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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
24/31

23.次の狩り場は

 「依頼、終わりました。」

 「はい。今日もご苦労様です。では、確認を行いますね。」


 一週間後、ネロはいつものように、討伐の成功をメアリーに報告していた。メアリーも慣れた様子で、それを受理する。

 既にネロは、軽震級の魔物の討伐依頼も多数受けており、その全てを達成していた。おまけに弱震級の魔物のエリアにも出入りし、依頼とは別に討伐し、こうやって買い取りをしてもらっていた。これほどの成果を見続けてきたおかげか、メアリーも今では、ネロの実力を認めていた。


 「オーク十体、コボルド十体、ホブゴブリン十体、グレーベアー十体。間違いありません。どうぞ、こちらが報酬です。」

 「ありがとうございます。あと、依頼とは別の魔物の買い取りもお願いしたいんですが。」

 「どうぞ。今日はどんな魔物ですか?」

 「はい。オーガ二体とトロール二体、ストロングベアー三体です。」

 「いつもながら、凄い成果ですね。弱震級の魔物をソロでこんなに倒すなんて。少々待ってください。今、精算しますね。」


 精算のため、メアリーは席を外す。すると、ネロの許に、冒険者の一団が寄ってきた。あの時、ネロに叩きのめされた冒険者パーティの面々だった。


 「おい、ネロ。今日は、うまい魔物の肉あるか?」

 「あ、ハワードさん。ありますよ。今日倒したオークとベアーの肉が。どうぞ。」


 ネロは、彼らに自身の狩った魔物の肉を渡す。冒険者達は、嬉しそうにそれを受け取る。 

 あの時は、ネロの実力を知らずに横柄な態度を取っていた冒険者達だったが、模擬戦以降は、すっかりネロの実力を認め、ちょっかいをかけることはなくなった。おかげで依頼もスムーズに報告できるようになっていた。

 同時に、ネロはクロから教えられた、魔物の肉を美味しく食べる方法を冒険者に教え、一部を実演してみせた。それによって胃袋を掴まれた冒険者達は、一転してネロに色々よくしてくれるようになっていた。危険な仕事をしている冒険者にとって、美味しいものを食べることは大事なことであった。それを教えてくれたネロの評価が上がるのも、当然のことと言えた。


 「いつも悪いな。俺達が獲るより、お前が獲った方が美味いって評判なんだ。」

 「それはよかったです。」

 「またいい狩り場を教えるぜ。お前なら、俺達の倍は狩れるだろう。」

 「ハワードさん。いつまでもネロさんに獲ってもらうんじゃなくて、自分達で獲ってきてください。このままじゃ、いつまで経っても蛍石フローライト止まりですよ。最悪、ネロさんに先を越されますよ。」


 精算を終え、受付に戻ったメアリーは、冒険者達に苦言を呈する。


 「分かってるって。」

 「どうぞ、ネロさん。精算が終わりました。こちらが代金となります。」

 「ありがとうございます。」

 「ああ、ネロさん。ギルドマスターからの伝言です。方解石カルサイトランクに上がる目途が付きそうだと。」


 ネロに買い取り代金を渡したメアリーは、同時にネロに、グラントからの伝言を伝える。それは、ネロの昇格の話だった。今まで保留されていた方解石カルサイトへの昇格。それが、できるようになりそうだということである。


 「本当ですか?」

 「はい。これだけの成果を挙げたとなれば、ランクアップして当然です。寧ろ、遅すぎるくらいです。」

 「そうですか。・・・この間、冒険者になったばかりなのに、もう上がるなんて。何だか、実感が湧かないですね。」

 「一日で石膏ジプサムになったネロさんが、今更といった感じですね。二、三日したら、正式に方解石カルサイトになっていると思います。その時には、お伝えしますね。」

 「分かりました。では、僕はこれで。」


 ネロは、メアリーに一礼すると、冒険者ギルドを後にするのだった。











 「明日はどうしようかな?別の魔物の棲息地にでも行こうかな?」


 宿に戻ったネロは、明日の予定を考えていた。

 ここ一週間、実戦の経験を積んだネロは、オーム大森林以外の棲息地にチャレンジしてみようと考えるようになっていた。既にネロは、弱震級の魔物の棲息地でも狩ができるようになっていた。事実、何度か弱震級の魔物の討伐依頼を受け、成功していた。それもあって、自分の力に自信を付けていたのだ。そして、クロも、ネロの実力が上がっていることを認めていた。だから、難易度の高い他の棲息地に行くことを提案したのだ。


 <・・・そうだな。そろそろ別の棲息地で、別の種類の魔物と戦っておくのも悪くないな。>

 「どこがいいかな?」

 <・・・アンデッドにしてみるか。水生系の魔物でもいいが、生物以外の魔物と戦っておいた方がいいだろう。>

 「じゃあ、アンペア荒野だね。遮蔽物がない場所らしいから、多数の敵と戦う用意をしておかないとね。」

 <・・・。>

 「?どうしたの、クロ?」

 <・・・ネロ。今度の棲息地、奥まで行くぞ。それを想定して用意しておけ。>

 「え?いいけど・・・どうして?・・・まさか、主を倒しに行くつもり!?」


 ネロは、クロが主を倒しに行くために、奥に行くことを提案しようとしていると思った。

 主とは、魔物の棲息地の最深部にいる強力な魔物である。最低でも中震級の魔物で、他の魔物達とは比較にならない強さを誇り、種類によっては一ランク脅威度が上がる場合もあるのだ。腕の立つ冒険者パーティでも、下手に刺激すれば全滅もあり得るほどなのだ。クロの性格を考えて、ネロは主狙いだと思ったのだ。だが、クロの考えは違った。


 <主を狩るんじゃない。・・・俺の用事があるからだ。>

 「・・・用事?」

 <・・・実はな、この町の周囲に見知って気配を感じていた。>

 「見知った気配?」

 <ああ。俺のかつての仲間の気配だ。>

 「仲間!?シキさんの弟子ってこと!?」


 クロからの突然の発言に、ネロは驚く。


 <ああ。俺以外の弟子も、俺同様に魔剣に魂を封印されてこの世に残った。・・・その気配を感じた。>

 「・・・まさか、この気配の出所が、アンペア荒野?」

 <そこまでは分からん。オーム大森林に行った際、反応がなかったからそこではないことは分かったが、アンペア荒野なのかボルト湿地帯なのかまでは分からん。行ってみて確かめる必要がある。>

 「じゃあ、クロは自分の仲間を探すために、奥に行きたいんだね。」

 <ああ。当然、お前の意志は尊重する。無理なら無理と言ってくれればいい。そうならば、もう少し実力を付けてからにする。>


 クロは、あくまでネロに決定権があると言い、選択をネロに委ねる。だが、既にネロの答えは出ていた。


 「・・・いいよ。明日はクロの仲間探しをしよう。いざとなったら、僕の身体を使ってくれてもいいよ。」

 <・・・いいのか?>

 「僕も、クロの仲間に会ってみたいからね。」

 <・・・悪いな。>

 「気にしないでよ。君にはいっぱい助けられているんだから、これくらいはしないと。」

 <・・・なら、明日に備えて早く寝ろ。>

 「分かった。お休み。」

 <・・・。>


 ネロは、すぐに寝息を立てていた。クロは、この地に眠る自身の仲間が誰か気になっていた。

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