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2話 採取者は前世を知る。

リトは冒険者である。

ゲームや小説で胸躍る冒険者である。

世代的には『一狩り行こうぜ!』と友達を遊んだ記憶が懐かしい。

剣や魔法、前世では夢見た世界である。

それは幻想した世界である。


リトが転生者としての記憶が復元されたのは3歳になった時である。

孤児院で他の子供より行動が遅く、子供より思考し行動し、争う事を避けて生きていた。

その日も孤児院裏庭で子供達が遊んでいるのをリトは木陰で昼寝をしていたが、その日は気温の低下とともに空には雷雲が空一面に広がっていく。

気が付けば小雨が降り、豪雨へとかわる。

空が光り、雷が鳴り響く。

孤児院の方からリトを探す声が聞こえ、リトは何気なく孤児院へ駆け出す

その時、リトは雷にうたれた。


ピカ!ドゴォォォン!!


空が光った瞬間にリトは雷を全身に浴び仰向けに倒れる。


その時リトは一度死んだ。

心臓は数秒・・・数10秒であるが停止し、3歳という短い人生は終了した。

その時に前世の記憶が脳に心臓に膨大な情報と共にフィードバックした。

いや、前世の記憶をダウンロードしたというべきか。

前世の名前や生き様などの記憶は無く、子供のころ遊び親しんだゲームや小説、アニメの記憶が思い出す。

イイ意味で前世の黒歴史と思われる記憶も一緒にだが。


この日、リトは異世界へと生れ落ちる。

身体には『雷紋』が刻まれたが、神父とシスターの治療により助かる事になる。


リトは雷にうたれてから外へは極力出ることなく、部屋に籠るようになる。

籠るといっても神父やシスターに文字を教えを請い、昼寝ばかりの子供は勤勉な子供へを成長させた。

それは人が変わった様に学び知識を吸収し、孤児院や教会にある書物を読み漁る。

世界の成り立ち、政治や信仰はもちろん、前世の善悪と異世界での齟齬を知る為に。


神父には『何か良くて何がダメなのか知りたい』と色々聞き、知識を求めた貪欲に・・・遊ぶ時間も寝る時間を惜しみなく。


リトの育った街は防壁で囲まれた堅牢な街であった。

教会と孤児院の土地は街のはずれで墓地の隣にあり、冒険者たちの無煙墓地もここにあった。

それは孤児院の親だったものもあり、墓地の墓守は教会関係者が対応していた。


孤児院は13歳で仕事を求めて巣立つことになる。

その為、孤児院では子供達に読み書きを教え、いい職場へ就職できるようにしていた。

それでも男の子は夢を求めて冒険者へとなり、女の子は商会や宿屋など読み書きが必須な職場で重宝される。

孤児院卒業後も孤児院で孤児達に戦い方を教えたり、討伐した獲物肉を届けたりしていたので、冒険者へ羨望の眼差しを向けていた。

リトも3歳までは孤児院出身の冒険者をキラキラした目で見ていた。

記憶が戻ったと後は、冒険者の冒険譚よりも何をして何をするのかを聞くのが好きだった。


「冒険者には討伐冒険者と採取冒険者がいる。

討伐冒険者はギルドから依頼された獲物を倒す者達、採取冒険者は薬草採取や採取専門な者達。

俺は討伐冒険者だから採取の事は専門じゃないぞ。」


「討伐はどんな感じなんですか?」


「ん?どんな?討伐する獲物や数、それと討伐期限があるかな。」


「獲物や数ですか?」


「そうそう、討伐クエストにもよるが・・・。

例えば野犬5匹の討伐を5日以内で銀貨5枚とかかな。」


「野犬を5日以内なら野犬の素材が痛むんじゃ?」


「それならギルドカードに倒しか獲物や数が記憶されるみたいだな。

なぜかはわからないがそういう機能があるみたいだ。

俺は野犬は倒したら解体して別途報酬を得ているがな!」


「それは討伐依頼とは違うんですか?」


「大元の5日以内で野犬を5体倒せば問題無いぞ。

討伐クエストもギルドカードを見れば確認できるしな。

それに討伐数以上を倒したら追加で報酬額が増えるしな!」


「それはやればやるほど報酬額が増えるんですね。」


「まあな、冒険者の全ては自分に責任がある。

