疑っているようでしたら私が今からここで碧くんのどこが好きなのか言います
翌朝、教室に着きすぐに荷物を置いて瑞季は、俺のところに来た。いつもなら自分の席に行ってクラスメイトに囲まれていたのだが……。
「碧くん、おはようございます」
「おはよう。珍しいな、瑞季から来るなんて」
香奈に無理やり連れてこられて来ることが多かったが、今日は自分から来てくれて少し嬉しいと思うのだった。
「碧くんと話したかったので。碧くんの周りにはいつも人がいるので学校では中々二人っきりになれませんからね」
周りには人がいるって俺より瑞季のことでは? 俺の席に来る人なんて香奈か晃太ぐらいしかいないんだが……。
「碧くんは、体育祭何に出ますか?」
「リレーとか走る系に出たいかな」
再来週、テストが終わればその後に体育祭が待っている。スポーツは、まあまあできる方なので困ることはない。
「瑞季は何に出るか決めたか?」
「私は、学年リレーと玉入れですかね」
玉入れと聞いて俺は、彼女が投げる姿を想像してしまった。絶対可愛い。
「碧くん、何考えてるんですか?」
「な、何も考えてない」
「本当ですか? ニヤニヤしてましたけど」
に、ニヤニヤ!? そんな顔してたのかよ俺は。
「ほんとに何も考えて───」
「おはよう、2人とも」
「おはよ、碧」
晃太と香奈かと思ったが、来たのは陸斗と支倉さんだった。
「おはようございます、さやかさん、田部くん」
「朝からイチャイチャしてるように見えたけどもしかして付き合い出した?」
支倉さんは、俺と瑞季にコソッと尋ねた。2人には言っていいだろうと判断した瑞季はコクりと小さく頷いた。
「おめでと。陸斗、付き合い始めたんだって」
「ま、マジか。良かったな、碧」
「うん、ありがとう」
支倉さんと陸斗が俺と瑞季のところに話に言っているのを見たクラスメイトが何かやらコソコソと話し出しているのに気付きもしかしてこれはと俺は思った。
「露崎さん、もしかしてなんだけど鴻上くんと付き合ってる?」
数人の女子が俺達のところに来てその中の1人が瑞季に尋ねた。
聞かれたら付き合ってるいると決めていたので瑞季は、小さく頷き笑顔で答えた。
「えぇ、お付き合いしていますよ」
「えっ、やっぱりそうだって!」
その女子は、そう言って後ろにいたグループの子達に言う。すると女子達が集まってきて瑞季に質問していく。
「いや、怪しいと思ってたんだよね。露崎さん、いつから付き合ってるの?」
「2日前です」
「えっ、最近じゃん! 鴻上くんとはどうやって────」
「はいはい、瑠菜、百々果、瑞季が困ってるから質問するならもうちょいテンション下げて。2人の勢いで瑞季びっくりしてるから」
そう言って女子からの質問攻めにあっている瑞季を助けたのは支倉さんだった。
「あっ、ごめんね。露崎さん」
「いえ、こうなるのはわかってましたから」
女子がたくさん集まってしまい、俺と瑞季が付き合っていることは男子にも広がってしまい、あまり話したことがない1人の男子が瑞季が女子と話している間に俺に話しかけてきた。
「鴻上、お前どうやってあの露崎さんを落とせたんだ?」
「落とせたって、俺は、別に彼女といるうちに好きになって────」
「えっ、露崎さんとはいつから仲いいんだ? その言い方だと前から仲良かったみたいな感じだけど」
別の男子がそう聞いてきて俺は、言うしかないのかと思った。さすがに懐かれたことを言ったら男子から何か言われそうなので言わないでおこう。
「高校1年の夏休み明けぐらいからだ。最初は少し話す程度の仲だったが最近は2人で出掛けてた」
「おおい! めちゃくちゃ仲深めてんじゃねぇーか。みんなの露崎さんを一人占めしちゃってさ」
「一人占めするつもりはなかった。瑞季が他の男子からのモテているのは知ってたし、一緒にいたら他の男子から睨まれることもわかってた」
俺は、最初瑞季と仲良くなりたくて一緒にいたわけではない。彼女が俺といたいと思っていたから一緒にいた。
だが、それは一緒にいるうちに気持ちが変わっていき、俺は側にいて彼女を支えてやりたいと思うようになっていた。
「露崎さん、鴻上に無理やり付き合えとか言われたんじゃ……」
露崎に俺は不釣り合いと思ったある男子がボソッと呟いた瞬間、瑞季にはその男子の発言が聞こえていたようで女子との会話を中断し、その男子の方を向いた。
「碧くんが私を好きになるより先に私が碧くんのことを好きになりましたから脅されて付き合っているなんてことはあり得ません。私は、碧くんのことが好きです」
瑞季の発言に周囲にいたクラスメイトは、驚いていた。ここでまさか下の名前で呼んでくるとは思わなかったし、それにクラスメイトの前で好きって。嬉しいが、恥ずかしい。
「まだ疑っているようでしたら私が今からここで碧くんのどこが好きなのか言いますけど?」
「えっ、いや、それは待って……」
俺が聞いたら顔が真っ赤になっていきそうだからそれはやめてほしい。
瑞季をとめなければ本当に今から公開告白しそうだ。 そう思っていると彼女は口を開いた。
「まず1つ目は────」
「ストップストップ。露崎、俺のために怒ってくれるのは嬉しいが、公開告白はちょっと……」
「わかりました、好きなところは二人っきりの時に言いますからね」
俺にだけ聞こえるように言ってきた瑞季は小さく笑った。
チャイムが鳴り1限目の教科の先生が教室に入ってきたが、ほとんどの人が着席しておらず集まっていたので驚いているのだった。




