっか、このクラスの文化委員は支倉さんと陸斗か。陸斗とはというと同じような説明を他の男子に説明していた。


「わかった。で、どうしますか? 碧さんや」


「4人同じ係にできそうなのは、衣装とパネル作りか……」


「おぉ? 碧は、俺とどうしても同じ係をやりたいってことか?」


「なっ、嫌ならこの話はなしだ」


 4人でいることが多いのでてっきり同じ係を選ぶかと思っていた。


「嘘だって。瑞季さんは、どの係やりたい?」


「そうですね、パネル作りが楽しそうです」

 

「パネル作りに1票な。碧は?」


「俺もパネル作りで。晃太は?」


「俺は、香奈がやりたいやつを選ぼうかな。おそらく香奈もパネル作りにしたいだろうし」


 本人がいないのにわかってしまうのは彼氏だからか?と思っていると晃太が言葉を付け足した。


「香奈、瑞季さんと一緒の係がいいって言ってたから」


 あっ、違った。香奈、瑞季のこと気に入ってるもんな。


「おはよ、なんとか間に合った~」


「おはようございます、香奈さん。大丈夫ですか?」


 全速力で走ってきたようで香奈は、すぐに自分の席に座る。


「大丈夫じゃないよ~。昨日夜遅くまでテレビ見てたらまさかこうなるとは……あっ、係決め?」


 ぐったりとしていたが、黒板を見て香奈は、パッと表情が明るくなる。


「はい、皆さんでどれにしようかと話し合いをしている途中です」


「私、パネル作りやりたい。みっちゃんは、どの係にするの?」


「私もパネル作りがいいなと思っています」


「じゃあ、決まりだ。私がみんなの分書いてくるね」


 香奈、俺達の会話を聞いてたのかよ。4人の名前を黒板に書きにいった香奈が戻ってくると瑞季にすぐに抱きつく。


「おはよう、みっちゃん。夏休み、会えなくて寂しかったよ」


 昨日会っただろとツッコミを入れようとしたが、瑞季がクスッと笑って彼女の頭を撫でた。


「私も香奈さんと会えない日が多く寂しかったです」


 香奈と瑞季を見て晃太からコソッと耳打ちされた。


「碧、今、香奈と位置変わりたいだろ?」


「そんなこと思ってない」

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