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ダブルデート

 8月1日。香奈と提案により遊園地でダブルデートすることになった。遊園地なんて幼稚園以来なので少しワクワクした気持ちでいるとすぐに気付かれる。


「碧、昨日寝れんかっただろ?」


 ジェットコースターの乗り場に並んでいると隣にいる晃太から言われた。


「何でわかるんだよ」


「ん~なんとなく?」


 怖い。いつの間にか部屋に防犯カメラでも付けられてるのだろうか。


 グッパで別れて俺は晃太と隣同士で乗ることになった。こういうのはカップル同士で乗るものではと言ったが、香奈から普段話さない人との交流も大事だよと言われた。香奈も晃太も普通に交流してるけどな。


「晃太先輩や」


「なんだい、後輩よ」


「恋人同士で遊園地ですることを何か1つ教えてくれ」


「自分で考えろと言いたいところだが、1つだけ教えてやろう。彼女に何に乗りたいかを聞き出し、それに乗るんだ」


「なるほど……」


 恋愛の先輩からアドバイスをもらったのはいいが、ダブルデートなので今日はそれが実行できそうにない気がした。


「ダブルデートと言っても二人っきりになりたいだろうし、午後からは別れて行動しようぜ」


「わかった」


 ジェットコースターの次は、急流滑り。じゃんけんの結果、右から俺、香奈、瑞季、晃太になった。


「碧、午後からのこと、晃太から聞いた?」


 香奈に話しかけられ、俺は聞いたと返事する。


「みっちゃんと行くならおばけ屋敷をオススメするよ」


「瑞季、おばけ屋敷好きなのか?」


「ううん、苦手って言ってたよ」


 苦手なのに連れていこうとは思わないんだけど。瑞季が嫌がるところには行かせたくない。


「じゃあ、なぜおばけ屋敷を進める」


「だって、おばけ屋敷が苦手な女子と行ったらイベント起きるよ」


「あー、なるほど」


 香奈が考えていることが何となくわかってしまった。「きゃ~怖い」と女子が腕にくっつくイベントや暗くて「あっ、ごめん。暗くて見えなかった」と言って胸触るとかそういうイベントか。


「いや、そういうの興味ないわ。そのイベント発生させるために瑞季が嫌がるところには行きたくない」


「おぉ~やっぱ碧は、優しいね。まっ、みっちゃんから行きたいって言ったら連れていってあげてね」


 そう言った香奈は、ニコニコと笑っていたので俺は、嫌な予感がした。何か怪しいな……。


 急流滑りの後は、コーヒーカップに乗ろうと香奈が言い出し、4人で乗ることにした。


「回すか、回さないか。多数決で決めよう」


 香奈の提案により始まった多数決。俺は、どちらかと回さない方がいい。なぜなら香奈と晃太で一度コーヒーカップに乗って嫌な思い出があるからだ。


 香奈と晃太は、おそらく回す方に手をあげるはず。もし、瑞季も回す方に上げたら回すになってしまう。よし、ここは瑞季に味方になってもらおう。


「瑞季、回さない方を────」

「はいはい、碧くんや、みっちゃんを味方に付けないの」


 回さない方を選んでほしいと瑞季に言おうとしたが、香奈に言葉を遮られる。瑞季は、俺が言いかけていた言葉で理解し、にっこりとこちらを見て微笑んだ。


「じゃ、多数決いきます。回したい人!」


 回したいに手をあげたのは予想通り、香奈と晃太。瑞季はというと手をあげていなかった。


 もしかして瑞季、さっきの俺の言葉を理解してくれたのか!? 


「ってことは、回さないにみっちゃんと碧か。なら、4人で乗るのはやめて2人2人で別れる?」


「それがいいな。碧、露崎さん、それでいいか?」


「うん、それで」

「大丈夫です」


 何とか回すを回避し、ホットしていていると、瑞季に腕をつつかれた。


「良かったですね」


「あぁ、うん。晃太と香奈と一緒に乗ると俺、多分倒れると思うからな。瑞季は、回したい派だったか?」


「いえ、私は回さず乗ってるだけで十分ですから」


 乗れるところまで来たので瑞季にどの色のコーヒーカップに乗るか尋ねた。


「どこでもいいぞ」


「では、ピンクで」


 ピンクのコーヒーカップに乗り、瑞季は、ワクワクした様子で座っていた。


「瑞季、楽しそうだな」


「楽しいに決まってますよ。碧くんと一緒にいるだけで私は楽しいですから」


 そう言って彼女は、小さく笑った。






***

 






 お昼は一緒に食べようとなり、空いているテーブルに取られてもいいようなものを置き、注文しに行く。


「瑞季は何にするか決めたか?」


「ラーメンにしようかと。碧くんは?」


「俺は、オムライス。一口食べたそうな顔だな」

 

「そ、そんなことは……あります。一口食べたいです」


「正直だな」


 そう言って彼女の表情を撫でると後ろで並んでいる香奈から話しかけられる。


「はいはい、並んでる時にイチャイチャしないの」


「お前らに言われたくないわ」


 くっついてるのに私達はイチャついてませんよーみたいな顔しやがって。


 注文し終え、全員揃ったところで昼食を食べ始める。


 隣に座る瑞季は、ラーメンを食べる時におろしていると邪魔になるため髪を1つにまとめる。


「ポニテみっちゃん、可愛い」


「そうですか?」


「うん、可愛いよ」


 香奈に可愛いと言われて瑞季は、嬉しそうな顔をする。


「瑞季、先に一口食べるか?」


「あっ、はい」


 一口サイズ、スプーンですくい、瑞季に食べさせる。


「美味しいです」


「目の前であーんしちゃって。私と晃太がいること忘れてる?」


 香奈にそう言われて俺は、そこでやっと気付く。忘れてた……。


「まぁ、初々しい2人を見れてごちそうさまって感じだしー、いいんだけどね」


 そう言った香奈は、食べ始めるのでノーコメントで俺も食べ始めた。

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