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4.補習試験

若干修正します。

 「では、試験を始める。準備はいいかね?」


 試験官を務める教師が、ネロに準備ができているか尋ねる。


 「できています。」


 ネロは、真剣な面持ちで返す。


 「ははは、どうせ駄目なくせに、気合だけは入ってるな。」

 「それも今日で終わりだ。あーあ、寂しくなるぜ。」

 「終わったら、慰めてやろうぜ。ぎゃはははは!」


 そんなネロを遠くから、ネロを馬鹿にしていた生徒達が嘲笑うように見ていた。ネロが不合格になる姿を見て、笑ってやろうという魂胆なのである。その中には、あの時ネロを煽ってきた生徒もいたが、彼だけはどこか不安気な様子だった。

 他にも生徒が大勢見物に来ていたが、皆一様に、ネロが失敗して大恥をかくであろうと思い、同情の視線を向けていた。

 見に来ていたのは生徒だけではなかった。教師も数名、今回の試験を見に来ていた。その中には、校長の姿もあった。皆一応に、ネロが試験に落ちた後のことを考えていた。


 「試験は外出系がいしゅつけい内出系ないしゅつけいのどちらかを選択して行う。どれを選択するかね?」

 「外出系でお願いします。」

 「分かった。では、始めたまえ。」


 教師が合図をすると、ネロの目の前に木の的が出現する。


 「あれを破壊できれば合格だ。使う魔法に指定はない。好きな魔法を使っていい。」

 「はい。」


 ネロは、右手を的に向ける。


 「へん。どんなにやっても何も出やしないってのに。」


 ネロの姿を嘲笑う生徒達。だが、そんな彼の目に、信じられない光景が映る。なんと、ネロの手に火が出現したのだ。


 「!?何だと!?」

 「そんな馬鹿な!」


 驚愕する生徒達。今回も、いつものように不発で終わると思っていたからだ。

 だが、それは生徒達だけではない。教師も同様だった。


 「ど・・・どういうことだ・・・!?何故・・・魔力回路が閉じている彼が魔法を・・・!?」

 「・・・【ファイアショット】!」


 そんな周囲の反応を尻目に、ネロは魔法を放つ。ネロの放った火の魔法は、真っ直ぐ的に向かい、的を焼き尽くす。


 「・・・。」

 「・・・先生。これで合格ですね?」


 あり得ない状況に、教師は絶句する。そんな教師に、ネロは合格かどうかを尋ねる。


 「!?あ・・・ああ、合格だ・・・!」

 (・・・やった・・・!)


 無事に合格することができたネロは、腰に差すクロの柄に手を置く。


 (君のおかげだよ。君のおかげで退学しないで済んだよ。)

 <当然だ。あの程度の試験でいいなら、魔力回路操作だけで十分だ。寧ろ、三日は長すぎたな。>


 魔剣クロに感謝を伝えるネロ。クロは興味なさそうに返すのだった。


 「ちょっと待て!こんなことあり得るか!」


 だが、そんなネロに一人の生徒が抗議の声を上げながら近付いてきた。


 <・・・あいつは・・・。>


 ネロとクロは、その生徒のことをよく知っていた。いつもネロを虐めていた生徒達のリーダーだった。


 「魔法の使えないお前が、いきなり魔法が使えるなんておかしいだろ!インチキしたに決まっている!」


 虐めていた生徒のリーダーは、ネロが魔法を使えたことが納得できず、不正をしたと言い掛かりを付けてきたのだ。


 「・・・エディ君。これだけ大勢の人間がいる中で、しかも、私の前でそんなことができると思っているのかい?」

 「うっ!・・・それは・・・。」


 教師の言葉に、エディは言葉を詰まらせる。試験官を担当する教師は、不正行為などを見抜けるよう、他の教師に比べて実力が高いのである。そんな教師を前に不正など難しい。いや、生徒クラスの実力では不可能と言える。そう言われれば、反論できないのも当然である。


 「・・・で、ですが、こいつが今まで魔法が使えなかったのは事実でしょう。何かしたと疑うべきでは?」

 「・・・確かに、君の言い分も一理ある。ネロ君、どうして急に魔法が使えるようになったのかな?」


 しかし、納得できなかったエディは、ネロが今まで魔法が使えなかったことを理由になおも食い下がる。そう言われると、教師の方も無視はできず、ネロに何故魔法が使えるのか聞いてくる。


 (・・・クロ。魔力回路の操作をことを先生に・・・。)

 <・・・いや、俺が教えたことは話すな。俺のことも、あくまでとある人物から教えてもらったと言って誤魔化せ。名前を聞かれても、言えない約束だと言え。>

 (・・・分かった。)

 「・・・ある人から教えてもらったんです。それで、使えるようになりました。」

 「ある人?・・・誰なのかね?」

 「・・・それは言えません。・・・そういう約束なんです。」


 ネロは、クロのことや、教えられたことは一切伏せて答えた。


 「そんな不審な奴から教えられて使えるようになった魔法なんて無効だ!邪法を使ったんだ!なら無効どころの騒ぎじゃないな!憲兵を呼んで捕らえるべきだ!」


 エディはネロの不合格にしたいがため、得体の知れない人物から教わったと言うばかりか、邪法を使っていると言い掛かりを付け、試験の無効どころかネロを逮捕すべきと主張する。この言葉に、ネロは怒りを覚えた。


 (・・・邪法なんかじゃない。クロは本当の魔法を教えてくれたんだ。・・・何も知らないくせに・・・!)

 <・・・ネロ。俺に身体を貸せ。ここは、俺が解決する。>

 (・・・身体を・・・貸す?)

 <気絶したお前を部屋に連れて行っただろう。お前の身体の主導権を、一時的に俺がもらって動かす。あれを使う。>

 (・・・君に任せれば、何とかなるのかい?)

 <ああ、何とかしてやる。俺を信じろ。>

 (・・・分かった。)


 ネロは、クロを信じ、自身の身体をクロに委ねるよう思う。すると、ネロは、まるで自分を別の所から見ているような感覚を覚えた。同時に、自身の身体が自らの意思で動かないという奇妙な感覚も覚えた。


 (・・・あれ?・・・僕は・・・いったい・・・?)


 その感覚に戸惑うネロ。だが、次の瞬間、ネロは信じられない光景を目にする。


 「<・・・うるさい奴だな。俺が合格するのがそんなに不満なのか?俺は、正々堂々試験を受けて合格した。それをイカサマだの、邪法に手を出しただの、言い掛かりも甚だしいぞ、ガキが。>」

 「!?」


 突然のネロの言葉に、エディはおろか、教師も驚く。二人の知るネロは、温厚で、暴言など吐いたことがなかった。だからこそ、こんな言葉を吐くなど考えられなかった。

 そして、同時にネロも、この光景が信じられなかった。自分は何も言っていないのに、身体が勝手に喋り出しているのだ。


 (・・・これは・・・!・・・クロが・・・話しているのかな?)


 身体の主導権を渡すという意味を、ネロは理解した。今喋っているのは、自分ではなく、クロなのだと。


 「<どうしても認めないというのなら、お前自身で判断すればいい。>」

 「俺自身で判断だと?」

 「<お前に魔法闘技の勝負を申し込む。>」

 「魔法闘技!?」

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