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黒剣の魔剣士の物語 相棒兼師匠は最強魔法使い?  作者: レイス
エピソード②冒険者活動編
20/31

19.オーム大森林

今回は、戦闘シーンが多めです。

 「・・・ここが、オーム大森林。」


 冒険者ギルドで討伐依頼を受けたネロは、アドが隣接している魔物の棲息地の一つ、オーム大森林の前にいた。

 オーム大森林。名前の通り、とても広大な森で、獣や虫、亜人系の魔物が数多く棲息している。今回受注した依頼には、グレーウルフやゴブリンといった獣や亜人系の魔物が討伐対象であるため、この場所を選んだのだ。

 もう一つここを選んだわけは、この棲息地は、他の棲息地に比べて魔物の強さが場所ごとに決まっているからだった。森の一番外側には、微震級の魔物が生息し、それより奥に行けば軽震、弱震、中震という感じで、順々に魔物のランクが上がっていく。つまり、森の外側にいれば、強い魔物と遭わずにすむ。そのため、駆け出しである滑石タルクの冒険者にもってこいの場所なのだ。もっとも、クロにはまた別の思惑があるのだが。

 なお、他に隣接している棲息地は、アンデッド系の魔物が多く棲息するアンペア荒野、水生系の魔物が多く棲息するボルト湿地帯がある。ここは、オーム大森林と比べて魔物の強さが場所ごとに決まっているわけではなく、その上、倒しにくい魔物達であるため、滑石タルクには不向きで、方解石カルサイト以降の冒険者が潜ることが多い場所である。


 「ここで魔物との戦いの経験を積んで、他の棲息地に行くのが、冒険者の定番らしいね。」

 <だが、俺的には他の場所も興味があるがな。どんな魔物が出てくるか楽しみだ。>

 「・・・じゃあ、入るよ。依頼書にある討伐数は、ゴブリンが十体、グレーウルフが五体、ホーンラビットが五羽、ビッグラットが三十匹、ビッグアントが五十匹、グレースライムが十体だね。」

 <雑魚ではあるが、油断はするな。お前には、まだ戦闘経験が足りない。囲まれれば危険だ。>

 「分かってるよ。・・・じゃあ、行こうか。」


 ネロは、オーム大森林に足を踏み入れると同時に、魔力感知を使用して、周囲の様子を探る。しばらく進むと、少し離れた場所にとても小さな魔力反応を多数感知した。


 「・・・これは、多分、ビッグラット・・・かな?」

 <・・・断定はできないが、おそらくはな。ビッグラットは、魔物の中でも特に弱い部類に入るからな。>

 「よし!まずは、ネズミ狩りだ!」


 ネロは、感知した場所に慎重に向かう。すると、想像通り、ビッグラットの姿があった。ビッグラットとは、名前の通り大きなネズミ型の魔物である。大きいとは言っても、精々ドブネズミを少し大きくしたくらいの大きさで、見た目も普通のネズミと変わらない。だが、仮にも魔物と呼ばれるだけあり、丸腰の一般人が何も知らずに近付くと、襲われて怪我をする場合もある。単体なら、何とか対処できるが、この魔物の厄介な所は、群れで活動するところにある。最低でも三十匹の群れで活動し、獲物を見つけると集団で襲い掛かってくるのである。


 (・・・目視だと分からないけど、魔力感知だと五十匹以上はいるね。)

 <ビッグラットは、臆病な性格だ。弱い敵なら群れて骨まで食い尽くすが、強い敵なら仲間を見捨てて一目散に逃げてしまう。お前が出て行けば、すぐに逃げてしまうだろう。追いかけるのは面倒だし、他の魔物に気取られる。一気に倒せ。>

 (・・・よし。それじゃあ、広範囲を攻撃できる初級魔法を使ってみるね。)


 ネロは、茂みの中から魔法を発動する。


 「・・・【ウィンドストーム】!」


 【ウィンドストーム】。文字通り風の魔法で、周囲に竜巻を発生させ、敵を切り刻む魔法である。

 現代では、範囲魔法はそこまで威力が高くないと言われ、精々、微震級の魔物退治にしか使えないとされている。だが、この【ウィンドストーム】は、クロが教えた魔法で、ランクは一番低いものの、現在使われている範囲魔法とは比較にならない威力があり、使い方次第では、もっと上のランクの魔物にすら有効打になりえるのだ。

