旅立ち
~~ 昔、ここは人類が支配していました。それは、人間の高度な文明が、「力」を上回っていたからです。しかし、ある日突然、「力」が進化しました。魔物となった「力」は、人間の文明をたやすく克服し、人間の住む都市にやってきました。そして、魔物は人間だけを狙い、男・女も関係なく、食べつくしました。
生き残った人々はこの厄災を、「デゼスポワール」と呼び、魔物を恨みました。世界の所々に街を起こし、魔物を殺す武器を作りました。しかし、魔物は繁殖力が高く、殺しても殺しても、魔物は増える一方です。
この戦いに、終わりは来るのでしょうか。 ~~
「人間と魔物は、今も戦い続けているんですか……?」
「そうねぇ、どっちも因縁があるからね。私たち、エルフからしたらどちらに着くか悩みどころよね」
私たちはエルフ。人間と魔物のハーフだ。16歳になると冒険者として旅に出られるので、冒険者ギルドに向かうべく、先輩のスミレさんと共に町に向かって歩いているところだ。
「ねぇ、スイちゃんはなんで冒険者になりたいの? 里で暮らしていけば楽に生きられるわよ」
「なんででしょうか……、特に理由はありません。私は単なる馬鹿なのかもしれません」
「冷静にそんなこと言うんじゃないわよ。というか、理由もなく外の世界に出ると危険よ? 私たちは人間であり、魔物。どちらからも恨まれてるんだから」
「はい……、周りからの視線も痛いですしね……。 ……それでも私は外に出たいです。いつまでも里にこもるのはつまらないので。あと……スミレさんだけに言いますが……、私はいろんな武器を見てみたいんです」
「……?」
「あっ……、忘れてくださいっ……」
この旅の一つの大きな目的とも言える武器収集を、私は誰にも言えずにいた。引かれるからだ。パーティーを組むときは、同じ武器好きがいいなぁ。
「なにボーっとしてんのよ! さぁっ、着くわよ! こっちこっち!」
うっそうとした森を抜けると、そこにはどこまでも続くかのような平原が広がっていた。所々に、魔物が堂々と闊歩しているのがわかる。
「よしっ! じゃあとりあえずそこら辺の魔物倒して!」
「えっ? 冒険者ギルドに行くのでは……」
「ふふふ……。世の中そう甘くないわよ」
スミレさんが艶っぽくつぶやいた。
「そっ、そうですね……」
2人でわちゃわちゃと騒いでいると、1体の魔物が近づいてきた。普通種のオークだ。体中から刺激臭が漂っており、多くの人々を食べてきたことがわかる。
「おっ、普通種かぁ。最初だし丁度いいね」
この世の魔物には種類の中にもクラスがあり、「弱種」「普通種」「ユニーク」の3つ。主に、人間を食べた数でクラスが変わり、「弱種」は1桁。「普通種」は2桁。「ユニーク」は3桁から上だ。
「では行きますっ!」
私は腰に携えた剣を抜き、オークが構えていたこん棒に向けて振り下ろした。
バキッ。
剣が折れた。相手のこん棒には、傷1つ付いていない。
「えっ、えっ!」
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
オークが雄たけびをあげ、とどめだと言わんばかりにこん棒を振り下ろした。