表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/31

12.卒業

 「卒業生代表、特別措置卒業生ネロ。前へ。」

 「はい。」


 ワイズの言った通り、ネロは満点で合格し、見事特別措置合格者となった。学校内は、今まで劣等生と馬鹿にされていたネロが、一番の成績で卒業試験を合格したことが話題となっていた。どうやってそこまで強くなったのか聞いてくる者も大勢いたが、ネロははぐらかすと、卒業式の日まで訓練に明け暮れた。卒業が決まった以上、一日も無駄にはできなかった。かつては嘲笑と同情で見られていたネロの訓練も、今では尊敬と羨望の眼差しで見られていた。

 そして、合格者発表から十日後、卒業式が執り行われた。受験生二百五十名に対して、合格者は僅か十名。そんな少ない合格者の代表として、ネロが壇上に立っていた。


 「・・・卒業、おめでとう。これからの君達の活躍を願っています。」

 「・・・ありがとうございます。」


 校長から卒業証書と五級魔法使いの証明証を受け取り、ネロは自分の席に戻るのだった。席に置かれていたクロは、まるで親のようにそれを見ていた。

 その後もつつがなく式は進行し、正午と同時に式は終了した。










 午後から、卒業生を祝うパーティが開かれた。パーティには、卒業生の家族や友人達も参加し、賑やかだった。


 「・・・。」


 そんな中、ネロは一人でジュースを飲んでいた。


 <・・・ネロ。他の卒業生には家族が来ているのに、お前には来ていないようだが?>

 (呼んでないからだよ。僕の実家は、学校から遠いんだ。それに、あまりお金がないんだ。学校は、授業料が免除されていたから何とかなったけど、親の交通費までは・・・。)

 <・・・お前の記憶で見た生活水準でも、ここまで来るのは難しいのか。・・・どの時代も世知辛いな。>

 (・・・それに、僕、故郷に手紙とか、ここ二年間書いてなかったから。)


 ネロはそう言うと、少し寂しそうな顔をする。


 <・・・魔法が使えなかったからか?>

 (・・・うん。恥ずかしくて、とても手紙なんて出せなかったんだ。)

 <だが、今なら出しても大丈夫だろう。それに、一番で合格なら、真っ先に報告するんじゃないのか?>

 (ずっと訓練してたから、手紙を書く暇なんてなかったんだ。)

 <・・・それは悪いことをしたな。せめて、家族に連絡する暇くらいやるべきだったな。>

 (いいよ。僕も、ここまで凄いことになるなんて思わなかったから。それに、君から教えてもらったことを、少しでもものにしたかったからね。)

 <・・・。>

 「お~い、ネロ。」


 そんな時、卒業生の一人がネロの側に寄って来た。


 「?何?」

 「何って、卒業生代表がこんな所で一人寂しく飯食ってるなんて、変だろ。こっち来いよ。」

 「・・・いや・・・僕は・・・。」

 <・・・行ってこい。今日くらい、羽目を外せ。>

 「・・・分かった。それじゃあ・・・。」

 「おうおう、こっちだ!」


 卒業生に連れられ、ネロもその輪に入る。久しぶりにネロは、自分以外の生徒と話した。他愛無いことから、将来のこと、色々なことを。


 「ネロ。お前、これからどうするつもりなんだ?」


 卒業生の一人が、ネロに今後について聞いてきた。


 「・・・国内を回って修行したら、国外に行くつもりだよ。」


 クロは、卒業後は修行も兼ねて国を見て回りたいと言い、ネロもそれに同意した。小さな村出身のネロにとって、国外もそうだが、国内を旅するのも楽しみなのだ。


 「・・・お前、本当にフリーでやっていくつもりなのか?」

 「それが、僕の夢だから。」

 「・・・夢ね。今時冒険魔法使いなんて、時代遅れだと思うけど。」

 「でも、ロマンがあって面白そう。」

 「・・・皆はどうするつもりなんだい?」


 ネロは、他の卒業生達に今後について尋ねた。全員、既に師匠となる魔法使いを見つけており、その元で修行して五級魔法使い試験を受けること、そして、将来的には有力な貴族のお抱えか、宮廷魔法使いを目指すのだという。


 「・・・そっか。なれるといいね。」

 「ネロ。今回は先を越されたけど、いずれはお前に追い付くからな。見てろよ。」

 「じゃあ、この中で一番先にお抱えか宮廷魔法使いになれるか競争しない?」

 「おい、そりゃないだろう?ギリギリ合格の俺が不利じゃないか。」

 「なら、頑張って修行したら?あんた、少なくとも、ネロの半分は頑張らないと。」

 「うう・・・。」

 「おいおい。点数でいうなら、ネロ以外全員そうだろ。特に、実技。ネロ以外は、ギリギリ合格だったんだ。俺達も頑張らないと、お抱えどころか五級に昇格だって夢のまた夢だぜ。」

 「でも、少なくともこいつよりは、絶対に先に五級になれると思うけど。」

 「ひでーな!」

 「ははははは。」

 「・・・。」

 (・・・一度は諦めそうになったけど、クロに出会えたことで夢を叶えることができた。ありがとう、クロ。)


 他愛無い話に花を咲かせる卒業生達を尻目に、ネロは自分をここまで導いてくれたクロに、心の底から感謝するのだった。

学校編はここで終了です。まだヒロインも出てきませんし、無双シーンもあまりありませんが、次からはヒロインと無双シーンが出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