表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第四章 冒険者学校 その2
37/137

第34話 懐かしき我が家

 

「それで、レディア伯爵。カオスフォレストの様子は?街への被害などは」


 街道にAランクモンスターが出現していた。急を要する可能性がある。


「レディア伯爵だなんて、ハネスでいいよ」

「では、ハネス様。街への被害はありますか?」

「いや、今のところはないよ。ローガン達騎士団が頑張ってくれててね。街への被害はゼロだ」


 なるほど、街道にいたアウルベアは討ちもらしかな?ローガンに問ただそう。


「なるほど、では、騎士団と協力してカオスフォレストへの調査を進めます。」

「そうしてくれると助かるよ。最近特異エリアの様子がおかしいとあちこちで騒いでいる。細心の注意を払うように」

「お心遣い感謝します。では、私達は騎士団と話をしますので、失礼します」

「君達の活躍を期待しているよ」


 そうだ、あれも言っとかなきゃいけないな。


「はい。あ、あと衛兵の再教育をした方がいいかもしれませんね。詳しくはディアナさんに聞いてください」


 そう言い悪戯な笑顔を浮かべてハネスの部屋から出た。すぐにディアナが呼ばれていた。


「やっぱり偉い人と喋るのは疲れるな」

「アレクさんがリーダーですから、しっかり頼みますよ!」


 クエストの依頼人やパーティーでどこかへ赴く時はリーダーが話すのが基本だ。

 他のメンバーが出しゃばって喋るとリーダーの泊がつかないとか。そんなのいいのに。


「この後はどうするの?」


 エマがうずうずしながら聞いてきた。

 早く両親に会いたいんだろう。


「ミシアさんとラルトさんのとこに行くよ。カルマも休ませたいしな」

「やったー!!」

「す、すまんな…」


 確か今日はラルトも休みの日だったっけ。ちょうどいいな。

 俺達は俺とエマの実家へ向かった。


 森の麓にポツンとある家。

 大きくも小さくもない。ミシアによって綺麗に手入れされた庭と玄関は自慢できる。


「ちょ、ちょっとエマさん!そんなこっそり…」

「お母さんとお父さん驚かすの!ソフィアとカルマは外で待ってて!すぐ呼ぶから!アレク!行こ!」

「あ、ああ…」


 大丈夫だろうか。

 ミシアはともかくラルトはまだ26歳で若い。娘も独り立ちして、美人で若い奥さんと2人っきりの家…今日は朝から休み…まずいな…。


「…あれ…?リビングには居ないね?まだ寝てるのかな…?」

「エ、エマ…やめとこう…」

「…なんで?驚かそうよ…!」

「知らないからな…」


 もう昼前なのにリビングに居ない。つまりは寝室だ…ミシアはいつも早起きで朝ご飯を用意している。

 これは…

 エマと俺は寝室の前にきた。


「…あっ…!…あなた…!」

「はぁ……ミシア…!…!」


 やっぱり…

 軋むベッドの音、2人の荒い息。壁の薄いこの家では2人がナニをしているか一目瞭然だ。

 しかも、扉が少し開いておりエマはその様子をガン見してしまった。エマの顔を見る。


「ア、アレク…これって……」

「はぁ…だから言っただろ、やめとけって…」


 エマはこれ以上にないくらい顔を真っ赤にしてそのまま2人の寝室を後にした。これは、エマの妹か弟ができるのは早そうだな。


「大丈夫か?」

「う、うん…ちょっとビックリしちゃった。そうだよね…私もああやって産まれて…」


 自分で言いながらまた顔を赤くしている。

 そのまま、家を出た。ソフィアとカルマが首を傾げていたが。まぁ、わざわざ言う必要はないだろう。


 気を取り直して、玄関をノックした。すると、奥から慌てたような音を立ててミシアが出てきた。


「どちら様……エマ!?アレク!?どうしたの!?」


 ミシアは驚いているが、若干息が上がって髪も乱れてる。その顔は紅潮していた。まぁ、事後だろう。


「た、ただいま…お母さん…」

「エマとアレクだって!?」


 声を聞きラルトが慌てて出てきた。


「ただいま…お父さん…」

「おかえりなさい!どうしたの?お休み貰ったの?」

「違うよ。依頼でレディアに用があったから、顔だそうかなって」

「そう!アレクもおかえりなさい!1年で2人とも大人っぽくなったわね。後ろの2人はお友達?」


