1-4.ハーメルン10年史考
数字を整理して資料作成した時点で割と満足というか、正直読みにくいかと思います。
1-1.にじファン避難所として
ハーメルンは小説家になろうにおける二次創作の禁止、その検索サイトであったにじファンの閉鎖に伴って開設されたサイトである。
そのため当初の投稿作品の多くは移転作品であり、主要な原作に関しても、にじファンでの流行を色濃く反映したものだった。
2013年以降ではあるが、作る人が時折発表している「原作指定検索割合」を整理したものが以下の表だ。
中には「なのは」「ネギま」「恋姫」「ゼロ魔」のように、00年代後半期の大きな流行がそのまま継続しているだろうものもある。
しかし「IS」「HSDD」「マジ恋」「Fate/(zero)」「遊戯王」「禁書」といった原作は、いずれも2011年以降にアニメを放送。にじファンという場所を中心とする、比較的若い流行だった。
これは次の2014年、「問題児」「劣等生」「SAO」「アカメ」に関してもアニメが放送されており、この時期の人気原作に関しては、「アニメに基づく流行形成」というのが、かなりはっきりとしていたと言えるだろう。
これらの二次創作に関しては、その傾向が極めてはっきりしている。
最大の特徴は「長編率が非常に高かった」点。
Arcadiaにしろ小説家になろうにしろ、更新を行えば浮上するシステムをとっており、その回数が多ければ多いほど当然人の目に触れる機会が増える。
これは短編の場合全く逆のことが言え、投稿以降ずっと沈みゆく一方であり、それは無制限加点のポイント制と絡む形で助長された。
(リニューアル~2010年前半期に関してであり、近年的傾向はまた別のもの)
システム上不可避な「絶対的な長編優位」であり、それに適していたのがクロスオーバーやオリ主を用いた原作沿い進行。こうした二次創作形態が、初期ハーメルンにもそのまま引き継がれたと言えよう。
長期的な推移としては以下に示す通り。
仮に「ハーメルンはいつまでにじファン避難所であったか?」と問われたならば、その1つの答えは「2014年頃」かと思う。
2015年まで来るとかつての人気原作、特に「ネギま」「ゼロ魔」あたりは急速に後退。「なのは」「恋姫」のように、続編が投下されたことで延命するパターンもあったものの、これ以降新たな流行、新たな人気原作の出現という傾向が強まっていく。
1-2.二次創作投稿場所としての一極化
上のグラフからは2015年以降、継続的な短編割合の増加が起こっていたことが読み取れる。果たしてこれは単に、ハーメルン内における作者の活動傾向が変わった、という類のものなのだろうか?
確実なことを言えるものではないのだが、この時期を通じた変化に対する仮説を示す。
以下はGoogle検索における、「SS」という語の使用量の変化だ。
二次小説を表す一般的な語の1つであるこの語だが、2010年代に急激な膨張を示し、00年代のそれとは大きな乖離を見せている。
数字の増加に関しては、「スマホ移行に伴いガラケー時期の検索量が顕在化した」という、Googleトレンドでよく見られるものなのだが、減少に関してはその限りではない。その詳しい内容を示そう。
端的に言うとこれらは「ニュー速VIP」や「SS速報VIP」、2chを中心とした掲示板群とそのまとめブログ、という形で展開した二次創作集団の動向を表すものである。
分類としては、
茶系統・黄系統→Arcadia・にじファン・ハーメルン軸で目立った流行を見せなかった原作
灰系統→にじファン時期に共通した流行を見せた原作
緑系統→若干の時間差を持ちつつハーメルンで流行を見せた原作
といったところになるか。
あくまで比較的というレベルではあるが、短編率が高くなっていることと、クロスやオリ主の使用度合いが低いという点。これは後のソシャゲ二次展開に関しても類似した傾向が見られる。
2010年代後半期に進行した大きな変化として、2chのような掲示板を基盤とした二次創作活動は急速に縮小。
この時期のハーメルンは、そこで活動していた人員を取り込むような形で投稿点数が増加し、それは特に短編で顕著であった、ということかと思う。
ただまぁ上で示した仮説はあくまで「そういう影響もあっただろう」、という範囲に留まるものであり、それが主軸とまで言うつもりはない。
2015年に人気となった「艦これ」「俺ガイル」「ダンまち」「オバロ」や、2017年以降の「ヒロアカ」など、「アニメに基づく流行形成」という傾向も依然強固であった。
例外を挙げるとすれば「Fate/」だろう。上の表の範囲、特に2016年~2018年という時期において、最も人気だった原作と言って間違いなく、FGO第1部の完結をピークとした数字の動きを示す。
言わば「ソシャゲに基づく流行形成」である。2010年代を通じて広く普及し、現代の社会インフラと化したスマホという存在。サブカルチャーにおいても、スマホに基盤を置くコンテンツの優越、という傾向が強まっていく。
1-3.近年的傾向
とりあえずいつもの。
期間を通じた人気原作としては、「ヒロアカ」「ダンまち」に「Fate/」あたり。特に前者は継続的なアニメ放送の存在も大きいだろう。
2019年にはアニメ放送を通じて「鬼滅」が大きな流行を形成し、次の2020年まで継続。ただアニメ2期時期における二次は低調であり、原作完結の時点ですでにやり切ったという感がある。
2021年にはゲームがリリースされた「ウマ娘」が急激に伸長。検索割合において15%超と、未曽有の数字を叩き出した。
ただまぁこうしたものより遥かにはっきりとした変化として、押さえておかなければならないものがある。「オリジナル」作品の増加だ。
全体の投稿点数として見た場合、10年代後半期に漸増……ではあるが、これだと正直よく分からない。
オリジナル作品に関する変化としては、投稿以上にポイントの獲得として見るべきものだろう。検索割合における需要としては依然目立たない数値でありながら、ランキングという場所での存在感は際立って高い。
過去の年間ランキングを用いて起点を探っていくと、目につくのが「TS」の存在。
ハーメルンでは2017年05月、「性転換」が必須タグとして制定された。検索という場面においては利便性の向上であり、人気作の登場と合わせて、ハーメルンがTSモノ投稿に適した場所、と認知される契機であったと思われる。
特に2017年の上位作品と、2018年のTS配信モノのヒット。TSという要素をテコとして、オリジナルというパイそのものを拡張したように感じる。
まとめになるが、ハーメルンの長期的な推移としてはこちら。
PVに関しては目測、かつ月単位で数値を入れている、極めて粗いものなので注意。正確なものが見たければ、作る人のツイート参照。
PVの変化が最も大きかったのが2020年の5月頃。緊急事態宣言による巣ごもり需要とGWが重なる形で、過去最大の数値を示したのだろう。
またその頃を起点として、「ハーメルン」という語の検索量増加が顕著であり、検索を通じてハーメルンを利用する人の増加が窺える。
近年お気に入り数や評価の伸び、特にランキング掲載時のそれはかなり劇的なものとなっており、アクティブユーザという観点では、過去最大という規模で推移しているのだろう。