朱里の能力
幼い頃から朱里は能力があると病院から診断を受けていた。
診断名・フェロモン
これだけ聞けば色気があるのかなぐらいだが、この能力を持っている人は美形が多いと言われている。
また、多くの人を魅了し、愛される能力のため、フェロモンの能力を持っている人は芸能人に多く、名前を聞いたら誰でも知っていると言うぐらい成功している人はこの能力を持っているとかいないとか、…
朱里は幼稚園でもう美少女に出来上がっていた。そのため告白とスカウトを2,3日に1回のペースでされていた。そういう時私はその隣にだいたい居た。告白、スカウトの邪魔はしなかったが、朱里と二人で会いたいという人たちからしたら邪魔な存在だったのだろう。朱里が居ないと私は一人もしくは大人と一緒に居た。私と朱里は母親同士が仲良く、姉同士も同い年ということで家族絡みで付き合いがあった。朱里の母は朱里に能力があると知ると酷く驚き、悲しんだが、能力がフェロモンで芸能界に向いていると知ると、悲しんでいた事が嘘のようにとても喜んだ。朱里の母はもともとモデルを目指していた為、娘には芸能界に入って欲しいという願望があったそうだ。朱里は子役モデルをしていたが高校入学と同時にモデル活動を休止し、大学生活を健全に謳歌している。
「朱里ちゃんはこのまま芸能界で活動するんじゃないの?」
朱里は数拍考えてから「いや、まだ考え中〜。芸能界また戻るのもいいなぁっとも思うんやけど、違うことやってみたいとも思うし〜、大学でしたい事見つけられなかったら卒芸能界の道も考えてるかな〜…。」
「へー、いいんじゃない?」忍は目を細めて笑う。
「…しーちゃん全く興味無さそうに言ってくるやん…。」朱里は右肘を机につきながら、不満そうに眉をハの字にし、忍をじっとりと見る。
朱里には私の顔が笑ってなく見えるようだ。伊達に親友をやっていないわけじゃあない。
「私のことではないし、今、私の頭は自分の将来の不安が大部分を占めている。他の事をちゃんと考えられないんだよ。私は脳の許容量が狭いんだ。毎日自分の事で不安だよ。」サービスのお冷をくいっと一気に飲み干し、忍が席を立とうとすると
「しーちゃんは将来どうしたいの?どっかの企業へ就職?それとも能力の方に関係す…」
「朱里ちゃん、私のアレについて私が嫌いなの知ってるよな?…今から予定あるから、」
「知ってるからこそ聞いてるんじゃん。能力がある事での良い事,悪い事踏まえてしーちゃんがどうするか一緒に相談してこうよ!同じ能力ある同士〜!」
忍はその言葉に少し固まった。しかし、すぐに「予定あるから、またね。」と言い残し店を出て行った。
あぁ、くそっ!何が「同じ能力ある同士」だ!お前の能力なんてこっちは喉から手が出る程欲しいわ!能力を持ってるせいで日常生活を普通に送る大変さ!交換してやりたいわ!朱里も能力と引き換えに何かあるんだろうけど朱里は自分の能力にメリットを見出せている…。こっちはこの使い方さえも分からず、嫌な事しか思いつかない。あぁ、ネガティブな事がどんどん流れてくる。うぇ、気持ち悪い…。予定終わったら帰って寝よ…。
「あ〜あ、行っちゃった。ちゃんと喋りたかったのに。私はしーちゃんの能力好きなのに…。」朱里は両肘を机につきながらだんだんと小さくなる声で独り言を呟いた。
「お待たせしましたー。イチゴフラペチーノチョコソースがけでございまーす。」
「はーい!ありがとうございま〜す。」