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5.魔法闘技

 魔法闘技とは、その名の通り、魔法を利用した実戦形式の試合のことである。相手を殺害さえしなければなんでもありというかなり危険なものだが、実力を確かめるという意味合いで行われることが多々あった。ネロの身体を動かすクロは、エディに魔法闘技による勝負を申し込み、これをもって実力を証明しようというのである。


 「ネロ君!それはいくら何でも無茶だ!」


 だが、教師は慌てた様子でそれを制する。


 「<何故だ?>」

 「君は確かに魔法が使えるようになったのかもしれないが、エディ君には及ばない!彼は、Aクラスのトップなんだ!今まで何人もの生徒が魔法闘技を行ったが、完膚なきまでに敗北した!魔法闘技で彼に勝てる生徒はいない!そもそも、得意な系統が違う!彼は内出系!君は外出系だ!それじゃあ勝負にならない!」


 教師は、実力的にも系統的にも勝負をするのは適さないと判断し、クロ思い留まるよう言う。だが、クロは止まらなかった。


 「<・・・それなら問題はない。俺も内出系で勝負してやる。これならいいだろう。>」

 「!?」


 なんとクロは、エディの得意な系統で勝負するとまで言い放つ。


 「・・・お前、本気か?俺の魔法闘技を見たことがあるだろう。それなのに俺と内出系で勝負するだと?」

 「<ああ、お前の得意分野で勝負してやる。この条件で俺が負ければ、お前の言う通り俺を憲兵に突き出すなりなんなり好きにしろ。学校もやめてやる。>」

 「!何を勝手にそんなことを・・・!?」

 「<その代わり、お前が負ければ、今までの非礼を謝罪してもらおう。土下座してな。・・・どうだ?この条件でもまだ受ける気はないか?>」

 「・・・威勢がいいこと言いやがって。お前、自分が勝てるとでも思ってるのか?」

 「<もちろんだ。>」

 「・・・いいだろう。その挑戦を受けてやる。お前の化けの皮を剥がしてやるぜ!」


 クロの挑発と、自身に有利な条件で勝負するということで自分の勝利を確信したエディは、魔法闘技を受けることを承諾する。


 「ネロ君!いい加減に・・・!」

 「・・・その提案を許可する。」


 教師は尚も反対しようとするもその勝負を許可すると誰かが言う。声のした方を教師が向くと、そこには校長の姿があった。


 「校長!」

 「面白いではないか。そこまで言うなら、エディ君とネロ君の勝負をさせよう。」

 「・・・ですが、ネロ君が圧倒的に不利です。それに、負ければ・・・。」

 「・・・私は許可すると言った。この件はそれで終わりだ。」

 「・・・はい。」


 教師は納得いかない様子だったが、校長が決めたのなら逆らうことはできなかった。

 一方、エディの方は、あまりに自分に有利な条件に、嫌らしそうな笑みを浮かべて勝ちを確信したように言う。


 「・・・お前、少々魔法ができるようになったことで調子に乗りすぎたな。外出系のお前が、内出系の魔法を使って勝てると思ってるのか?」


 一般的に、外出系が得意な魔法使いは内出系が不得意で、逆もそうであるというのが常識である。それは、魔力回路が原因であった。外出系に長けた魔力回路では、内出系の魔法をうまく扱うことができないのだ。逆に、内出系に長けた魔力回路は、外出系をうまく扱えない。だから、エディは自分にとって絶対的に有利だと思い、勝負を受け、余裕の態度を見せたのだ。


 「<やってみれば分かることだ。>」

 「はん!お前のその自信満々な顔を潰してやる!」

 「・・・では、二人共。十分後に闘技場に来るように。」


 教師はそれだけ言うと、その場を後にする。その表情は、ネロが大怪我をしないよう祈っているかのようだった。











 「校長!何を考えているのですか!?ネロ君を死なせたいんですか!?」


 試験官をしていた教師とは別の教師が、校長に詰め寄る。


 「エディ君は、単なるAクラストップの生徒ではないんですよ!ランク4の身体強化魔法が使えるんです!五級魔法使い相当の実力があるんです!ネロ君がどうやって魔法を使えるようになったかは分かりませんが、使えるようになったばかりの彼には荷が重すぎます!このままでは、退学以前に命にかかわります!」


 魔法に等級があるように、魔法使いにも等級が定められている。ネロの生きている現代は、六級から一級の六等級存在し、学校を卒業した生徒が六級魔法使いと呼ばれる。これは、いわゆる仮免のようなもので、その後、五級魔法使いになるための試験を受けて合格することで、初めて正式に魔法使いが名乗れるようになる。ただし、試験はかなり難しく、一発で合格できる生徒はほとんどおらず、何回も試験に落ちて、ようやく合格することが普通である。酷い時は、五十を過ぎてようやく合格した人間もいたほどである。

 エディは、まだ学生でありながら、その五級魔法使いに匹敵するほどの実力者なのである。そんな相手と勝負することになるのだから、教師がネロを心配するのも当然の反応である。

 ちなみに、それ以上の等級の魔法使いは、四級は下級魔法使い、三級は中級魔法使い、二級は上級魔法使い、一級は最上級魔法使いと呼ばれ、世間の人間が魔法使いと呼んでいるのは、この四級以上の等級の魔法使いになる。特に、一級魔法使いは賢者と呼ばれ、現在、世界に一人しかいない超人的な魔法使いなのである。


 「・・・確かに、普通ならそうだろう。・・・だが、何だか彼は、勝てそうに感じたのだ。」

 「勝てそう、ですか?」

 「うむ。・・・何故かは分からないが・・・。」


 そんな教師の心配を余所に、校長はどこか楽観視した様子でネロが勝つだろうと教師に告げる。それを聞いた教師は、呆れと失望を露わにする。


 「・・・校長の判断を疑うつもりはありませんが・・・楽観視しすぎています。エディ君は、今すぐにでも五級の試験を受けてもいいほどなんです。そんな人間と、魔法が使えるようになったばかりの素人をぶつけるなんて、正気ではありません。・・・何かあれば、責任を取る覚悟はしておいてください。」

 「・・・いいだろう。もし、ネロ君が死亡、或いは重傷を負ったのなら、私は校長を辞そう。それでいいかな?」

 「構いません。それと、念のため、ランク5の回復魔法が使える魔法使いを手配させてください。」

 「許可する。早急に手配してくれ。」

 「・・・あなたには失望しました。かつての凄腕宮廷魔法使いとは思えません・・・。」

 「・・・。」


 校長に失望を隠さない教師は、魔法使いを手配するためにその場を後にするのだった。

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