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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
25/31

24.アンペア荒野

 「・・・聞いていた通り、何もない場所だね。」

 <・・・だが、オーム大森林とは比較にならないほどの魔力濃度だ。・・・それにこれは・・・。>


 翌日、店でアンデッド対策用のアイテムを多く買い込んだネロは、予定通りアンペア荒野を訪れていた。

 アンペア荒野。かつて多くの人間の血が流れた戦場跡と言い伝えられる場所である。そのため、現在もアンデッドが発生し、定期的な駆除が必要とされる危険地帯である。

 アンデッドとは、死体や魂が魔力によって変異して発生する特殊な魔物である。通常の魔物は、自然界に存在する魔力によって生じる。周囲の魔力濃度が濃ければ濃いほど、強力な魔物が発生しやすく、数も多くなる。雌雄の交配によって増えていくこともあるが、基本、魔物は高濃度な魔力を元にして発生する。

 だが、アンデッドは死体さえあれば、魔力濃度の有無に関わらず生じてしまう。そのため、死体の処理は、しっかりしておかなければならないのだ。魔物の死骸の解体や焼却は、素材回収や不要なものの処分もあるが、一番の目的は、アンデッド対策なのである。そして、その死体の処理は、人間も当てはまる。もっとも、弔う行為さえしていれば、それで充分であるが。一応、魔物もそれで大丈夫なのだが、魔物の場合は、死骸が金になるため、解体までするのである。


 <・・・禍々しい怨念を感じる。これは、弔われていない死者のものだな。・・・しかし、これは異常だ。数えきれないほどの量だぞ。俺の時代でも、弔われずにアンデッド化した事例はあるこそはあるが、ここまで酷くはなかった。・・・ここで、何が起きた?>

 「・・・ここは、大昔戦場だったらしいよ。だからじゃないの?」

 <アンデッドがもたらす被害を考えれば、最低限の弔いはするはずだ。たとえ、戦時中であったとしてもだ。・・・それができないほどの何かだと?・・・何があったんだ?>

 「・・・そこまでは分からないよ。僕が聞いた情報も、あくまでアンデッドがいつも発生するからそうじゃないかと考えられているだけらしいから。・・・本当のところは、誰も分からないよ。」

 <・・・せめて、聖法せいほうが使える人間がいれば、幾分かマシにはなるのだろうがな。>

 「せい・・・ほう?・・・何それ?」


 聞き慣れないクロの言葉に、ネロは反応する。


 <魔法とは違う特殊な術だ。・・・もっとも、俺の時代もレアで、中々お目にかかれないものだったが。・・・まあ、そんなことはいい。とりあえず、ここに師匠の弟子がいるか調べるとするぞ。>

 「・・・分かった。」


 ネロは、気にはなったものの、今はクロの仲間を探すのが大事だと切り替え、荒野を歩いていくのだった。

 数分後、ネロの目の前に、人型の骸骨が現れた。骸骨は、手に錆びてボロボロの剣を持ち、如何にも兵士といった格好をしていた。


 <スケルトンだな。一番ランクの低いアンデッドだ。確か、この時代では軽震級に扱われていたな。>

 「武器を持っているみたいだけど、そこまで強そうには見えないね。」

 <だが、油断はするな。アンデッドは、しぶとい。普通なら死ぬようなダメージを受けても倒せない。>

 「知ってるよ。アンデッドは、完全に身体をバラバラにするか、火の魔法で焼き払うか、光魔法で浄化するのが一般的な倒し方だって。」

 <概ね正解だ。だが、今のお前は、俺という魔剣を持っている。なら、簡単に倒せるはずだ。さあ、倒してみろ。>


 ネロは、クロを手にスケルトンと対峙する。先に動いたのは、スケルトンだった。スケルトンは、闇雲に剣を振り回してネロに向かってくる。ネロは、クロでスケルトンの剣を弾くと、スケルトンの首を切り捨てる。首を切り落とされたスケルトンは、その場で身体中の骨がバラバラになって崩れ落ちてしまった。


 「・・・倒したのかな?」

 <ああ。魔力の籠った一撃は、アンデッドを容易に屍に戻す。普通の武器なら、さらに四肢を切り落とさなければ倒せなかった。>

 「・・・なら、君を持っている僕は、差し詰めアンデッドキラーだね。」

 <・・・なら、あれを見てもそんな余裕が叩けるか?>

 「え?・・・!」


 なんと、地面の中から、大量のスケルトンが出てきた。数は、ニ十体を優に超えていた。


 「・・・本当に、どれだけ湧いてくるんだか!」


 ネロは、まだ敵が体勢を整える前に仕留めるべく切りかかる。スケルトンの首を刎ね、胴体を袈裟切りにし、頭部から一刀両断する。あれだけいたスケルトン達だったが、五分も経たないうちに全滅していた。


 「・・・数が多いだけで、全然大したことなかったね。クロを使っているのもあるんだろうけど、これじゃあゴブリンやウルフと大差ないよ。」

 <あの程度のスケルトン、魔力の籠った武器さえあれば、駆け出しでも倒せるレベルだ。だというのに、この時代はそんな武器が稀少で、そのせいで軽震級扱いされている。・・・腹立たしい。本当に危険なアンデッドは、あんなものとは比べ物にならないほど強力で、知能も有しているというのに。>

 「でも、おかげで誰にも見られずに、仲間探しができるんじゃないかな?アンペア荒野は、アンデッドの数が規定より多く観測されないと冒険者が入らないらしいからね。僕みたいに目的があるなら、別だけど。」

 <・・・低ランクのアンデッドは、金にならないからな。この程度のスケルトン、魔石もなければ、骨も採取できない。倒されると同時に崩壊してしまうからな。>


 クロの言う通り、倒されたスケルトンの骨は、崩れて塵のようになっていた。そして、風に吹かれて飛んでいってしまった。跡には何も残っていなかった。


 <処理は楽だが、実入りがまるでない。これが、アンデッド退治が不人気だった理由だ。いつの時代も、それは変わらないようだな。>

 「でも、今はその不人気に感謝しないとね。」

 <そうだな。・・・では、先に急ぐとしよう。ここは、オーム大森林と違って、ランクごとに出てくるわけではないからな。>

 「分かった。もし、ここにいないと分かったら、すぐ撤退しよう。」


 ネロは、クロの仲間を探すべく、荒野を進んでいくのだった。

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