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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
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22.グラントの提案

 「単刀直入に聞こう。お前、それだけの力をどうやって身に付けた?」


 ギルドマスターの部屋に通されたクロは、グラントから強さの秘密を尋ねられた。


 「<特別なことはしていない。俺は、基本的なことしか修行していない。>」

 「そんなことはないだろう。あれだけの強さをその若さで手に入れるなど、不可能に近い。俺が石英クオーツになれたのも、二十年以上かかってようやくなんだぞ。俺以外の奴だってそうだ。」

 「<・・・グラントと言ったな。お前の考えている普通と、俺の考えている普通は違う。お前にとっては想像だにしないようなことも、俺にとっては普通だ。俺は、普通に修行して、普通に強くなった。そうとしか言えん。>」

 「・・・なるほどな。つまりは、俺は知らないが、お前だけ知っている修行を行っていたということか。それで、どんな方法なんだ?」

 「<・・・それについては説明はできない。師匠から禁じられている。>」

 「・・・そうか。」


 グラントは、少しだけ考え込んだ素振りを見せるも、それ以上追及はしなかった。


 「<用が済んだのなら、これで帰らせてもらおう。今日は、余計なこともしたんで疲れた。>」

 「待て。さっきのは個人的な理由で聞いただけだ。本題はこっちだ。お前のランクについてだ。」

 「<ランク?>」

 「そんな実力で、一番下の滑石タルクではおかしいだろう。俺の権限で、本日付けで石膏ジプサムに昇格させよう。」

 「<いいのか?確か、決まりだと依頼を規定数こなさなければ昇格はできないはずだが?>」

 「例外もある。ギルドマスターの推薦だ。特に、石膏ジプサム程度なら、ギルドマスターの判断で即時昇格が可能だ。」

 「<ほう。そうなのか。それは知らなかった。てっきり、面倒な手続きがいるとばかり思っていたぞ。>」

 「本当なら、方解石カルサイトにしてもいいくらいだが、そこまでいくと、俺の一存だけでは無理だ。何かしら成果が必要になる。お前、今回の依頼が初めてなんだろう?滑石タルクの依頼を六つ受けた程度では、成果としては物足りないのだ。」

 「<なるほど。つまり、もっと依頼数をこなすか、上のランクとして認められることをやってほしいということか?>」

 「話が分かって助かる。お前ほどの逸材を、いつまでも下のランクに甘んじさせたくはないからな。」

 「<・・・善意のようにも聞こえるが、お前にも何かしらメリットがあるんだろう?>」

 「・・・気付いていたか。」


 グラントは、クロの洞察力に感嘆する。


 「まあ、確かに俺にも利があるのは事実だ。新たな一流以上の冒険者の誕生という功績がほしい。」

 「<新たな?>」

 「現在、冒険者の最高位と第二位は空席のため、事実上第三位の黄玉トパーズランクの冒険者であるインディが最高だ。そして、その下に、俺達五人がいる。それが、約十年以上も続いているのが、現在の冒険者の状況だ。正直言って、あまりよくない。この六人の内、一人でも消えれば、冒険者ギルドは成り立たなくなる恐れがある。インディが消えれば、確実にギルドは国に取り込まれてしまうだろう。それくらい危ういのだ。だが、もしこの状況をひっくり返せる冒険者が現れたとしたら、その冒険者を選んだ人間は、ギルド内での発言力が上がる。ギルドの救世主を見出したとしてな。」

 「<つまり、お前の目的は、俺を一流以上の冒険者にして、自身の出世の足掛かりにすることか。>」

 「そんなところだ。だが、単に俺の出世だけではない。この国の冒険者のためでもある。・・・情けない話だが、ファス王国の冒険者は、全体的にレベルが低い。隣国の冒険者達と比較しても、数段劣るのだ。」

 「<・・・なるほど。あいつらが異様に弱かったのは、この国の冒険者のレベルが低かったから。>」

 「辛辣だな。・・・だが、否定はできん。お前の実力を把握できなかったんだからな。他国の冒険者なら、見抜けていた者もいただろう。」

 「<つまり、俺の存在を宣伝兼起爆剤にして、この国の冒険者のレベルを上げようということか。>」

 「そうだ。まだ若い冒険者が、短期間でランクを上げるということは、いい宣伝になる。それに、他の冒険者にもいい刺激になるだろう。この国は、一般の人間が他国に行くのが難しいため、競い合う相手が国内に限られてしまうせいで、どうしてもレベルがな・・・。」

 「<・・・いいだろう。だが、俺にも相応のメリットがなければ協力する気はない。俺は、搾取されるのが嫌いだ。>」

 「分かっている。俺のできる範囲だが、便宜を図る。それでどうだ?」

 「<・・・まあいいだろう。なら、まずは一つ目だ。明日から、俺が受けられる討伐依頼を全部俺に回してもらおうか。>」

 「そんなことでいいのか?分かった。メアリー、聞いての通りだ。明日から討伐依頼をネロに最優先で渡せ。」

 「は、はい!」


 同席していたメアリーは、緊張した様子で返事をする。


 「<・・・では、そろそろ話も終わりだろう。報酬を受け取って帰らせてもらおう。>」

 「分かった。メアリー。」

 「ど・・・どうぞ。」


 メアリーは、オドオドした様子で報酬をクロに渡す。


 「<・・・確かに。では、明日からよろしく頼むぞ。>」


 クロは、それだけ告げると部屋を出て行くのだった。

 クロが出て行ったのを確認したメアリーは、緊張の糸が切れたのか、椅子に座り込んでしまう。


 「は~・・・。緊張した。」

 「何を休んでいる?お前は、あいつのための依頼書を急いで作成しろ。」

 「そんな・・・!」

 「早くしろ!もしかしたら、あいつは史上初の、金剛石ダイヤモンドランクの冒険者になりえる逸材だぞ!」

 「金剛石ダイヤモンドって・・・それって、賢者クラスですよね?いくら何でもそこまでは・・・。」

 「・・・俺の勘がそう告げている。・・・あいつは、必ずとんでもないことを仕出かすとな。」

 「・・・まあ、ギルドマスターがそこまで言うのなら。・・・ですが、私の給料もあげてくださいよ!」

 「ああ。あいつがドデカいことを仕出かせばな。」

 「・・・言質取りましたよ。・・・はあ。何で、こんなことに・・・。」


 不満げに退室するメアリー。一人残されたグラントは、登録の際にネロが記入していた書類に目を通していた。


 (・・・ネロ。・・・確か、最近魔法学校をとんでもない実力で卒業した生徒がいたな。そいつの名前も、確か、ネロだったな。・・・少し、調べてみるか。久しぶりに、あいつに連絡を取ってみるのも悪くないな。)


 グラントは、かつての友と連絡を取るのが楽しみな様子で、自身も部屋を後にするのだった。

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