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新しい友人

 2年生1日目は、始業式と短時間のホームルームで終わった。


「碧、帰ろうぜ」


「あぁ……」


 今朝話してから結局最後まで瑞季とは話せなかった。


「よっ、晃太。今年は、よろしくな」


「おっ、陸斗じゃん」


 晃太は、友達と話しており俺は、話が終わるまで待とうと思っていると晃太が俺の肩に手を置いてきた。


「陸斗にも紹介しておこう。去年からの友達で鴻上碧くんだ」


「おい、くんづけで紹介するなよ」


「いいだろ」


 俺と晃太のやり取りに陸斗は仲いいねと笑った。


「俺は、田部陸斗たべりくと。気軽に陸斗でいいからな碧くん」


 陸斗がそう言うと晃太はわかってんじゃんと目で彼に言う。


「くんづけしないでくれ。晃太と陸斗は、どこでの知り合いなんだ?」


「晃太とは同じ中学。ちなみにあの露崎さんも同じ中学だ」


 そう言って陸斗は、まだ教室に残って女子同士で話す瑞季に目を向ける。


「晃太は香奈と付き合ってるけど碧は、誰かと付き合ってんの?」


 急だな。初対面で普通こんな話をするのだろうか。


「碧は、露崎さんのこと好きなんだよな?」


 俺が誰とも付き合ってないと答えようとする前に晃太がそう言った。


「おい、言うなよ」


「いいじゃんか。別に陸斗は、誰かに言いふらす奴じゃないし、露崎さんに興味ある男子ってわけでもないからさ」


 そうじゃなくても勝手に言わないでほしい。言うなら自分の口で言いたい。


「へぇ、露崎さんか。ライバル多いし頑張れ」


「うん……」


 まだ会って話してから数分しか経っていないが陸斗が誰かに言いふらすことがないし、優しい人であることはわかった。


「てか、この現象どうにかならんかね。初日でグループできる現象」


 まだこのクラスになってから1日しか経っていないというのにクラスではもうグループができている。


 部活が一緒だったり、去年同じクラスだったりとそういうので集まっているのはわかるが、それにしても早い。


「陸斗は去年同じクラスだった人は今年はいないのか?」


「サッカー部の人はいるけどあんまり仲良くないんだよな」


 サッカー部は、不仲なのだろうか。仲いいって聞くけれど。


「まっ、俺らと仲良くしようぜ。陸斗は、今から部活だよな? 頑張れよ」


 晃太は、そう言って陸斗の背中を叩く。俺も遅れて部活頑張れっと言うとありがとうと返事が返ってくる。


 陸斗が教室から出ていって部活へ向かっていった後、俺と晃太は、香奈に一緒に帰ろうと誘おうと彼女の元へ行くとまだクラスメイトと話していた。


「香奈待つか?」

 

「俺は、待つ。彼女を1人で帰らすわけにはいかないからな」


 カッコいいお言葉ありがとうございました。しばらく帰れそうにないなと思ったその時、服の袖をクイッと誰かに引っ張られた。


「碧くん、一緒に帰りませんか?」


 そう言って誘ってくれたのは瑞季だ。チラッと晃太の方を見ると2人で帰ったらと言われた。


「いいよ。じゃあ、晃太、また明日な」


「おう、明日話聞かせろよ」


 何の話をだよ……。俺と瑞季の会話を教えるってことか?


「前山くん、また明日です」


「うん、また明日」


 晃太と別れて瑞季と一緒に教室を出る。学校を出るまでに何人かの生徒とすれ違いチラチラと視線がこちらに向けられていたが、気のせいだと思い、気にせず歩く。


「私といて嫌な気分であれば言ってくださいね」


 俺の様子を見て瑞季がそう言った。


「嫌な気分?」


「先ほどから何やら視線が集まっているので碧くんの気分を害してないかと思いまして。私はああいうのに慣れっこですし何とも思いませんが、碧くんが嫌な気持ちになるのは嫌です」


 慣れっこ……。彼女はそう言うが無理して笑っている。俺に本当のことを知られないために。


「俺は、瑞季といて嫌な気持ちにはなってない。周りの視線が気にならないと言ったらのは嘘になるが……」


「……見られてるならいっそのこといつものように振る舞うべきでしょうか」


「いつも……いやいや、ここで!?」 


 ここでいつものように甘えられると俺もどうしていいか困る。俺は、別にいいんだけど……。


「付き合ってると間違われるからここではやめた方がいいんじゃないか?」


「……それもそうですね。私は、別に付き合っていると思われてもいいんですけど……」


 小さい声で呟いたが俺は、ハッキリと聞こえてしまった。付き合っていると思われてもいいと彼女は言った。


「そうです、今日は碧くんに話したいことがあるんですよ」


「話したいこと?」


「えぇ、今週の土曜日、水族館に行きませんか? 2枚チケットがありますので」


 つまりそれは水族館デート。けど、約束する段階で恋愛的な展開を期待していたのは俺だけならデートにならない。瑞季は、デートのつもりで誘ってきたのか?


「俺でいいの?」


 香奈とか女子と行ったほうがいいのでは?と思った俺は、彼女にそう尋ねると瑞季は頬を膨らませた。


「私は、碧くんと一緒に行きたいんです。碧くんのことだから俺といても楽しくないとか思ったんでしょうけど」


 半分図星なため俺は、黙りこんでしまう。


「私と水族館へ行きたいか、行きたくないか。碧くんにある選択肢はこの2つです。さぁ、どっちですか?」


「行きたいです!」


「よし、いいでしょう。行くからには全力で楽しみましょうね」


 瑞季の謎の圧に負け俺は、正直に返事をした。

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