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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第二章 冒険者学校 その1
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第7話 4年後、旅立ち

 

 あれから、4年が経った。


 俺の誕生日には毎年ミシアとラルトが豪勢な食事とプレゼントを贈ってくれた。

 ミシアの金管理は凄まじいものであの時渡した5万Gを4年間で使い切ったのだ。

 その間にラルトの収入はガッツリ貯まりしばらくは安定するようだ。


 エマは相変わらず魔術の練習をしている。

 そして、エマは4年で各属性の上級魔術を習得した。風属性に至っては超級魔術まで。これには師であるミーヤも驚きを隠せなかった。

 ちなみにミーヤは火魔術が超越級その他は超越まで使えるらしい。


「弟子が師を追い抜く日は近そうですね!」


 ミーヤはそう言いながらもより一層の自分の特訓に励んでいるようだ。負けず嫌いなんだろう。


 俺はローガンから各流派の剣術のイロハを叩き込まれた。我流の剣術に加えて、他流派の剣術を上級程度には扱えるようになった。

 我流の剣術。ローガンが言うには


「その剣術はおそらく魔術と組み合わせて完成する剣術だろう!正にアレクのための剣術だな!」


 という事らしい。

 俺もより一層の頑張らなければ。魔術については元々知識があるので一応超越級を今の魔力量で1発だけ使えるが、使ってしまうと辺り一体を更地に変えてしまうので止めておこう。


 今俺は身支度を整えている。特待生試験は1週間後に迫っていた。

 レディアの街から王都スアレまで馬車の休憩を考えたら、4日かかる。明日俺はこの家を離れる。

 色んな感情が込み上げて来るが今はグッと我慢しよう。


 ラルトはこの4年間俺の親を探してくれたらしいが、見つからなかったらしい。黒髪に黄色の瞳は珍しいらしく、見つけやすいと思っていたらしいが、上手くはいかなかったようだ。

 もう、俺は家を出るから無理に探さなくていいと伝えておいた。


 魔導袋に食料と金、衣服を入れ。身支度を終わらした。傍らには黒剣。体格もある程度成長してきた為ローガンから使用許可が下りたのだ。

 ショートソードは卒業し、今はこの剣で訓練をしている。


「よし、準備完了!…あとは、エマにどうやって伝えるか…」


 エマには家を出ることを話していない、気付かれているかもしれない。今日は魔術の練習も休み、1日中部屋にこもっている。

 この4年間、ずっと一緒にいた大切な幼馴染で、大好きな人だ。黙って行く訳にはいかない。

 エマの部屋の前に来た。

 

「エマ?ちょっといいか?」

「うるさい、あっちいって」


 拒否されてしまった。どうやら気付いていたらしい。エマがそうするなら、仕方ない。エマの顔を見て別れたかったが、まぁ、今生の別れじゃない。また会いに来よう。

 そんなことを思いながら俺は部屋へ戻り眠りについた。


 ◇◇◇


 翌日、レディアの街の門の前、馬車が1台停まっている。


「忘れ物はない?お金もった?推薦状は?」


 そう確認を勧めるのはミシアだ。


「アレクなら大丈夫だよミシア!この子はしっかりしてる」


 ラルトはそう言いながら苦笑いしていた。


「アレクがもう10歳ですか、まだまだ子供だと思っていたのですが。なんだか逞しくなりましたね」

「まぁ!アレクならどこへ行っても大丈夫だろう!さ!元気に送り出そうぜ!」


 ミーヤとローガンも見送りに来てくれた。エマの姿はない…


「ミシアさん、エマは…?」

「なんども声をかけたんだけど、部屋から出てこなくて」

「そう…ですか…」


 残念そうにしているとミシアは優しく抱きしめてくれた。


「大丈夫よ。何かあったらいつでも帰ってきなさい。あそこはあなたの家でもあるのよ!私たちはいつでもあの家で待ってるから!」


 そう言いながら歪んだ笑顔を浮かべた。涙を我慢しているのだろう。

 ラルトの目にも涙が貯まっている。

 そして、4人が送り出してくれた


「「「「いってらっしゃい!!」」」」

「いってきます!!」


 元気に返すと馬車が出発した。

 すると、


「アレクーーー!!!」


 街の奥から、俺を呼ぶ声が聞こえる。聞き慣れた声だ。自然と笑顔になる。


「エマ!!」


 強化魔術を施し全速力で駆け抜けてくる。


「あれ!?出発してる!?ちょっと待って!私も行くから!!!」


 …ん?私も行く…?