 そう言うとミシアとラルトは後ろを見た。


「はい、俺とエマのパーティーメンバーで親友です」

「そう!いらっしゃい!お名前は?」

「ソフィア・イグナシアです!」

「カルマです」


 2人は自己紹介した。


「イ、イグナシア!?王女様では…」

「今の私は一介の冒険者で、エマさんの親友です。お気になさらず」

「は、はぁ…」


 ラルトは狼狽えているな。


「そう!いらっしゃい!ソフィアちゃん!カルマくんも!」

「はい!お邪魔します!」

「お邪魔します」


 さすがミシアだ。フレンドリーこの上なしだな。ラルトはまだぎこちないが。


「エマ…よく帰ってきてくれた…」


 そう言いラルトがハグしようとするとエマがそれを手で制した。


「やめて…お父さん…リビング行ってるね」

「エ、エマ…?」


 ラルトが泣きそうだ。可哀想だが、親のその行為を目の当たりにした娘の気持ちは複雑だろう。


「エマったらどうしたのかしら。反抗期?」

「あ、あの、ミシアさんラルトさん…」


 そう言い俺は2人の耳元に口を寄せた。


「あの…ああいう行為は…夜の方が…」

「「へぇ!?」」


 2人は驚き顔を真っ赤にしている。


「き、聞こえてたのかい…?」

「まさか、お友達にも…?」

「いえ、俺とエマは特別耳がいいので…」


 そういうことにしておいた。

 ミシアとラルトは顔を赤くしながらリビングに向かった。ここで言っておかないと、また帰ってきた時に同じことになりかねない。


「お母さんお腹空いたー」

「でも、今日来るなんて知らなかったから食材ないわよ?」

「それなら、俺が出しますよ」


 そう言い俺は魔導袋からワイバーンの肉と諸々の調味料を出した。


「わぁ!立派なお肉ね!これなら十分!ちょっと待っててね!すぐに作るから」

「やったー!1年ぶりのお母さんのご飯だ!」

「エマさんからはかなりの料理上手だとお伺いしています。楽しみです!」

「ふふっ、そんなに期待しないでね?」


 一次はどうなるかと思ったけど、なんとかいつも通りに戻ったようだ。


「エマ…」

「あ、うん…」


 ラルト意外は。


「カルマ、飯食えるか?」

「ワイバーンの肉ならいくらでも食える」

「体調不良はどこにいったんだよ…」


 しばらくして、ミシアお手製のワイバーンの肉フルコースが机の上に並んだ。それを1口エマが食べた。


「んーーー!!!!」


 エマは目を輝かせて脚をバタバタさせている。可愛い。

 ただでさえ美味いワイバーンの肉がミシアの手によって調理されたんだ。宮廷料理人なんて目じゃないだろう。すると、ソフィアとカルマも食べだした。


「これは…すごい…是非宮廷料理人に…」

「………」


 ソフィアはミシアをスカウトしだした。

 カルマは無言で食べ続けてる。その目には薄ら涙が見える。すごいな。


「いつか恋人をここへ連れてきます。是非料理を教えてやってほしい」

「あらあら、大人気ね」


 カルマがなんか言っていたが気にしない。

 俺も食べ進める。手が止まらない。エマもこの領域に踏み込むことができるだろうか。将来が楽しみだ。


 あっという間に昼食を終えた。


「お、おなかいっぱい…」

「欲張って食いすぎるからだ」


 俺とエマはソファに座り、エマは俺の膝に頭を置いて寝転がった。エマは少しして寝息をたて始めた。お腹いっぱいだから仕方ないな。

 そんなエマを見ていると俺も次第に眠くなり、そのまま眠った。


「ふふっ、相変わらず仲良しね」


 ミシアは2人に毛布を掛けた。


「2人はいつもこんな感じなの?」


 カルマとソフィアに2人の様子を尋ねる。


「はい、いつも2人でベッタリですよ。王都でアレクは結構モテるので、エマはそれを警戒してるのかも知れません」

「確かに、アレクさんは女性にモテますね」


 アレクはモテるその言葉にミシアはドヤ顔していた。


「エマはどうだ?」


 次はラルトが聞いた。


「エマさんは誰しもが認める美貌ですよ。街を歩けば沢山の男性が目で追っています。ご両親に似たのでしょうね」

「て、照れるなぁ」


 ソフィアはクスクスと笑いながら答えた。


「でも、エマはモテるって言うよりも高嶺の花って感じですね。それに、最強の魔剣士が常に隣にいますから」

「それは良い悪い虫除けになっているかもね」

