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7話 冒険者は相談にされる。

冒険者ギルドでは一人の話題に盛り上がっていた。

それは冒険者リトについてである、いつも眠そうな表情な子供である。


受付嬢曰く、「挨拶のできる良い子ですよ。」や「仕事が丁寧で良い子ですよ。」と評判は良かった。

『鑑定』職員曰く、「薬草採取率は上々で助かります。」や「貴重な薬草も納品してもらって助かります。」とこちらも高評価。

冒険者曰く、「戦えるのみ戦わない軟弱者。」と言う者もいれば、草原で救援した冒険者からは「気配無く野犬を倒す凄腕。」と言う者もいる。


冒険者ギルドでは、討伐冒険者ばかりで採取冒険者の存在は貴重である。


リトが薬草採取を始めてから薬草の在庫に加え、街での調合師から質の良い薬草が好評である。



冒険者ギルドのギルドマスター『ドワンゴ』は、リトから助けられた冒険者達から「救護時の報酬の支払いをお願いできない?」と相談され、「ギルドへの自己申告で報酬を支払う。」という初の試みを確立する。


ギルドの一室では『ドワンゴ』と孤児院出身の冒険者『ジン』が話し合いをしていた。


「子供に野犬の群れに向かって行けるか?」


『ドワンゴ』の心配は『ジン』に言わせれば


「リトは戦えるぞ、戦う気が無いだけでな!」


「その戦う気が無いというのは?冒険者なら討伐したい年頃では?」


「あははは、討伐したい年頃ってなんだよ。

リトは討伐は興味無かったなー。なにより解体作業が苦手だった気がする。」


「討伐に興味なしで、解体が苦手?」


「倒した後の解体が嫌らしい。

面倒な事は本当に嫌というかダメらしい。」


「冒険者としてはランク上げるは難しいかもな。


「リトには冒険者ランクは関係ないと思うぞ。

孤児院生活より生き生きしてるしな!」


「眠そうな顔で薬草を納品してると聞いているが?」


「眠そうでも納品してるから大丈夫!

孤児院いた頃は本当に寝てばかりだったし。」


「寝てばかりにしては薬草を見つけるのは上手だな。

それと戦えるとも聞いていたが?」


「それに関しては鍛えたからな、孤児院で最低限の戦う術は教えてるし、何よりリトには俺らの薬草の仕分けをお願いしてたからじゃないか?」


「お前らの薬草採取の成績が良かったのは・・・そういう訳か。」


「今じゃ薬草採取する気はないがな!

雑草ばかりで禁止されちまう。」


「それで薬草の知識を蓄えたか、戦う術とは何を教えたんだ?」


「木製の武具で一通りだな、スキルとして習得したかは知らないが、扱えるくらいにはなったんじゃないか?ただ武具の戦闘よりリトは無手の戦闘が好きだった気がするぞ。」


「それは何でだ?子供なら真っ先に剣を振りたいと思うが?」


「あー、その事なんだが・・・リトが言うには武器は重いから嫌ださ。

戦い方を教えたら木陰で昼寝をる子供だったな。

魔法も同じく『生活魔法』は教え込んだし、攻撃魔法も教えたはずだが修練状況は知らんな。」


「草原で助けられた冒険者からは、『風魔法』で野犬を刻んだらしい。

倒していないから初級魔法だと聞いていたが・・・。」


「孤児院で初級魔法は教えていたかな、きちんと習得してたみたいだな。

リトは戦う気が無いから実戦経験は少ないのは問題か。」


「そういえば他の孤児院からの冒険者はどうした?

確か子供13人が冒険者になったと聞いたが、リト一人しか冒険者として活動してないよな?」


「他の子は違う仕事をしてるよ、各商店で即戦力だとさ。

多少の魔法もつかえるし、読み書きも出来るから助かってると聞いてるぞ。」


「他の子供も規格外な感じか?」


「普通の子供ですよ、冒険者の死亡率を聞いて他の仕事してるだけです。」


「現実を見てる段階で普通じゃないよ。

良い意味で冒険者向きだがな。」


「それで孤児院出身の冒険者の事を聞いてどうするつもりで?」


「どうもせんよ。草原で話題の冒険者の事を知りたいだけだよ。

俺はリトという子供と接点無いからな参考になった。」


「そりゃどうも。

リトは眠そうなだけで普通な子だぞ?

色々強制しても拒否すると思うぞ?」


「何も強制はせんよ。

ギルドとして助けられた者がお礼をしたいと相談されただけだ。

お前さんからはリトの人となりを聞いただけだ。」


「リトにお礼?」


「草原でリトに助けられた冒険者がいてな、お礼を断られて相談されたんだよ。」


「あぁー、お礼を貰うのも面倒と思っただけだろ?

律儀に気にしてもしょうがないのに・・・。」


「最近では草原で毎日の様に救援救護をしてるみたいでな。

初心者冒険者から感謝の声がギルドに届くんだよ。

しかも、リトは頷くだけで救援後の討伐依頼報酬を断るし。」


「解体もしないから報酬は貰えないと思っただけだと思うよ。

それでも報酬を渡したいなら、ギルドとして別途に特別報酬を渡せばいい。

助けた方がギルドに申告してし、渡すようにすれば大丈夫だと思うぞ。」


「それは無理に渡してもダメという事か?」


「強制は嫌いだし、面倒な説明も話半分で聞いてない可能性があるしな。」


「了解、その辺がギルドで相談して決めよう。

薬草採取の報酬に別途渡す感じにするかー。」


「それがいい。」


ジンは相談が終わったと思い席を立ち部屋を出ていく。

最後にドワンゴに向かい、声をかける。


「リトは冒険者になったばかりで、毎日楽しそうだから邪魔だけはするなよ。」


「そんな事はせんよ。

採取冒険者はギルドとしても大歓迎じゃ!」


「他の冒険者にも邪魔させるなよ。」


「一応はギルド内での揉め事は止めているから大丈夫じゃ!」


「んー、ならいいか。

それじゃ、宜しくなー。」


そう言ってジンはギルドを後にする。


リトの活躍を聞き、その足で酒場へ向かう。



ドワンゴは受付嬢の『アンリ』と『リンカー』にリトに対する別途報酬を説明する。


「それでは冒険者から申請があった場合に別途報酬を渡すと?」

「報酬額に関してはどうしたら?」


「申告した冒険者からの支払いだから一律の金額じゃない。」


「報酬額は一定ではないのですね。」

「もし報酬額について聞かれた場合は?」


「別途の特別報酬で決まった金額では無いと伝えてくれていい。」


「では、その様に致します。」

「この別途報酬はリト君だけに?」


「草原で冒険者を救護救援する冒険者は他にいないだろ?」


「あー、そういえば。」

「いませんね。」


「もし、他に救援救護する冒険者がいた場合は、助けられた冒険者から違う名前を聞く事になるだろう。」


「了解しました。」

「別途対応は冒険者からの申請後に行います。」


「今まで助けられた冒険者に教えてやってくれ。

彼らも色々な意味で困っていたからな。」


「「はい。」」


後日、リトは薬草報酬とは別に報酬を渡される。

何の報酬かは詳しく聞かず、生活費が増えた事を喜ぶのだった。

ドワンゴ(♂):冒険者ギルドのギルドマスター。

ジン(♂):孤児院出身の冒険者。

アンリ(♀):冒険者ギルドの受付嬢。

リンカー(♀):冒険者ギルドの受付嬢。

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