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碧くん、もう1回したいです

 晃太の帰りを待っていると瑞季が俺の腕をツンツンとつついてきた。


「ん?」


「あの、日焼け止めを背中に塗ってもらえませんか?」


「うん、いい───って、俺が?」


「はい……背中は私の手じゃ届きませんから」


「か、香奈がもうすぐ来るだろうし、あいつに頼めばいいのでは?」


 瑞季の肌に触るとかご褒美的なイベントだが、俺にはできなかった。


「私は碧くんにやってもらいたいのですけど」


 うるっとした目でそう言われて断れるはずがなかった。日焼け止めを瑞季からもらい手先に少しだした。


 ここまで来たんだ。やるならやってやる!という気持ちで俺は彼女の背中に塗ることにした。


「じゃ、じゃあ、塗るぞ」


「は、はい、どんとこいです」


 なんですかその可愛らし言い方は。急に触っては相手を驚かせてしまうと思いそっと背中を触ったつもりだが……。


「ひゃっ!」


「瑞季さん!? そんな声だされると困るんだけど」


「ご、ごめんなさい。冷たくて……次は、我慢します」


 そう言って瑞季は、手で口を抑えるがそれをやっては窒息しそうなのでやめさせた。


「じゃ、気を取り直して」


 晃太達が帰ってくるまでに終わらせなければと思い、俺は彼女に合図する。


「声我慢しますのでお、お願いします……」


 日焼け止めを塗るのを再開すると


「んんっ……」


「それアウト。変な気持ちになりそうだ」


「では、どうしたらいいのですか!」


 俺は、どうしようかと考えて頭をフル回転した結果、何とか晃太達が帰ってくるまでに塗り終わらせることができたのだった。





「碧、私の水着、どう?」


 ビーチパラソルの下で座っていた俺に香奈は、水着を見せてきた。


「うん、可愛いと思うぞ」


「反応うすっ!」


「ここで褒めたら隣にいる彼女から殺気を感じそうだからな」


 チラッと横目で瑞季のことを見ると彼女は、小さく首をかしげていた。


「香奈さんの水着、可愛いです」


「わ~い、みっちゃんにそう言ってもらえると嬉しいよ~」


 俺と瑞季の感想は同じだったはず。なのに反応の差が激しいのはなんだ?


「そこの3人、ビーチバレーやらない?」


 支倉さんは、膨らませたビーチボールを持ってこちらへ来た。


「もちろん、やる~。みっちゃんは、どうする?」

 

「私もやりたいです。碧くんは、どうなされますか?」


「俺もやろうかな」


「陸斗と前山くんもやるって言ってるからグッパで分かれよ」


 そして別れた結果。俺は、香奈と支倉さんと同じチームで、瑞季は、晃太と陸斗だった。


「碧、この前のバスケの時もみっちゃんと違うチームだったよね……寂しい?」


 確かに俺と瑞季、全く同じチームにならないな。なんでだ?


「寂しくねぇよ。それより元バレー部さん、今回は頼りにしてますよ」


「おっし、任せといて!」


「鴻上くん、私にもそういうの言ってほしい!」


 どうやら頼られたいらしく俺は、何を言おうかと考えた。


「じゃあ、支倉さんは香奈をサポートしてくれる?」


「うん、任されました!」


 めっちゃニコニコしてる。さて、あっちはそう言えば同中チームだな。


「露崎さん、バレーは得意だったよね」


「まぁ、そこそこに。前山くんと田部くんもバレーで活躍してましたよね。注目浴びてましたし」


「露崎さん、男子には興味ありませんオーラあったから見られてるとは思わんかったわ。なぁ、晃太」


「露崎さんも普通の女子だし興味あるもんな」


「え、えぇ……」


 バレーの作戦会議のはずだが、話がそれていって気がして瑞季は、頷いた。


ビーチバレーが終わった後、俺と瑞季は2人で海を満喫していた。


「碧くん、こういう時に付き合ってる私達がやることは何かわかりますか?」


 膝にかからないぐらいの深さの場所に行くと瑞季は尋ねてきた。


「名一杯楽しむとか?」


「それもそうですが、違います」


 瑞季は腰をかがめて手で水をすくいそして俺にかけてきた。


「なるほど、水のかけ合いだな。了解」


 かけられたらやり返すのがお決まりだと思い、俺は彼女に水をかけた。


 周りから見れば「も~かけないでよ~」「それそれ~」とバカなカップルに見えるのかもしれないな……。


「ビーチバレーやってから水のかけあいはさすがに疲れるわ」


 水の掛け合い後、砂場に座り、俺はぼっーと海を。時々、波で押し寄せられたものが足にかかる。


「疲れたってことはそれだけ楽しんだってことですよ」


 瑞季は、嬉しそうにそう言い俺の肩にもたれ掛かってきた。


「碧くん」


 彼女と見つめあっていると不思議な気持ちになり、そっと彼女の唇に自分の唇を重ねた。

 そして唇を離し、目を開けた瑞季は嬉しそうに右手で唇を触った。


「忘れられないファーストキスでした」


「俺も。次は瑞季からのキスを待ってる」


 そう言うと瑞季は顔を真っ赤にして「はい」と小さく頷いた。


「あ、あの……わがまま言ってもいいですか?」


「わがまま? 瑞季のわがままっていつもわがままになってない気がするけどそのわがままとやらを聞くよ」


 瑞季のわがままって俺にとってはほぼご褒美なんだよな。


 彼女は、少し恥ずかしそうに髪の毛を触りながら上目遣いでおねだりしてきた。


「碧くん、もう1回したいです」


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