「ラルトさんはアレクさんの事をお認めになってるんですか?」


 ラルトは複雑そうな顔をしながらソフィアの言葉に答えた。


「大切な娘でもいつかは、誰かの嫁に行くだろう。それなら、俺が最も信頼を置き、大切にしている男が良い。それに当てはまるのは…アレクだけだろうね」


 娘を想う親の顔をラルトはしていた。


「アレクは素性こそ不明だが、あの子の幼少期を共に過ごして分かっていることはある。あの子は誰よりもエマを想い、エマを守ることに関しては命を懸けている。そんな子に娘を任せたいと思うのは当然だろ?」

「あなたもそんなこと考えれるようになったのね」


 ミシアとラルトは2人の未来を案じている。子の幸せを願うのは親として当然の事だと。ソフィアとカルマは暖かい気持ちになっていた。


 そうか…ラルトはそんな風に…


「だってさ、エマ…」

「もう…」


 毛布を掛けられた時に起きていたなんて、言えるわけないよな。


 しばらくして、2人で起きたふりをした。


 ◇◇◇


 俺達は夕方に騎士団に顔を出す予定だ。本格的な調査は明日から。


 俺達はミシアとラルトにこれまでの冒険の話を聞かせた。

 試験でソフィア、カルマと出会ったこと。ヤバい貴族に逆恨みされたこと。キメラとの戦闘、ミアレスで、親友と出会い、亡くし重症を負ったこと。ミシアとラルトは黙って聞いていた。


「中々濃密な1年を過ごしたみたいだね」

「はい、でもそのお陰で成長出来ています。これからも成長していきます」

「無茶は、しないでね…?」


 ミシアの手が震えている。俺とエマがミアレスで死にかけたこと、俺の片腕が無くなっていたことがショックだったみたいだ。


「無茶はするかもしれません。でも、死ぬ気はありません」

「うん、私達はもう弱くないよ、お母さん」

「そう?なら、また元気な姿で帰ってきてね?」

「うん!」「はい!」


 俺とエマは元気に返事をした。


 そうだ、2人には言っておかなければいけない事があった。

 俺の血筋についてだ。まぁ、2人なら心配ないだろう。


「1年の冒険で俺の素性について1つわかったことがあります」

「そうか!どんなことだい?」


 ミシアとラルトはこっちをジッと見る。拒絶されないと分かってはいるが、やっぱり緊張するな。


「俺は、人間と魔族のハーフです」

「あらそう!なら寿命が長い分エマとも一緒にいれる時間が多いわね!」

「うわぁ…じゃ人族の俺が1番先に死ぬじゃん…」


 唖然とした。もう少し色々あるかと思ったが。


「あの、ハーフエルフの寿命ってどのくらいなんですか?あと、魔族とのハーフも」


 これは大事な事だ。聞いておかないと。


「そうね。長寿種族のハーフは純血の半分くらいの寿命を持つわよ。魔族は例外なく1000年以上生きる種族だから、アレクは500年くらいね。エルフも1000年以上生きるわ。エマも500年、アレクと同じぐらいね」

「そうですか。ちなみにミシアさんはいく…」

「ん?」

「いえ…」


 やばい、食い気味に来た。笑ってる、笑ってるけど圧がすごい。年齢には触れてはダメだ。まだ死にたくない。


「あ、あの!獣人族の寿命はどのくらいですか!」


 ソフィアも気になったようだ。


「そうねー、獣人族は戦士が多いから戦いで命を落とすことが多いけど、単純な寿命は300年くらいって聞いてるわ」

「そ、そうですか…よかった、私も皆さんと少しは長く居られそうです」

「ソフィアちゃんは獣人族とのハーフなのかい?」


 ラルトは何食わぬ顔で聞いた。


「ええ、複雑な事情はありますが。見た目はほとんど人族なのであまりバレません」

「ちなみに、俺も魔族とのハーフです」

「そうかい。なら俺が1番先に死ぬね。みんな泣いてくれ」

「は、ははっ…」


 ラルトが悲観して拗ねてしまった。


「ああ、そう言えば、ミーヤさんも魔族とのハーフよ」

「やっぱりー、師匠ずっとちっちゃいまんまだもん」

「怒られるぞ…」


 やっぱりミーヤも他種族のハーフだったか。成長したかな?あんまり期待はしないでおこう。なにをとは言わないが。


第34話ご閲覧いただきありがとうございます!


次話をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