だから信じられる仲間を集めるんだ、1人での活動には無理があるからな。」


「そっか、私にはかも。」


リトは聞けば聞くほど大変な事に気がつく、前世の記憶があるから冒険者に憧れていた。

憧れていたが異世界は命が軽い、前世は生きるのが難しかったが生きるだけなら楽だった。


「俺には無理だったが、採取冒険者のベテランは討伐冒険者より稼いでいるぞ。

この辺りだと草原での薬草はポーションの材料だし、状態が良ければ高額で取引されるしな。」


「それは採取しやすいんですか?」


「どうだろう、俺の場合は薬草採取は雑草が多すぎてな、ギルドから断られてるしな。

俺の場合は薬草も雑草も違いが判らないからな。ダメだったけど・・・。」


「見分け方が大事か。」


リトは異世界で定番の『鑑定』スキルがあればいいんだがな。

その日からリトは異世界で定番のスキルについて考え始める。



前世で好きだったゲームは、レベルを上げてスキルを覚えていった。

レベルを上げるにはゲーム的には魔物?獲物?を倒す必要がある。

それよりも、この異世界にもレベルやスキル、ステータスはあるのかを知る必要がある。

孤児院出身の冒険者のギルドカードには一応レベルが記載されていたので、レベルの概念はあると思われた。

個人のレベルなのかギルドでの活動レベルなのかはわからないが。


リトは日中に書物を読みながら、レベルやスキルの事を神父に色々聞いていた。


「レベルは個々の成長の証であり、スキルとは経験の積み重ねである。

自分が望んだスキルを得る方法については解明されていないが、修練の先にスキルがあるとされている。

剣を振れば剣のスキルが、槍を振れば槍のスキルを得る事があるが絶対では無い。

教会的には適性がないと昔から言われておるな。」


「それなら得たいスキルを得るには何をするかを考える必要があると?」


「リトが得たいスキルは何かな?」


「例えば周囲を警戒するスキルとか、モノを知るスキルとかかな。」


「警戒するスキルなら『気配察知』スキルがあるな。

知るスキルなら『鑑定』スキルが有名だな。」


「それはどのように習得可能なんですか?」


「『気配感知』なら森の中で常時警戒していたら習得していたと聞いた事がある。

『鑑定』は知りたいモノの詳細を知る事で得るらしいが・・・詳細は不明だね。」


「スキルを得るには習得する術がある事ですね。

それはどんなスキルにおいてもですか?」


「武器を用いた武器スキル、魔法を用いた魔法スキル。

それ以外の技術的スキルも同様に必要なスキルには習得する期間が必要だね。

似たようなスキルでも個々でスキル性能が違うというのもある。

例えば武器スキルでも効果の違いはあるよ、スキル性能に攻撃範囲などは誰一人として同じスキルは無いよ。

魔法にしても似たようなスキルはあっても消費魔力も違うし効果も違うよ。」


「あの神父様、魔法は誰でも使えるんですか?」


「魔法の習得は誰でも可能性はあるよ。

例えば生活魔法の光を照らす魔法などは適性なく使えるよ。」


神父はリトの前で小さな光の玉を掌に出現させる。

それは小さくもあるが暖かい光であった。

呪文も魔法名の無く魔法が使えるのに驚きはしたが、リトは魔法が出現したのを『見た』


「それが魔法ですか?」


「そうだ、孤児院でも夜の明かりは全て魔法だったんだが・・・気が付いてなかったかい?」


「はい、そういうものだとばかり。

部屋がきれいなもの魔法ですか?服の汚れももしかして?」


「孤児院での生活に関しては、シスターたちの魔法で成り立ってるよ。

もっとも孤児院ではシスターの治癒魔法でのお布施が重要なんだけどね。」


「治癒魔法ですか?」


「教会的には治癒は癒しの魔法、覚えておいてもらいたい魔法の1つだね。」


「それは教会的にですか?」


「癒す力は生きる上で重要だからだよ。

この世界は命が軽いからね、せめて自分とその家族は助けたいでしょ。」


神父は優しそうな悲しそうな顔でリトへとほほ笑むのだった。

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