3話 採取者はスキルを知る。
リトはゲームでお馴染みのスキルについて考える。
しかし、子供の身で武器スキルの習得は・・・無理だなと考える。
神父から教わった『生活魔法』を最初に覚えるつもりでいた。
魔法で生活なる役立つ魔法という事で、明かりを照らす魔法や火種になる魔法、汚れを落とす魔法を習得するつもりでいた。
聞いた話では魔法は誰しも使えるスキルらしい、魔力を消費し魔法を行使する。
魔法スキルは多種多様、1つと同じものは無く、個々で習得すると・・・。
リトは孤児院の木陰に座り身体に流れる魔力を知ることから始める。
「身体の魔力か・・・。」
目を閉じ身体の状態を把握する。
魔力は身体を巡っていると聞いていたので、身体を巡るイメージを血の流れと考える。
「回れ回れ・・・。巡れ巡れ・・・。」
魔力が巡るイメージをしていると、へその下あたりが温かくなってなってくる。
腹を触るとポカポカしている気がするが・・・これが魔力かな?
「魔力を消費して魔法を行使か・・・。
どうやって消費するのか・・・さっぱりわからん。」
試しに魔法で明かりを灯そうと思い・・・。
「手の中に明かりを・・・。」
最初は言葉にした方が魔法が使えると思ったんだが失敗した。
身体の中の魔力が減っていたので、魔法は使えたみたいだ失敗したが。
「魔力消費はしている、魔法の実行は失敗か。」
木陰で何度か魔法を行使し、失敗を繰り返し、最初の魔法は30日後となる。
木陰で魔力枯渇で倒れて保護され続けた。
最初こそ昼寝を思われ放置されていたが、雨降る中に倒れて発見されてから、魔力枯渇を注意されたが気にせず毎日倒れていた。
神父やシスターからも「魔力枯渇は危険です。」とか「魔力枯渇は寿命も枯渇します。」と言われたが、「魔力枯渇で死んだ人はいない。」とも言われた。
「魔力枯渇は死ね程苦しいので、魔法を使う場合は魔力の消費を考えなさい。」
その神父の言葉に心に響いたが、苦しいだけなら大丈夫と考え、倒れてもいいように寝る前に魔法の練習をするのが日課になっていく。
『生活魔法』は生活に役立つ魔法という事で、前世の暮らしの再現を目指していく。
「簡易的な『鑑定』スキルは習得したから、薬草を知ることから始めるか。」
リトは書物で薬草の存在を知っていた。
実物は孤児院出身の冒険者の何人から薬草を見せてもらい。
見て触って薬草を完璧に知る事になる。
これがリトが『採取冒険者』になる最初の一歩となる。
それから街で採取する薬草各種を覚えるのに1年を有した。
最近では採取した薬草をリトが孤児院で『鑑定』していた。
おかげで孤児院出身の冒険者達は、薬草の採取成功率100%で評判が上々との事。
「リト坊のおかげで薬草採取早くになったぜ。」
「それにしても3割が雑草なのは問題では?」
「そうか?半分以上雑草を持ち込むのが普通だぞ。
リト坊が仕分けする方が凄いがな。」
「まぁ、仕分け報酬で孤児院に色々もらってますから。」
リトが薬草の仕分けする時に多めに肉をもらうので孤児院として嬉しい。
何より薬草の仕分けをする為に『鑑定』の精度が上がり続けている気がする。
「冒険者になる前に『鑑定』スキルを習得したのは嬉しい限りだ。
あとは自衛スキルがあれば冒険者として暮らせるはず。」
戦う術は孤児院出身の冒険者達から教わり、初期戦闘スキルは孤児達の必須スキルである。
リトも剣と槍のスキルを習得していたが、鉄製の武器は重く疲れるので、リトは格闘術や棍での戦闘を好んでいた。
もっとも戦う事になったら、逃げるか隠れる気でいるのだが。
補助魔法や攻撃魔法も習得したが、孤児院での生活では使う機会もなく、リト的にも習得して満足していた。
「ゲームで定番の『アイテムボックス』や『収納庫』っぽいのを習得したし、これで荷物を背負う必要は無いし採取作業や運搬作業も楽になるはず。」
この世界でも『収納魔法』は習得可能で、所持魔力で収納量の量が決まるとの事。
リトは子供の頃から魔法を使っていたので保持魔力が大人並みなっている、人よりも収納量が豊富であったが、リト的に何も収納するものがなく、どれほどの量を収納できるかは誰も知る事は無かった。
冒険者として暮らせる術は孤児院卒業までに何とかなった。
安心して寝る場所と美味しい食事があれば大丈夫。
孤児院では料理の手伝いもしていたので、『料理』スキルは習得した。
本当は『鍛冶』や『調合』スキルも習得したかった。
「ゲーム的にスキル習得は必須だったなぁ。
ストーリー無視してキャラを育てていた気がする。」
子供の頃のゲームは勇者が魔王を倒すゲームばかりで、最後に遊んだゲームがキャラ育成ゲームが多かったなぁ。エンディング無い終わりの無いゲームが多かったな。
この世界では良い意味でゲームっぽいけど、エンディング以上に死んだらバッドエンドだしな。
「最悪死なない様にならないとな。
魔王もいない世界だし、無理しなきゃ大丈夫と思うけど。」
それでもこの世界の人達の命は軽いものだった。
魔物の襲撃、ダンジョンの氾濫、人が人として暮らすには厳しい世界だったりする。
種族同士の争いが少ないのは、種族を超えて手を取り合え必要があったからだ。
リトが住まう街も魔物の襲撃備え防壁に囲まれている。
周囲にダンジョンがないので、他の街よりも暮らしやすく冒険者的には『冒険』に向かない街と言われている。
いい意味で初心者冒険者に優しい町ともいえる。
リトが12歳までに最低限のスキルを習得し、冒険者になり活躍(?)する。
知りたい知識も欲求も少なくなり、冒険者になる頃には惰性で暮らすようになり、持ち込みの薬草の仕分けや日課の魔力枯渇だけで、予定が無い日は木陰で昼寝したりしていた。
仕事は丁寧なので問題が無いのだが、寝てばかりのリトはいつしか『眠りのリト』や『怠惰なリト』と言われるようになる。
その事についてリトは気にせず、黙々と淡々と日々を過ごすのであった。
リトは睡眠が好きなのでは無い、夢の中だけが思い描いた冒険譚だからだ。
ゲームで使えた大魔法を唱えたり、囚われのお姫様を助けたり、前世の記憶がこの世界に歪に反映されていく。
それは違うと思いながら、そんな都合のいい展開は皆無であると知りながら、リトは夢想する。
夢は夢であると、この夢はリトが12歳の冒険者になる前日まで続き、冒険者になってからは見ることない夢。
ある意味、夢を切り捨て現実を知るまで続くのであった。
3話はリト12歳までの物語です。
次話から初心者冒険者編になります。
夢の異世界から、現実の異世界を知り、何を求めるか。