助けていただきありがとうございます
海で遊ぶ当日。最初は、4人で行くつもりだったが、陸斗と支倉さんも行くことになり、6人で行くことになった。
「じゃあ、男女別れて着替えたらここ集合ね」
香奈は、この場にいる全員にそう伝えると瑞季とさやかと一緒に女子の更衣室へと移動した。
「よし、俺らも行こうぜ」
「あぁ、そうだな……」
─────女子更衣室
「そ、添い寝!? みっちゃん中々攻めるね~」
瑞季は、碧と過ごした話を香奈にすると、驚いていた。その隣で聞いていたさやかも興味津々で水着に着替えながら聞いている。
「頑張った碧くんに何か嬉しいと思うようなことを考えたのですが、やりすぎましたかね」
「いやいや、いいよ。まぁ、碧はその添い寝の状況にドキドキして耐えられなかっただろうけど」
香奈はそう言って隣で着替える瑞季を見てあれ?と思った。
「みっちゃん、水着隠しちゃったら碧見てくれないよ」
「み、見せるために買ったわけではありません。それにこれを着てないと日焼けしますので」
そう言って彼女はラッシュガードを水着の上に羽織った。
「まぁ、生足だけでも碧は喜ぶか……。みっちゃんがラッシュガード着てなかったらナンパされるから着た方がいいね」
「香奈さん、そんなにジロジロ見ないでください」
「瑞季、その添い寝した時って何もなく終わったの?」
先ほどまで黙って聞いていたさやかがここにきて瑞季に尋ねた。
「えぇ、特に何もしてませんよ」
「ほんと?」
「本当です」
「はいはい、落ち着いてよ、さやちゃん。みっちゃん、ごめんね。この人他人の恋愛トーク好きすぎてたまにおかしこと口走るから」
さやかを落ちつかけたのは香奈だ。いつもならこういうことに対して一番テンションがあがって落ち着かないのは香奈の方だが、今日は違った。
「い、いえ、少し驚きましたけど大丈夫です」
瑞季は、さやかのイメージが変わり苦笑いしていた。
***
水着に着替え終わり、瑞季は先に更衣室を出た。香奈とさやかはいろいろあって後で来るとのこと。
「前山くん、碧くんはどちらに?」
瑞季は、集合場所に行ったものの晃太しかおらず他の人は誰もいなかった。
「碧なら自販機に飲みもん買いにいった」
「わかりました。教えてくださりありがとうございます」
そう言って瑞季は、1人で自販機に向かおうとしていたので晃太は慌てて止める。
「露崎さん、1人で大丈夫?」
こんな美少女を1人で歩かせていいのかと思った晃太はそう言うが瑞季は、優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。迷子にはなりません」
「そういうことじゃないんだけど……」
晃太は、1人で自販機へ向かってしまった瑞季の後ろ姿を見てそう呟くのだった。
「自販機……」
瑞季は、俺を見つけてそこへ向かおうとしたが、大学生の男子グループに声をかけられた。
「ねー、そこの君。1人?」
突然囲まれてた瑞季は、これはナンパかとすぐに気付いた。
「いえ、彼氏と来ています」
「彼氏? その彼氏はどこ?」
「あなたに教える必要はないかと思います」
そう言って瑞季は、冷静に答えると1人の男が瑞季の態度が気に入らなかったのかやや強引に手を取ろうとしたが、俺が瑞季の手を取った。
「瑞季、どこ行ってたんだよ」
「あ、碧くん……」
瑞季は、ホッとした顔をして俺の手を握った。
「お前誰だよ」
「俺の彼女ですけど。瑞季、行くぞ」
「は、はい!」
何だよ、彼氏いんのかよと後ろから聞こえ、俺と瑞季は晃太の元へ戻った。
「お帰り。手繋いで帰ってきたってことは何かあったのか?」
「晃太、瑞季を1人にするなよ」
「俺は、一応止めたよ。まぁ、止めずに行かせたのはすまないと思ってる」
「碧くん、私が悪いんで前山くんは悪くありません。碧くん、助けていただきありがとうございます」
俺と晃太の間に入り、瑞季は俺に向かって軽く頭を下げた。
「今日はできるだけ俺の側にいろよ」
「わかりました。碧くんの側にいますね」
そう言って瑞季は、俺の手をぎゅっと握ってきた。
「碧、さっきの言葉、後で香奈に言ってもいいか?」
「絶対言うな。からかわれるに決まってる」
「冗談だよ。それより碧、忘れてないか?」
「何が?」
「彼女は、今、水着着てるんだよ」
あっ、そうか。こういう時って何かしら感想を……めっちゃ怒ってますやん。
隣を見ると瑞季は、ムスッと頬を膨らませていた。
「陸斗達、呼び戻してくるわ。じゃあ、お二人さんはここで待っててくれよ」
晃太は、そう言ってこの場を離れた。そして俺と瑞季の2人だけになる。
「香奈さんと相談しながら選んだ水着なんですけど、碧くんに見てほしいです」
「見てもいいのか……?」
「碧くんにだけなら構いません」
瑞季は、着ていたラッシュガードのチャックを下ろし、そして脱いだ。
「どうですか?」
ずっと見ていたらダメなやつだ。本人には言わないが、物凄くエロい。髪型もいつもと違ってポニーテールだし、これはナンパされますわ。
「その色、瑞季に似合ってる。可愛いよ」
「ありがとうございます。碧くんに可愛いと言ってもらえるような水着を選んだんですよ」
瑞季は、そう言って正面から俺に抱きついてきた。
「み、瑞季さん? 何されてるんですか?」
「密着してドキドキしてくれるかなと思いまして」
そりゃドキドキするに決まってる。嫌じゃないが、周りの人見られていたので少し恥ずかしい。
「ドキドキしないわけないだろ。こんなに可愛い瑞季が抱きついてきて、胸当てられて」
「えっ、あっ、ごめんなさい!!」
胸を押し付けている自覚はなく、瑞季は慌てて俺から離れた。そしてすぐにラッシュガードを着た。
「わ、わざとではありませんから」
「わ、わかった……」
一方、中々集合場所に来ない人達はというと着替えはとっくに終わっており海の家の看板を見ていた。
「私、これ食べたい!」
「私はこれかな」
「お二人さん、そういうの後でいいからそろそろ待ち合わせ場所に行かないと……。晃太、早く来てくれ……」