 ネロの放った【ウィンドストーム】は、ビッグラット達を巻き込み、一瞬でズタズタにしてしまう。後には、無残な死骸と化したビッグラットだけが残っていた。


 「・・・やり過ぎたかな?」

 <別に構わんだろ。ビッグラットの死骸は、大して価値はない。皮も歯も、使い道はない。ゴブリンと同じだ。魔石と討伐を証明するための尻尾が取れれば十分だ。>

 「・・・でも、肉くらいは食べられるんじゃ・・・?」

 <やめておけ。肉も、あまりうまくない。・・・いや、まずい。非常食にはなるだろうが・・・他に食い物があるなら、無理に食う必要はない。>

 「・・・そんなにまずいの?」

 <はっきり言うぞ。・・・非常食の方がマシだ。>

 「・・・。」


 ビッグラットの味と、死骸の価値のなさを酷評するクロ。そんなクロの言葉を聞きながら、ネロは魔石と尻尾を取っていく。

 討伐依頼は、その魔物を倒したことを証明するため、魔物の死骸、或いは死骸の一部を持っていく必要がある。ビッグラットの場合、それは尻尾なのである。


 「・・・全部で五十七匹か。予定より多いけど、その分も売ればいいか。」

 <・・・ネロ。この程度の魔物に時間をかけすぎだ。魔石と尻尾だけなら、もう少し時間を短縮してもいい。丁寧にやるのは、全身が売れる魔物だけでいい。>

 「そうなのかい?」

 <ああ。そもそも、魔物の棲息地で、悠長に解体作業なんてするのは、護衛に回せる人数いるパーティくらいだ。普通なら、収納魔法で一旦仕舞い、安全な所で解体するものだ。そうしないと・・・。・・・!ネロ。魔力感知だ。>

 「え?・・・!?」


 クロに言われ、魔力感知をしたネロは、自分達に向かってくる複数の魔力反応を感じた。大きさからして、魔物のものである可能性が高かった。そしてそれは、別々の方向からやって来るようだった。


 「・・・四方向から、複数の魔力反応・・・。」

 <・・・ビッグラットの血の臭いを嗅ぎ付けてきたか。奴らは死の臭いに敏感だ。解体に手間取ると、こうなる。>

 「・・・そういうのは、早めに言ってほしかったな・・・!」


 ネロは、クロを構えて魔物の襲撃に備える。すると、一番移動速度が速い魔物達が姿を現す。それは、六体のグレーウルフだった。


 <囲まれる前に、各個撃破しろ!>

 「分かった!」


 ネロは、身体強化を使用し、一気にグレーウルフ達に接近する。意表を突かれたグレーウルフ達は、抵抗できずにネロに倒されてしまう。

 ここまで簡単に仕留められたのも、ネロが既に、何度もグレーウルフを倒していたため、ウルフ達の急所を知っていたからである。そこを突けば、最小の動きで仕留めることができた。


 <・・・次だ!一番早く近付いてくる方を迎撃だ!>

 「分かった。」


 次に現れたのは、醜い人型の魔物、ゴブリンである。身体能力は、グレーウルフより劣るものの、武器を使い、徒党を組んで襲ってくるため、パーティの人数が少なければ、グレーウルフより厄介だと言われている魔物である。数は、先ほどのグレーウルフより多い、十体ほどのグループである。先頭を歩くゴブリン達は、手に錆びた刃物や棍棒を持ち、後ろにいる二体のゴブリンは、簡単な作りながら、弓矢を装備していた。


 「飛び道具持ちか・・・!」

  <大丈夫だ!武器は違えど、町に来るまでに、倒し方は理解しているはずだ。できるな?>

 「大丈夫!【バインド】!」


 ネロは、対象の動きを拘束し、動けなくされる魔法【バインド】を使用する。ただし、先頭にいる二体にだけ。いきなり動けなくなったゴブリンに阻まれ、後ろのゴブリン達の動きが鈍る。


