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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
28/31

27.主との戦い

 <・・・来たぞ!>


 クロの言葉が終わるや否や、ネロの目の前に一体のアンデッドが現れた。そのアンデッドは、顔が骸骨ではあったが、今まで見てきたスケルトンとは違い、豪華なローブを着込み、手には錫杖を握り、禍々しいオーラを放っていた。


 「・・・こいつは・・・リッチ!?確か、烈震級の魔物のはず!」


 リッチ。不死王の異名を持つ上位のアンデッドである。通常、アンデッドは知能が低く、攻撃本能の赴くままに目の前の敵を襲う程度のことしかできない。魔法も使えなくはないが、精々低ランクの身体強化が関の山である。だが、上位のアンデッドは、高い知能を持ち、高ランクの魔法を行使することもできる。何より、自分の意志で行動できる点が、下位のアンデッドとの最大の違いである。明確な悪意を持って、人間に仇をなすのだ。

 この特にこのリッチは、アンデッドの王の異名を持ち、自分より下位のアンデッドを召喚したり操ったりすることができるアンデッドで、たった一体で小国を滅亡させた記録が残っているほどである。他にも、邪な心を持った人間を利用して国を乗っ取り、長期に亘って支配したこともあった。そのため、リッチは恐怖の象徴と言われているのだ。


 <いや、こいつはまだ完全なリッチではない。魔力がかなり弱い。これで烈震級はないだろう。差し詰め、レッサーリッチといったところだろうな。そうなると、精々、中震級、よくて強震級だな。>

 「中震級・・・!じゃあ、こいつはアンペア荒野の主かもしれない!どうしてそんな魔物がここに!?」


 オーム大森林とは違い、ここはどのランクの魔物と出くわすか分からないと説明されていたが、いきなりこんな強力な魔物-しかも、主が-が出てくるとは思わなかったネロは困惑する。だが、その答えは意外なところから出てきた。


 『・・・不快ナ・・・力ダ・・・!・・・貴様ヲ・・・殺ス・・・!』

 「・・・まさか、シロの聖力に反応して・・・!」

 <そのようですね。高位のアンデッドは、聖力を嫌って排除しようとする場合があります。・・・聖法を使ったのは少々軽率でしたね。>

 「・・・。」


 予想だにしていない魔物の登場に、ネロは不安を覚えていた。今までネロは、弱震級以下の魔物を相当数倒してきた。だが、目の前にいる魔物は、今まで倒してきた魔物とは比べ物にならないほどの力を感じた。クロから感知を教わらなかったとしても、おそらく同じように感じたであろう。そんな魔物と戦って勝てると思えるほど、ネロは楽観視はしていなかった。

 だが、同時にネロは、この魔物と戦ってみたいという、相反する思いも抱いていた。


 (脅威ランクが一つ上がるほど、魔物の強さに大きな差が出る。対峙するだけでも、こいつが今まで戦ってきた魔物より遥かに強いことが分かる。そんな魔物と戦うのなんて自殺行為だ。普通なら、逃げるのが正解だ。そして、町にいる冒険者達と連携して討伐する。これがベストだ。・・・でも、何だろう。こいつにどこまで自分の力が通じるか試したい自分もいる。・・・変だな。クロに会う前は、こんなこと考えもしなかっただろうに。)


 ネロは、無意識のうちに手に持つシロを強く握りしめていた。


 <!ネロ?あなた、まさか?>

 「・・・ごめん、二人とも。・・・僕、こいつと戦ってみたい。・・・今の自分が、中震級とどこまで戦えるか、試してみたいんだ。」

 <・・・それは・・・!>

 <・・・いいだろう。やってみろ。>

 <!?クロ!?>


 ネロが戦うことに否定的なシロ。会ったばかりではあるが、シロはネロの強さはおおよそ把握していた。実力的には勝てなくはないだろう。だが、ネロには自分達と比べて経験と知識が圧倒的に足りていない。そうなれば、勝率は下がる。最悪、敗北もあり得る。寧ろ、シロはそっちの可能性の方が高いと考えていたため、戦うことを止めようと思っていたのだ。だが、クロは反対に、ネロが戦うことを肯定する。


