勝ったら添い寝してあげます
放課後の教室。来週は、テストだが、隣にいる彼女がさっきから気になり内容が頭に入らない。
そりゃそうだ。だって、隣にはあの露崎瑞季がいるから。綺麗な長い髪にツヤツヤした肌。小さくて守ってやりたい。
教室にいるのは俺と瑞季だけ。今ならいける。キスしたって、変なことしたって、誰も見てないんだ。だから今すぐに───。
「おい、香奈。勉強に集中できないから静かにしてくれないか?」
俺は、顔をあげて目の前に座る香奈に向かって言うと本人は、ムスッとした顔で机に肘をついた。
「むぅ~、碧の頭の中を私が口に出してみたんだけど間違ってた?」
「間違いだ。まず、香奈と晃太がいるところで二人っきりじゃないし」
「んー、じゃあ、私と晃太が教室から出たらやっちゃう?」
何がやっちゃうだよ。テスト前だというのに香奈は余裕がありそうで……いや、これは諦めてるのか。
「香奈さん、碧くん、集中してください。2人は、前山くんを見習うべきです」
俺と香奈が話していると瑞季に注意された。晃太はというと怒られてるのを見て笑っていた。
「みっちゃんに怒られちゃった。碧、集中しなよ」
「俺は、集中してたからな?」
そこから30分程私語なしで俺達は、試験勉強をしていた。
「んー、疲れたぁ~。晃太、何か甘いもの食べたい」
香奈は、うんと背伸びをして晃太の肩に寄りかかった。
「碧くん、お疲れ様です。試験勉強は、順調ですか?」
机に広げていた教科書やノートをカバンに入れていると瑞季が話しかけてきた。
「まぁ、順調かな」
「そうですか。では、勝負しませんか? 勝ったら添い寝してあげます」
そ、添い寝!? 何かこういうシーンって勝ったら1つだけ言うことを聞くみたいな感じじゃない? もう、添い寝1択? いや、それもまぁまぁご褒美ですけど。
「わ~いいな。私もみっちゃんに添い寝してもらう~」
どうやら香奈と晃太にも聞こえていたようで香奈が話に割り込んできた。
「香奈さんはダメです。香奈さんが頑張ったその時は、手作りスイーツをあげます」
「やった! 私、頑張る!」
香奈のモチベーションが上がり、ニコニコしながら帰る用意をした。
「碧くん、先ほどの話ですが、碧くんが得意な英語で勝負でいいですか? 点数が高い方が勝ちです」
「うん、わかったけど……」
「あっ、もしかして他のご褒美がいいですか?」
「そうじゃなくて瑞季も勝った時にどうするか決めないか?」
「そうですね……碧くんが決めてください」
「……じゃあ、瑞季の好きなところに行こう」
「わかりました。試験頑張りましょうね」
***
テスト返却日、放課後になってすぐに瑞季は、俺のところに来た。
「碧くん、私に勝てる自信はありますか?」
学年1位の瑞季に勝つにはいつもの倍勉強しなくてはと思い、今回は特に英語を頑張った。添い寝のために頑張ったというのも嘘じゃないが、それよりも勝負をやるなら勝ちたいという気持ちがあった。
「まぁ、あるかな。どっちから点数開示する?」
「一斉に言いません? 今回、私も頑張りましたので負けた気はしません」
瑞季が自信満々にそう言うので俺は、負けたんじゃないかと思い始めた。
「わかった。じゃあ、せーの」
俺と瑞季は、英語のテスト用紙を互いに見えるように見せた。瑞季の答案用紙には『98』とありそれに対して俺の答案用紙には『95』。
「凄いな……」
「碧くんも凄いじゃないですか。よく、頑張りましたね」
瑞季から頭を撫でられたが、ここがどこかを思い出したのか彼女はすぐに俺かは頭から手を離した。
「ご、ごめんなさい。学校ではさすがにダメでしたよね……?」
「うん、まぁ、まだ他の人残ってるしここではちょっと恥ずかしいかも……」
人がいないところならされてもいいが、人前だとさすがに恥ずかしい。
「つ、次からは気を付けます。ところで私が勝ったら好きなところに行くとのことでしたが、碧くんの家に行ってもいいですか?」
「ん? 家?」
一瞬聞き間違いかと思い聞き直すと瑞季は、頷いた。
「はい、無理なら無理と言ってもらっていいのですが、お家デートというものをしてみたいです」
「いいけど、母さんに1回聞いてもいい?」
「もちろんです。急に押し掛けるわけにはいきませんから」
瑞季と予定やその日のことを話した後は、教室を出て帰ることにする。
「テスト終わりましたし、何かぱっーとやりたいですね」
何か香奈みたいことを瑞季が言ったら可愛いな。まさか香奈にこう言えと教え込まれたのか!?
「ぱっーとって何やるんだ?」
「そうですね、甘いものを食べるとか……」
そう言った瑞季は、何か思い出したのかハッとしていた。すると、俺の顔を見てうるッとした目で見てきた。
(えっと、これはどういう表情なんだ?)
「碧くん、私のお願い聞いてくれますか?」
「お願い? 聞くけど……」
「私、放課後、寄り道してクレープを食べてみたいです」
寄り道してクレープ食べるってそれはもしや放課後デートというやつでは?
「じゃあ、駅前のクレープ屋に寄って帰ろうか」
「はい、行きましょう」
いつもの倍ぐらいニコニコしており、クレープが食べたかったんだなと思う俺だった。
***
「ん~美味しいです。こういうの一度やってみたかったんです」
どうやら瑞季は、クレープを食べたかったわけではないようだ。放課後、友達とクレープを食べに行くということがしたかったらしい。
「碧くんのはキャラメルクリームでしたよね?」
「あぁ、うん。いるか?」
クレープを彼女の方に近づけると瑞季は、驚いたような表情をした。
「た、食べていいのですか?」
「食べたいならどうぞ」
「では、いただきます」
長い髪を耳にかけ彼女はクレープを食べた。その仕草を近くで見た俺は、しばらく彼女に見とれていた。
「そんなにじっと見つめて顔に何かついてますか?」
「いや、可愛いなって」
そう言うと彼女は、顔を真っ赤にして下を向いた。




