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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第七章 スアレ防衛戦
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第81話 スアレ強襲

 

 イグナシアに帰還してから翌日、俺とエマは訓練場に居た。


「最上位デーモンやSS以上のモンスターと戦うにはやっぱり雷魔術は必要不可欠だ」

「うん、そうだね。でも、攻撃されている時に暴走しちゃったら大事になるよ?」


 確かに、戦場のど真ん中で暴走させたら敵味方関係なく大打撃を与えてしまう。そうなれば、場が混乱しどうなるかわからない。


「なんか、体がおかしいんだ」

「体が?病気?」

「いや、そんなんじゃない」


 さっきから少量の雷魔術を繰り返し使っているが、いつもより魔力の流れがしっくりくる。まるで、体が作り変えられたように。


「エマ、50%まで出してみる。もしもの時は直ぐに処置できるか?」

「うん…!大丈夫だよ!」

「よし…ふっ!!」


 俺の身体中から雷電が溢れ出る。バチバチと音を鳴らし猛々しく放出される。


「アレク!すごい!」

「扱える…!60%まで上げるぞ」

「うん!」


 更に雷電の勢いが増す。しかし、暴走する気配はない。


「…70%まで上げる」

「大丈夫…?」

「もしもの時は頼む」


 エマは頷き、俺の様子を見守る。


「いくぞ…!!」


 さっきよりも更に強い雷電が放出される。あまりの圧に訓練場が小刻みに揺れ始める。


「くっ…ここまでだな…」


 自身の体の限界を感じ、70%で止めた。


「すごい!なんで急にこんな扱えるようになったの?」

「さぁ、なんでだろうな。ルイーダ先生は徐々に慣らしていくしかないって言っていたが」


 エルガノフと戦う時は20%が限界だった。それを調子に乗って80%まで引き出し盛大に暴走したのだ。

 俺の身体はいつ70%も扱えるようになった…?ふと、意識の中で平行世界の俺が言っていたことを思い出した。


『ささやかなプレゼントを用意した』


「なるほどな、ささやかなプレゼントってのはこれのことか…。人の体勝手に作り替えてんじゃねーよ」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない。平行世界の俺が雷魔術にある程度対応できる体に魔力回路を調整してくれたようだ」