 ミシアとラルトが困惑している。2人も知らなかったようだ。そのまま2人の横を通り抜け、馬車に追いついた。


「ちょ、ちょっとエマ!?」

「ごめんね!お母さん!お父さん!内緒にしてて!言ったら反対するでしょ!?」

「もう!ちゃんと相談してくれれば反対はしないわよ!」

「あははっ、たまには顔出すから!元気でね!ローガンさんも!師匠も!」


 ローガンとミーヤは笑って手を振っている。

 どうやらこの2人は知っていたようだ。


「おまえたち2人の名前がこの街に轟くのを楽しみにしてるぞ!!!」


 ローガンからの激励を受け、街を後にした。

 4人は俺たちの姿が見えなくなるまで、見送ってくれた。そして、見えなくなった。


「うぅ…本当に大丈夫かした…エマまで…」

「大丈夫さ、アレクがついてる、エマも強くなった」


 ミシアの我慢していた涙が一気に溢れ出した。

 ラルトはミシアの肩を抱き、馬車が進んだ方角を見ていた。


 ◇◇◇


「エマも来るなんて、ビックリしたよ」

「だって、アレクが家を出るって話してくれなかったから、私も隠す羽目になったんでしょ」


 痛いところを突かれた。


「そ、それで、推薦状は貰った?」

「うん!ローガンさんと師匠から!」


 嬉しそうにパンパンに脹れたバックから推薦状を出した。


「準備するのに時間がかかっちゃってね。ギリギリになっちゃったんだ」


 どうやら昨日から準備していたが、持っていくものが決まらずそのまま寝てしまい。今日の朝慌てて準備したようだ。

 思わぬ旅仲間に嬉しくなり、思わず抱きしめた。


「ア、アレク!?」

「正直、1人じゃ心細かったし、エマも一緒に居たらなって思ってたから。本当に嬉しいよ」


 顔を真っ赤にしたエマに本心を伝えた。

 俺も心ではエマと離れたくないと思っていたから。


「大丈夫だよ、これからも離れるつもりはないから」


 照れくさそうに言うエマを笑いながら旅路についた。


 ◇◇◇


 4日は意外と長かった。

 エマと2人で座ってできる魔術の練習をしながらチラッとエマを見た。4年で人は結構変わるもんだ。

 馬車の揺れに合わせて揺れる、膨らんだエマの胸部を見ながら思案に耽る。

 まだまだ、発展途上だか伸び代がある。10歳にしては中々な方では…?

 そんなことを考えているとエマに睨まれた。


「変態」

「ごめんなさい」


 悪いことをしたら謝る、人として当たり前のことだ。見るのは悪いことなのだろうか。


 そんな話をしていると、王都が見えてきた。


「見て!アレク!大っきい!」

「本当だ…すごいね」


 イグナシア王国の王都スアレ。

 中央にそびえ立つのは、スアレの象徴イグナシア王城だ。ローガンから聞いた話だと、王都スアレでは特に冒険者の育成に力を入れているらしい。

 本来、冒険者になるのに学校へ通う必要はない。だが、冒険者になりたての初心者の死亡率が高く。それに嘆いた王自ら冒険者学校を設立したらしい。

 今年は丁度設立20周年で特待生試験に合わせて様々な催しが開催されているらしい。


 馬車を降りた。王都へ入るには検問を受ける。今は一大イベント開催中だからなかなかに厳重だ。

 エマは目を輝かせキョロキョロしている。俺たちの番が来た。


「君たちがここへ来た目的は?」

「冒険者学校の特待生試験を受けに来ました」

「おぉ!祭りの主役たちだったか!頑張れよ!」


 検問していた騎士は清々しく迎えてくれた。祭りの主役。特待生試験に受けるだけでも、名誉なことらしい。受ける資格があるということは一流の戦士達から認められた者ということだ。


「ねぇ!見て見て!屋台がいっぱい!!あとであの肉串食べようよ!アレク!」

「う、うん。そうだな」


 はしゃぎまくるエマに苦笑いで返した。


 受験の受付を済ませに、試験会場へ来た。受付のお姉さんに推薦状と受付用紙を提出した。

 お姉さんはローガンとミーヤの推薦状を見て驚いていた。やっぱりあの人たちは有名人のようだ。鼻が高い。

 エマも提出した。同じ推薦状に再度驚き、笑顔で受理してくれた。


 今回の試験について、説明を受けている。

 今回は創立20周年の催しで、特待生試験は実況つきの見世物になるらしい。

 試験会場は2日後、魔術部門と剣術部門に分かれ、それぞれ成績上位5名までが合格になり、合計10人のクラスを創るそうだ。

 俺が剣術部門にしようとしたら、エマが涙目で首を横に振り訴えてきた。エマと共に魔術部門に丸を付ける。


「え、あの?アレクサンダー君は剣術じゃなくていいのですか?」


 受付のお姉さんが困惑気味に尋ねてきた。

 俺の腰にある黒剣を見て言ったのだろう。


「ええ、大丈夫ですよ。魔術も使えますので」

「わ、わかりました。魔術部門で武器を所持できるのは控え室までなのでお気を付けください」


 一通り注意事項を聞き試験会場を出た。


「街を見て回りましょ!」

「そうだな、腹減ったよ」


 エマの提案に賛同しお祭り騒ぎの街へ繰り出した。

 いい匂いがそこらじゅうからする。さっそくメインの肉串を買ってみた。1本15Gだが、ローガンから貰った残り5万Gは使ってないため丸々残っているから余裕だ。


「おいしい!もう1本食べていい!?」


 エマは口に頬張りながら聞いてきた。

 確かにおいしいな。ミシアとラルトにも食べさせたい。


「ああ、いいよ。好きなだけ食べな」


 そう言うとエマはもう1本頼んだ。結局エマはそのあと、もう2本おかわりして、合計4本食べた。


 街を満喫したあと、俺たちは泊まる宿屋へ移動した。街がお祭りという事だけあって宿屋も満員だった。

 結局、1つの部屋を俺とエマで使うようになった。年頃の男女が同じ部屋とは如何なものか。ラルトが知ったら暴れだしそうだな。


「晩御飯何食べる!?」

「さっき肉串食ったばかりだろ…」


 エマの食欲に気圧されながら、試験日まで楽しい時間を過ごした。


次回からは第二章、冒険者学校編になります!

次話をお楽しみに!

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