 「今だ!」


 その隙を見逃さず、ネロはゴブリンに一気に近付くと、首を刎ねていく。


 「!!!」


 だが、離れていた射手のゴブリンが、前衛を攻撃するネロに矢を発射する。


 <身体強化を動体視力と反射神経にも振れ!>

 「やってるよ!」


 ネロは、強化された動体視力と反射神経で、ゴブリンの矢を回避する。回避と同時に、残りの前衛のゴブリンを片付けてしまう。


 「!?」


 前衛が全滅したのを見た射手ゴブリンは、我先に逃げ出そうとする。だが、ネロは、そんなゴブリン達を逃がさない。


 「【バインド】!」

 「!?」


 【バインド】をくらい、動きを止められた射手ゴブリン。そんなゴブリン達を、ネロは容赦なく背後から切り倒すのだった。


 <・・・いい感じだな。次だ。>

 「・・・よし!」


 次に現れたのは、大型の蟻、ビッグアントだった。ビッグラット並みの大きさの蟻で、強力な顎で敵を噛み砕き、口からは強力な蟻酸を吐き、その上、ビッグラット以上の集団で活動する魔物である。


 「・・・何て数だ!百はいるかな!?」

 <蟻酸に気を付けろ!服を着ている部分はともかく、素肌の部分は焼かれるぞ!>

 「くらう前に仕留めるよ!【ウィンドストーム】!」


 ネロは、ビッグラットの時と同様に、範囲攻撃魔法で攻撃する。ビッグアント達は、半数以上がズタズタに切り裂かれて死骸と化したが、まだ半数近くが残っていた。


 「思ったより倒せなかった・・・!」

 <風以外の範囲攻撃も使ってみろ!>

 「でも、森で火の魔法は危ない!火事になる!」

 <虫が苦手なものは、火だけではない!氷だ!氷の範囲攻撃を使え!>

 「!そうか!氷か!【アイスストーム】!」


 ネロは、残っていたビッグアントに冷気の竜巻を引き起こす魔法【アイスストーム】を放つ。ビッグアント達は、残らず氷漬けになった。


 「・・・ふう。半分近く生き残った時は、どうなることかと思ったよ。」

 <対応できたのだから、気にするな。・・・さあ、ラストだ。最後の奴は、少々手強いぞ。>


 残るグループの魔物が、ネロの目の前に姿を現す。それは、ゼリー状の身体の魔物、グレースライムだった。

 スライム系のモンスターは、物理攻撃に耐性を持ち、体色によって特定の属性の魔法を無力化することができる、特殊な魔物である。だが、グレースライムは、最下級のスライムなため、物理耐性はそこまで高くなく、力に自信がある人間なら、ゴリ押しで倒すこともでき、おまけに属性耐性もない。倒しやすいスライムと言える。


 (・・・グレースライムなら、そこまで大変じゃないと思うけど・・・?)

 <・・・ネロ。試しに身体強化をかけないで、ゴブリンの棍棒で奴を殴ってみろ。>

 (?・・・いいけど・・・?)


 クロに言われるまま、ネロは倒したゴブリンの棍棒で、グレースライムを殴る。身体強化をかけずに。すると、棍棒は、グレースライムに簡単に弾かれてしまう。


 「!?」

 <耐性が低いとないのとは違う。身体強化をかけなければ、低くても攻撃を弾かれる。それに、お前は基本、魔剣である俺を使っている。だから、耐性を無視して攻撃できるから、耐性に無頓着になる。魔力も帯びてない、素材も貧相な武器で攻撃しても、今のように弾かれるのが関の山だ。如何に、最下級のスライムであろうとも、だ。>

 「・・・分かった。こいつらには、魔法や魔力を込めた攻撃で倒す!」


 ネロは、クロでグレースライムを切り裂く。切り裂かれたスライムは、魔石だけを残して蒸発してしまった。


 「・・・よし!残りも片付けるぞ!」


 ネロは、残りのスライムも同様に倒していく。周囲には、スライムの魔石だけが残るのだった。

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