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第3話 ミーヤ先生の魔術講座

 

 気が付くといつものベッドで寝ていた。

 ローガンが送ってくれたようだ。まだ身体が痺れるが動けない程では無い。


「痛てて……」


 身体よりも額が痛い…しばらく腫れは引きそうにないな。夕飯のいい匂いがする。

 食卓へ向かうといつもの様に3人が座っていた。


「アレク!よく眠れたかい?こっぴどくやられたね」


 そう言いラルトは苦笑いする。


「あの人は手加減を知らないのよ!もっと優しくできないのかしら」

「そう言ってやるなって、あいつなりの考えがあるんだよ」


 文句を言うミシアにラルトが苦笑いしながら諭している。2人は常識人だな、安心できる。


「ローガンさんは剣術について親身に教えてくれましたよ。僕の剣術についてはよく分かりませんでしたけど、ローガンさんから沢山のことを学べそうです!」

「アレクがいいなら、いいけど…無理はダメよ…?」

「もちろんです!」

「お母さんお腹空いた」


 俺たちの会話を横目に聞いていたエマがドスの効いた声で訴えかけてきた。

 その後はみんなで楽しく?晩御飯を食べ一息ついた。


「ラルトさん」

「なんだい?」

「ローガンさんなんですけど、ローガンさんはなぜすべての流派を習得したのですか?」


 それはローガンと対峙しずっと思っていたこと。最後の真剣な模擬戦で、なんとなく理由はわかるが。


「昔のローガンは最初は虎剣流一筋だったんだよ。でも、蛇剣流の剣士にこっぴどくやられた事があってね。それなら、すべてを習得して誰にもどの流派にも負けないって考えたんだ」


 それは何とも…


「ははっ、単純だよね?でも、そこがあいつの長所でもあるんだ。あいつは結局全流派超級まで取得し、どの流派にも対応できる剣士になったんだ」


「そんな過去があったんですね」


 どの流派にも対応できる、万能の剣術。やはり、そこが知りたかったのだろう。

 最後の模擬戦、結果俺は負けたが、ローガンが納得できるほどの実力は示せただろう。そうであってほしい。


「明日は魔術の勉強かい?」

「はい!ミーヤさんという人に教えてもらいます!」

「あまり無理はしないようにね?君は病み上がりだ」

「はい!」


 元気よく挨拶し、寝床へ向かった。


 ◇◇◇


 次の日、俺は屋敷へ向かった。

 屋敷の門の前に紺色のローブに手には長い杖、正に魔法使いって言うような女性が立っていた。


「おはよう!アレクサンダーくん!今日は魔術の勉強でいいかな!?」


 朝から元気いっぱいだ。

 小柄で深緑色の髪のポニーテールが印象的な彼女の名はミーヤ、ローガンの部下で唯一の魔術師だ。


「昨日、聞いたかも知れないですが、私の名前はミーヤ!ここで魔術師をやっています!得意な属性は火!その中でも爆裂の魔術が特に好きです!君は!?」


 得意な属性が火と言うのはわかったが、好きと得意は別だよな…?

 昨日盛大にやらかしてたし。


「僕は知識として覚えているだけなので、得意な属性とかはまだわかりません…、試しに使ってみた属性は火でした。」

「火ですか!最初に使う魔術は無意識に得意または、好きという感情が含まれてるんですよ!!つまり、アレクサンダーくんと私は同類ですね!!」


 キラキラした笑顔で言われても、なんだか嬉しくないな。

 そう思いながら案内されたのは室内訓練場。


「外で訓練はしないのですか?」

「外でやってしまうと、もしも制御が効かなくなった時に街に被害が出てしまうんです」


 ラルトから聞いた話では、ミーヤが配属されたばかりの時に森をまるまる燃やし尽くしてしまった事があるらしい。

 本来ならクビだが、そこをローガンが説得し、森を開拓し、田畑など農作物の増産に使えると領主に提言し、成功させた功績により、ミーヤのクビは免れたようだ。

 なんだかんだ、言いながらローガンもミーヤが大切で、ミーヤもローガンを慕っているんだ。


「その点!室内でやれば被害は最小限!隊長の懐が寂しくなるだけです!!」


 …たぶん。


「まずは、魔力量を確認してみましょう。手を」

「手?」

「ええ、手を握り私の魔力を送ります。限界がきたら気持ち悪くなります。そしたら教えてください」

「は、はい」


 手を繋ぎしばらくすると俺の体にミーヤの魔力が入って来るのがわかる。心地いい感覚だ。魔力が満たされていく。

 でも、気持ち悪くはならないな。まだ行けそうだ


 しばらくして…


「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、あ、あのアレクサンダーくん…?体調の方はどうですか…?」

「え?あぁ、まだ大丈夫ですね。まだ心地いい感覚です」

「そ、そうですか、もしやとは思いましたが、まさかここまでとは……魔力量の測定は終わりにしましょう」


 そう言い手を離した、魔力測定はどうやら行う方の負担が大きいみたいだ。自分の魔力を送るのだから、しんどくなるのは当然か。


「あの、もしやとはどういう事ですか?」

「実は昨日、隊長と君を引っ張り合った時に少し魔力を送ってみたのです。普通なら急に送られたらびっくりして体が仰け反るはずなんですが。君は、送られた事にすら気づかなかった。

