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小説家になろうラジオ大賞4

ひまわりに明日はない

作者: 尾手メシ

 東から登った太陽が西へ沈み、カナダのイエローナイフの空にオーロラが輝いたような輝いていないような日、世界はスキルに目醒めた。ある者は指先にローソクくらいの火を灯し、ある者は暗闇で目がピカッと光り、ある者は構えた扇子の先から水を出す。全世界で隠し芸の一大ムーブメントが巻き起こるその裏で、ひっそりと魔王が誕生した。


 麦秋の陽気の中で活動を開始した魔王は、まず自宅の庭をひまわり畑に変え、お隣の橋田さん家のバラのアーチをひまわりのアーチに作り変え、向かいの富田林さんの畑を侵蝕していく。

 市中をひまわり畑で埋めつくし、県中をひまわりで染め上げて、日本中の田んぼという田んぼ、畑という畑が全てひまわり畑に成り果てるのに、さほどの時間もかからなかった。

 ひまわり帝国と名を改めた魔王の軍勢は、朝鮮半島と台湾島を足掛かりにユーラシア大陸に進出。大陸中央部の砂漠地帯に手を焼きつつも、急速にその支配地域を拡大していく。

 危機感を覚えた西欧世界はクルミを盟主としたミックスナッツ同盟でこれに対抗するも、ピーナッツの裏切りにより、あえなく同盟は瓦解した。ピーナッツは豆だったのだ。

 草聖ひまわり大帝国が全てを支配する恐怖の世界、後に「暗黒のひまわり時代」と呼ばれる苦難の時代の幕が上がる。


 お米もパンも奪われた人々が唯一許されたのはひまわりの種のみ。 来日も来日もひまわりの種を食べる。カリカリカリカリひまわりの種を食べる。中性脂肪は減少し、ぽっこりお腹は引っ込んで、生活習慣病は改善する。

 体制に反対する者は、容赦なく摘発されていく。反政府組織として最大勢力を誇った「秘密結社柿の種」のメンバーは、一人残らず逮捕された。

 収容所での生活は過酷だ。日がな一日ひまわりの種を食べながら、鉄のドラムの内側をカラカラ走って回す日々。適度な運動とハリウッドセレブ御用達のひまわりの種によって、柿の種と焼酎によって弛んでいた体は引き締まり、健康体へと改造されていく。

 ひまわり色は魔王と側近にのみ許された大帝国の象徴。人々はその色を恐怖と諦念を抱えて見上げるのみ。もはや、ひまわりの種で健康になる以外に生きる術はない。

 しかし、人々の嘆きが満ちる時、アイツは必ずやって来る。タピオカミルクティを片手に下駄を鳴らしてヤツが来る。英雄譚は始まったばかりだ。




次回

『敵か味方か安納芋!!夜明けのキャッサバーン』

暁の空にタピオカミルクティが唸りをあげる!

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― 新着の感想 ―
[良い点] インパクトがあってめちゃくちゃ面白かったです!! 斬新な設定でグイグイ読ませてくださる筆力!!かっこよさに痺れました!! すごい面白い…!と読み返して噛み締めています!!
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