「なるほどね!やっぱすごいね!平行世界のアレク!」


 なんか、悔しいな…妬ける。いや、俺だけど。結局は俺なんだけど、この世界の俺は俺だけだ。


「とりあえず、俺のレベルアップは勝手に出来てたな。エマは風魔術に絞って特訓しよう」

「うん!」


 俺とエマは特訓を再開した。


 ◇◇◇


 〔カンッカンッ〕


 別の訓練場では木剣のぶつかり合う音が響いている。


「ソフィア、その後魔剣はどうだ?」

「それが、なにも音沙汰ないんですよね…」


 カルマとソフィアは互いに打ち合い特訓をしていた。


「まだ、その時じゃないということなのでしょうか…」

「どうだろうな。魔剣を手に入れた剣士は既にみんな超級以上だったと聞く。ソフィアがその剣を握れている以上資格はあるはずだが」

「そうですね…でも、オリハルコンの剣ですから、普通に使う分にも申し分ないです!」


 カルマとソフィアはそんな話をしながら打ち合いを続けている。


「カルマさんはどうですか?壁は越えられそうですか?」


 ソフィアの問にカルマは少し顔を暗くした。


「いや、難しいな…。やはり、超級の時と一緒でなにかきっかけが必要なのかもな」

「そうですか…」

「アレクやエマは先へ進んでいく。俺達も負けていられないな」

「はい!」


 ライバルに置いていかれまいと2人は鍛錬に励んだ。


 ◇◇◇


「ふぃー、ま、俺が集められるのはこの程度かな」

「どんだけ集まったの?」


 イグナスとルイーダは自分のツテを使い、協力してくれる冒険者達を集めていた。


「A級が20人、S級が10人ってとこだな」

「結構集まったね!私はA級10人とS級5人かな」

「防御魔術と治癒魔術展開してもらえれば万々歳だ。十分だろ」

「そうだね!」


 2人も順調に準備を進めていた。


「ね、ねぇ、イグナス…。シリウスとアレイナはいい感じなんだって…」

「おー、らしいなー。呑気な奴らだ」


 イグナスは他人事のように言っている。


「イグナス…私達もそろそろ…」


 ルイーダの言葉にイグナスは俯いた。


「わかってる。お前の気持ちも俺自身の気持ちも。だが、今の俺じゃ、お前を幸せにすることはできない…」

「イグナス…」


 そう、2人は恋人関係にあったのだ。知っているのはホグマンのみ。

 2人の付き合いは長く、イグナスが"無気の剣聖"と呼ばれる前から背中を預け合っていた。


「まだ、あいつを追ってるの…?」

「ああ、あいつを殺さない限り…俺は前に進めない」


 イグナスの震える拳をルイーダが握った。


「大丈夫。私は待ってるから…」

「すまない…」


 ルイーダはイグナスを抱きしめた。


 そして後日、イグナスの耳にとある情報が耳に入った。


『魔神龍ギルナンドがミアレスとの国境付近に出現した』


「待って!イグナス!」

「止めるなルイーダ!!あいつは俺が殺す!」

「違う!おかしい!なんでこのタイミングで出現するの!?あいつはずっと世界に無干渉だった!それがいきなり現れるのは不自然だよ!」


 聖剣を持ち、すぐに出立しようとするイグナスをルイーダは必死に止めた。

 イグナスの殺すべき相手、それは世界に存在する始祖の龍の1体、『魔神龍ギルナンド』だった。

 それはイグナスが"無気の剣聖"と呼ばれる理由となったモンスターでもある。


「それでも、俺は行かなければいけない!!大丈夫だすぐもどってくる!」


 イグナスの目は血走り、正常じゃない。ルイーダの静止を振り払い、走っていった。


「イグナス…嫌な予感がするの…」


 走り行くイグナスの背を見て呟いた。ルイーダはポロポロと涙を流した。



 始祖の龍

 世界に存在する7体の龍の事である。それぞれ、火、水、風、岩、聖、闇、無を司り魔術の祖とも言われている。

 始祖の龍達は知能が非常に高く、世界の在り方に対しても基本無干渉である。

 500年前の魔神戦争の時も関わることは無かったという。

 ランクは天滅級に分類されるが、危害は加えない為討伐対象とはなっていない。



「魔神龍…お前だけは許さない。闇に葬られた知られざるブレイド家の歴史…。ケジメはつけさせてやる」


 イグナスの目には復讐しか写っていなかった。あるのは殺意と憎しみだけだった。


 ◆◆◆


「イグナスはミアレスとの国境付近へ向かいました」

『順調ですね。では、作戦を決行しましょう』

「了解しました」


 男はマイズと短く会話し、ニヤリと笑う。


「さぁ、イグナシアを我が手に…」


 男は野望の火を瞳に灯し、決戦の火蓋を切って落とす。


 ◆◆◆


 アレクサンダー達がイグナシアに戻って3日が経ったある日のこと…。


「…!?なんだ!?」


 俺のサーチに大量のモンスターが急に現れた。


「うわっ…すごい数…これって…」

「サーチに引っかかる全てのモンスターはA級以上だ…」


 数は50を超えている。これは…。


「いくぞ!パンドラの攻撃だ!!」


 俺達は立ち上がり冒険者学校を出た。行く先は街門前。

 既にルイーダ達が防御魔術の展開を準備していた。さすがルイーダだ、対応が早い。


「本当に攻めてきたようね…」

「はい、俺達が前線を張ります。支援よろしくお願いします」


 俺達の後ろにはゾロゾロと冒険者達が集う。


「さぁ…守るぞ」


 決戦の火蓋は切って落とされた。


第81話ご閲覧いただきありがとうございます!


次回をお楽しみに!

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