  つまり、君の魔力量、またはその限界量は計り知れないと考えたのです」

「そうですか、それで僕の魔力量は?」

「限界が見えません。しかし、魔力量に無限はありませんので、贅沢に使いすぎるのは控えるべきですよ!」


 ふむ、無限は有り得ないか。でも、魔力量は多いようでよかった。今は剣術中心だが、いずれ戦闘に魔術も組み合わせていきたいからな。

 魔力枯渇で倒れたら元も子もないし。


「わかりました。ミーヤさんの魔力量は多いんですか?」

「自慢ではありませんが、魔術学校ではダントツで1番でした!」


 えっへんと胸を張る。張る胸は控えめではあるが。


「なぜか、ムカッと来たのですが君の視線がその原因で間違いないですか?」

「ごめんなさい」


 悪いことをしたら謝る、人間として当たり前のことだ。


「まぁいいです、それでは、戦闘においての魔術の役割と基本戦法について学んでもらいます!」

「よろしくお願いします!」

「それでは模擬戦です!!かかって来なさい!!」


 おまえもかい。


 ◇◇◇


「いいですか!魔術師はただ火や水などを放出するだけではありません!こうやって身体能力を強化することも可能っですっ!!!」


 そう言い俺の鳩尾に強烈な拳がめり込む。


「さぁ立って!君も身体能力を強化すればダメージも最小限です!やればできる!君ならできる!」

「僕、まだ6歳ですよ…」

「年齢は関係ありませぇぇぇぇん!!!」


 風魔術を纏わせ、強化された右ストレートが決まる。

 K.O.だ。


 ◇◇◇


「目を覚ましましたか?」


 後頭部の心地がいい、これはあれだ、膝枕というやつだ。悪くない。


「ごめんなさい、近年稀に見る逸材だったので、テンションが上がってしまい…」


 ミーヤが申し訳なさそうな顔で覗き込む。


「いえ、魔術師は遠距離だけではないことが身に染みてわかりました。それに、僕は魔力量が多いだけです、逸材かどうかは…」

「逸材です!魔力量が多いということはそれだけ出来ることが多いということです!!それに君は剣術の才能もあります。剣術と魔術を掛け合わせた戦士は歴史を見てもいません!きっと大物になるでしょう」

「ありがとうございます」


 ミーヤなりに励ましてくれたようだ、お陰で元気が出た。


「模擬戦はしばらく控えましょう。まずはさっき私が見せた、身体強化についてです」


 ミーヤの話によると、魔術は火、水、風、岩の4元素から成り立っている。例外的に聖と闇と無がある。

 ミーヤが使っていた身体強化は無属性に該当する。無属性は主に自身の強化に使われるようだ。


「魔術の発動は主にイメージです。4元素はイメージしやすいですが、聖、闇、無の3つはなかなかイメージがしずらいので、こればかりは慣れるか本人のセンスに任せるしかありません。この3つの内だと君が今覚えるべきものは無属性でしょうね。練習しますか?」

「はい!よろしくお願いします!」


 ◇◇◇


「いいですね!やはり君は逸材です!僅か1日で強化魔術を会得してしまうとは!さすがです!」


「はぁ、はぁ、あ、ありがとうございます」


 説明を受けてから休憩なしで6時間、ようやくものに出来た…魔術が楽しくて夢中で練習してしまった。

 ほどほどにしないとミシアに怒られそうだ。


「君ならきっと、どんな道でも成功するでしょう!将来は考えているのですか?」


 将来か…あまり考えていなかったな。

 今が心地好くて、記憶を失くしたままでもいいかなんて思ってしまいそうだった。

 それはダメだ、いつまでもラルト一家に甘える訳には行かない。だとすると…


「冒険者、ですかね」

「冒険者!!いいですね!自由に世界を旅し、数多のモンスターと戦うのも1つの選択肢ですね!…君の記憶も早く戻るといいですね…」

「はい。皆さんを安心させるためにも、がんばります」


 そうだ、俺は記憶を戻さなければいけない、みんなを安心させるため。


「いいですか、どれだけ才能があろうと努力をしない人は大成しません。君なら問題ないでしょうけど!常に初心を忘れないように!応援してます。アレク」


 ラルトとミシア以外で初めてアレクと呼んでくれた人だ。

 意外と嬉しいものだな。


「それでは、僕は家に帰ります」

「明日からみっちり扱きますからね!帰りは1人で大丈夫ですか?」

「強化魔術の全力ダッシュで帰ります!」

「ほどほどに、ですよ」


 ミーヤは呆れたように笑い、見送ってくれた。


 そして家に帰ると


 エマが居なくなっていた。




第3話ご閲覧いただきありがとうございます!


文を打つのも慣れてきた次第ですが、油断大敵!

誤字脱字がないよう気をつけます( ̄^ ̄ゞ

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