 <強い敵と戦って、自分の限界を知るのも悪くはない。その代わり、危なくなれば俺と代われ。>

 「ありがとう。・・・それじゃあいくよ!」


 ネロは、シロを鞘に戻すと、代わりにクロを抜いてレッサーリッチに向ける。


 「・・・いくぞ!」


 ネロは、身体強化を発動し、レッサーリッチに切りかかる。だが、レッサーリッチはそれを易々と躱すと、ネロに手を向けて魔法を放つ。


 『・・・【ダークボール】!』


 レッサーリッチが放った魔法は、闇属性の中級魔法【ダークボール】である。闇の魔力を球体状にして放つ魔法で、単純だが威力の高い魔法である。この時代の魔法使いなら使用できないか、できたとしても、大量の魔力を消費してサクランボくらいの大きさの球を一つしか出すことができない。だが、レッサーリッチは違った。レッサーリッチが出した球は、スイカくらいの大きさの球だったのだ。


 「!なんて大きさだ!」

 『・・・死ネ!』


 【ダークボール】をネロに向けて放つレッサーリッチ。球のスピードは、巨大な割に速く、普通の冒険者なら直撃していただろう。だが、ネロはそれを回避する。だが、その顔には冷や汗が流れていた。


 (・・・身体強化していなければ当たっていたかもしれない・・・!もっと距離を取らないと・・・!)


 慌てて距離を取るネロ。だが、レッサーリッチはそれを逃がさない。さらに【ダークボール】を出す。しかも、大量に。


 「!なんて数だ!」

 <当たってはいけません!一発でも当たれば致命傷は避けられません!>

 『・・・イケ・・・!』


 何十もの【ダークボール】がネロに高速で向かっていく。ネロは身体強化を駆使して動体視力と反射神経、スピードを上げ、躱していく。何とか一発もくらわなかったものの、ネロはレッサーリッチの強さに改めて脅威を感じた。


 (・・・なんて強さだ!これが、中震級!?下手をしたら、強震級かもしれない!・・・戦い方を変えよう!)


 ネロは、【ファイアバレット】を発動する。それも、一発ではない、十何発も同時に展開した。近接戦闘から魔法主体の遠距離戦に切り替えたのだ。


 「いけ!」


 ネロの大量の【ファイアバレット】がレッサーリッチに向かっていく。だが、レッサーリッチは錫杖で魔法を払い、かき消してしまう。


 「!こんなアッサリ!」

 『・・・コノ程度カ・・・!・・・ツマラン!』


 落胆したレッサーリッチは、再び魔法を発動しようとする。だが、今度の魔法は、【ダークボール】と何か違っていた。レッサーリッチの周囲に、膨大な魔力が放出されていく。その魔力の放出量は、【ダークボール】の比ではないほどだった。


 「・・・なんだ?あいつは何をする気なんだ?」

 <この魔力・・・上級以上の魔法が来ます!>

 「上級!?」

 『・・・【ブレイズブラスト】!』

 <!いけません!防御を!>

 「!」


 シロの指示を受け、ネロは防御魔法を展開する。クロから簡単な防御魔法を幾つか教わっていたネロは、その中で一番魔法防御力の高い魔法【マジックプロテクション】を使用した。ランクは下級に分類される魔法で、下級以下の魔法なら、これだけで防ぎ切れるほど強力な防御魔法である。だが、シロはこの魔法を見て悲鳴に近い声を上げる。


 <いけません!あれは上級魔法です!これでは防ぎ切れません!>

 「だったら・・・!」


 ネロは、【マジックプロテクション】を三重に展開する。ネロの防御魔法が展開されるのと、レッサーリッチの魔法が放たれるのは同時だった。凄まじい炎がネロを襲う。

 【ブレイスブラスト】。火属性の上級魔法で、威力では最強クラスの魔法である。そんな強力な魔法の前に、一瞬で【マジックプロテクション】の一枚目と二枚目が破壊され、三枚目もヒビが入っていく。


 「三枚でもまずいか。なら、もう何枚か・・・!」

 <!いけません!>

 「え?」

 『・・・【ブリザードストーム】!』


 さらに【マジックプロテクション】を展開して【ブレイズブラスト】を止めようとするネロ。だが、レッサーリッチは既に別の魔法を発動していた。氷属性の上級魔法【ブリザードストーム】。名前通り超低温の吹雪で敵を一瞬で凍結させる恐ろしい魔法である。凄まじい吹雪がネロに迫る。


 「!上級魔法の同時展開!?そんなことができるのか!?でも、どうして相性の悪い火と氷の魔法を!?」

 <敵の狙いは複合魔法です!しかも、これはかなり危険です!>

 「え?相性が良くないと複合はできないんじゃ・・・?」

 <高熱の魔法で熱せられた空間を急激に冷やすことで大規模な魔法爆発が起きます!あのレッサーリッチは、それが狙いです!>

 「え?魔法爆発?」


 その時、ネロの目の前で巨大な爆発が起こった。爆発は、ネロやその周囲を呑み込んでいくのだった。

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