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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
21/31

20.トラブル発生

 「・・・ふう。終わった。」


 無事に魔物を倒したネロは、死骸を【アイテムボックス】に収納すると、その場に座り込んだ。


 <うまくいったな。>

 「そうだね。・・・ねえ、クロ。君、もしかして、こうなること分かっていて、僕に何も言わなかったんじゃないのかい?」


 ネロは、クロがこうなるように仕向けたのではないかと疑惑を向ける。


 <まあな、だが、これも経験の一つだ。現に、お前は経験を積むことができただろう。>

 「乱暴すぎだよ。どうせやるなら、前もって言ってくれればいいじゃないか。」

 <それじゃあ修行にならない。それに、本当に駄目なら、俺が代わって対処したぞ。お前の実力的に、問題ないと判断したからやったんだ。・・・俺の場合とは違うぞ。>

 「俺の場合?」

 <俺は、お前より弱い状態で、もっと酷い状況で戦わされた。敵の数も種類も多かったが、俺自身が最悪だった。魔力は僅かだし、身体もボロボロだった。おまけに、仲間なんていやしない。・・・正直、生きて帰れたのが奇跡だったな。>


 苦言を呈するネロに、クロは自分がさらに劣悪な状況で戦わされたことを引き合いに出す。その状況に比べれば、ネロの置かれていた状況は、安全だったとクロは説明する。それを聞いたネロは、思わず引いてしまう。


 「・・・シキさんって、もしかしてスパルタだったの?」

 <違う。・・・あの野郎の罠だ。>

 「あの野郎?」

 <何でもない。気にするな。・・・それより、お前の中で、今回の戦いはどんな感じだった?満足いく戦いだったか?>

 「・・・全然駄目だと思うよ。君の判断に頼っていたし、戦い方も無駄が多かった気がする。特に、ビッグアントなんていい例だよ。君なら多分、一発で終わらせられたんじゃないかな?」


 話を変えたクロを訝しく思うも、ネロは、今回の戦いの感想を述べる。稚拙さが目立つ戦いというのが、ネロの感想だった。


 <なかなか厳しい採点だな。だが、よく理解していていいことだ。自身の実力を客観的に見ることができることは、魔法使いにとって、いや、成長するために必要な要素だ。それに、自己評価が無駄に高いことは、いいこともあるが悪いことの方が多い。そういう奴は大概、大したことがないからな。あの馬鹿エディがいい例だ。それに、俺はそんな人間を人間だった頃、腐るほど見てきたからな。>

 「・・・ねえ。君なら、どういう風に戦ったんだい?」

 <そうだな・・・。ビッグアント戦だが、俺なら無理に範囲を広げるより、同時展開か、魔法を複合させて攻撃するな。意外にだと思うが、その方が効率がいい。>

 「同時展開?複合?」

 <ああ、この時代ではない魔法の使用方法だったな。同時展開とは、文字通り、魔法を同時に展開してより広範囲を攻撃することだ。魔法の複合は、相性のいい属性の魔法を同時に展開して、相乗効果で威力を上げることだ。火と風で火力を強化するような感じだ。>

 「そんなのがあるんだ・・・。・・・どれも高度そうだね。」

 <コツさえつかめば問題ない。教えれば、お前でも使えるぞ。・・・さて、少し休んだら、ホーンラビットを狩って帰るとするか。>

 「・・・そうだね。じゃあ、少し休んだら、ホーンラビットを探そう。」


 しばしの休憩の後、ネロは、残りの討伐対象であるホーンラビットを探すべく、森の奥へと入っていくのだった。











 「依頼が終わりました。」


 町に戻ったネロは、ギルドの受付に討伐部位を提出する。解体は、安全な場所で行ったものの、あまりに数が膨大で、結局、夕方までかかってしまったが。


 「・・・あの・・・これ・・・あなたが狩ったんですか?・・・一人で?」


 受付には、朝、冒険者登録の際に受付を担当した女性職員がおり、女性職員は、ネロの成果に驚愕していた。


 「そうですけど、何か?」

 「・・・あの、失礼ですが、不正なことはしていませんよね?その場合は・・・。」

 「不正なんてしていません。僕が、一日かけて倒した魔物です。」

 「・・・ですが、一人でこれだけの量を狩るのは、どう考えてもありえないかと・・・。」


 女性職員は、どこか疑いを含んだ目で、ネロの提出した討伐部位を見ながら言う。


 (そんなこと言われても・・・できたものはできたとしか・・・。)

 <・・・仕方ない。俺と代われ。こういう場合の交渉事には自信がある。>

 (・・・分かった。)

 「<・・・何だ?人がここまで苦労して狩った成果を疑うのか?>」

 「!?」

 「<・・・なるほど。難癖を付けて俺の成果だけ横取りするつもりなのか。・・・冒険者ギルドは、いつから詐欺師になったんだ?>」

 「い、いいえ!そんなつもりは・・・!」


 突然のネロの変貌に、女性職員は戸惑う。無論、変貌したのは、クロに代わったからなのだが。


 「おいおい、坊主。ねーちゃんの言う通りだぞ。」


 そんな女性職員を庇うかのように、数名の冒険者がクロの側にやって来る。


 「俺達でさえ、お前くらいの頃は、パーティ組んでもこんなに狩るなんてできなかったんだぞ。ソロでできるわけがないだろう。」

 「大方、どこかの冒険者が倒したあまりものだろ。」

 「<・・・この程度の狩もソロでできないとは。この時代は、冒険者までレベルが落ちているのか。>」

 「何だと!?」

 「俺達のレベルが低いだと!?冒険者なり立てのガキが!」


 不遜なクロの発言に、冒険者達は怒る。

 彼らは、冒険者として一人前と言われる方解石カルサイト蛍石フローライト、或いは中堅最強の燐灰石アパタイト級の冒険者である。このランクに至るまで、長い下積みと苦労があったのだ。そんな彼らにとって、クロの発言は、到底見過ごすことなどできなかった。


 「<・・・なら、俺の実力を見せよう。俺が弱いと思う奴らは、全員かかってこい。相手してやろう。>」

 「!?何だと!?」


 クロの挑発に、事態を傍観していた冒険者達も反応する。


 「<お前らが俺に勝てば、冒険者はやめる。だが、お前らが負けた時は、俺の言うことを聞いてもらうとしよう。>」

 「な!困ります!そんな勝手な!」

 「いいぜ!受けてやる!」


 女性職員は、クロを止めようとするも、周囲の冒険者達は止まらない。ここにいる冒険者達は、皆、長い苦労の末にランクを上げ、一人前になったのだ。自分達の実力に対する自負と、冒険者としての誇りを持っているのだ。クロの発言は、それらを馬鹿にするものとして捉えられたのだ。もちろん、クロは本当に馬鹿にしていたが。


 「今すぐに、お前の化けの皮を剥がしてやる!覚悟しろ!」

 「ねーちゃん!訓練場を使うぜ!」

 「うう・・・どうしてこんな・・・。」


 冒険者達にここまで凄まれては、彼女は何もできず、訓練場に向かうクロ達を、ただ見送ることしかできなかった。

次回、クロがまた無双します。

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