放課後、いつもの場所で
「じゃあ、小山。ここの答えは?」
数学の授業中、香奈が当てられたが反応がない。香奈は俺の後ろの席なので心配して後ろを振り向くと香奈は、肘をついてうとうとと寝ていた。
寝てるし……。このままほっといて先生に怒られるのも彼女のためな気がしたがここは起こしてあげよう。
「香奈、起きろ。当てられてるぞ」
「ん? あぁ……ありがと……」
起きたのかわからないが、ノートを見て「5」と答えた。
「あぁ、正解だ」
えっ、いや、当たってんのかい。凄いな寝起きからの正解って。周りも俺と同じことを思っていたのか驚いていた。
「いや、あれは驚いたわ。香奈、凄いな」
「もっと褒めて~」
昼休み、お昼を食べようと俺の席の周りに集まっていた。
「授業中に寝るなよ。俺が起こさなかったら怒られてたかもな」
「あはははそうだね。ありがと、碧。さて、早くイス取らないと他の人に取られるから晃太、近くのイス借りてきて」
晃太は席が離れていて自分のイスをここまで持ってくるのは大変なので他の人の席を借りる。
「碧くん、一緒にお昼いいですか?」
晃太がイスを持ってきてくるのを待っているその時、瑞季がお弁当を持って俺に尋ねてきた。
「うん、いいよ。ここおいで」
隣の席の人にイスを借りて瑞季に座らせた。
「ありがとうございます、碧くん」
「ねぇねぇ、みっちゃんと碧。来週からテスト週間じゃん。だからさ勉強会やらない?」
「勉強会、いいですね。ご一緒してもいいのなら是非」
「やった。碧は? うんうん、じゃあ、参加ね」
「まだ何も言ってない」
これじゃあ、強制参加だ。けど、瑞季も参加するなら参加しようかなと俺は思った。
「露崎さんが来るならもちろん来るだろ?」
「なっ、そ、そんな理由で……」
図星をさされ、俺は完全に黙りこんでしまう。すると瑞季がクスッと笑った。
「さっきの碧くんの反応可愛いですね」
「…………」
「あっ、碧が照れてる。みっちゃん、もっとやっちゃって」
「えっ、やるとはどういう……」
「もう1回ぐらい可愛いって言ったらどう?」
もう、やめてくれ……さっきの1回で十分やられましたから。あんな笑顔で可愛いって言うのは反則だろ。
昼食を食べるのをやめて机にうつ伏せていると瑞季が耳元で囁いてきた。
「碧くんは、可愛いところもありますが、カッコいいですよ」
「碧、耳真っ赤だよ」
「顔隠しても意味ないな」
ダメだ。今は顔をあげて昼食を食べれそうにない。それよりもさっきの言葉は瑞季自信の言葉なのか、それとも香奈にこう言えと言われて言った言葉なのか。どっちなんだ……。
「みっちゃん、何て言ったの?」
「秘密です」
ん? 香奈が知らないってことは、さっきの言葉は瑞季自信の言葉ってことじゃ……。
「香奈、一緒にいいかな?」
「おっ、さやちゃん! いいよ~」
1人増えて5人で食べることになった。彼女の名前は、支倉さやか。彼女は、去年違うクラスだったのでまだ一度も話したことはない。
「露崎さん、春休みぶりだね。同じクラスになれて嬉しいよ」
「はい、私も支倉さんと同じクラスで嬉しいです」
どうやら瑞季は、支倉さんと一度会って話したことがあるようで女子3人は楽しく話していた。
「支倉さんと香奈は、同じ中学だってさ。碧は、同じ中学の人はこの学校にはいないの?」
「いるけどそこまで仲いいわけじゃない」
中学の頃に数人仲がいい人はいたが、全員別の高校に行ったしな。
「そう言えば香奈から聞いたんだけど最近、朝は露崎さんと行ってるらしいじゃん」
「あぁ、そうだけど……」
始業式以来、俺と瑞季は待ち合わせ場所を決めて一緒に学校へ登校している。
「最近、碧と露崎さんが付き合ってるんじゃないかと一部で噂になってるけど碧は、ご存知で?」
「知ってる」
そう噂されることは予測できていた。噂があっても鴻上みたいな奴を露崎さんが選ぶはずがないと皆は思っているようだ。
「碧くん、今日の放課後『hitode』に寄って帰りませんか?」
瑞季が小声で話しかけてきた。断る理由もないので小さく頷くと彼女は嬉しそうな表情をした。
「では、放課後はいつものところで集合です」
***
「碧、みっちゃん知らない?」
放課後、教科書をカバンに入れていると香奈が話しかけてきた。
「いや、知らないな」
おそらく先にあの場所に行っていると思うけど。
「そっかぁ~まぁ、明日会えるしいいかな。じゃ、また明日ね」
香奈と晃太には今日は一緒に帰れないと伝えてあるので2人は仲良く一緒に教室を出ていった。
俺も遅れて教室を出て、利用する人が少ない階段の方に向かって下に降りずに階段の踊り場へ向かった。
「待たせた。そんなに早く教室を出なくて良かったんじゃないか?」
「教室をのんびりと出てしまうといろんな方に話しかけられて中々帰れないので教室を飛び出しました」
そう言って彼女は、笑う。
「そう言えば教室から一緒に行けば良かったんじゃないか? わざわざここに集合しなくても」
「別にいいじゃないですか。それより今日は、1階で普通にカフェを楽しみましょうか。新作のケーキがあるそうですよ」
何かを隠されたような気がしたが、瑞季が話題を変えたので俺は深く考えないことにした。
「それは楽しみだな」
「はい、楽しみです」
そう言って瑞季がこちらを向いた瞬間、彼女が髪につけている物が目に入った。
「瑞季、そのヘアピンって……」
「やっと気づいてくれましたか。そうです、碧くんからもらったヘアピンです。似合ってますか?」
「……うん、似合ってる。とても」
「ありがとうございます。碧くん、手繋いでもいいですか?」
「ん、どうぞ」
手を差しだし、彼女は俺の手を握った。




