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忘却の魔剣士~また、君を見つけるまで~  作者: KUZAKI
第二章 冒険者学校 その1
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第13話 波乱の初日

 

 冒険者。

 冒険者協会から発行される冒険者カードは、あらゆる国を渡る際に通行証ともなる便利なものだ。

 冒険者にはランクがあり、下から

 G、F、E、D、C、B、A、S、SSとなる。

 AとSには下位、中位、上位があり、上位から上のランクにいくには認定試験を受ける必要がある。ちなみに、ローガンは元S級中位、ミーヤはS級下位だ。

 SS級は世界に8人しかおらず、その力は一騎当千とも言われている。


「俺達はE級からか、モンスター討伐ができるようになるランクだな」

「そうだね!アレクが昔倒したグランドウルフ単体はD級みたいだね」

「E級はゴブリンとかローウルフだな」

「実践が楽しみです!」


 入学式を終えた俺とエマ、カルマ、ソフィアの4人は午前の授業のため教室へと向かう。1時間だけ授業を受けて午後からは自由だ。


 エマは俺とお揃いのマントを身に纏い、マントの内側には新品のステッキがしまってある。

 カルマは昨日買った深紅の短いマントを羽織っている。腰には刀身が細めの俺の黒剣と同じ形状の剣が挿してある。

 ソフィアは深紅で腰までのユサールを右肩に掛け、腰にはロングソードを挿している。

 冒険者学校には制服は無いため基本自由だ。


 教室につき、ドアを開ける。俺たち以外の6人はもう既に来ていた。


「お!両部門の首席と次席が一緒に登校とは仲良しだね!私の名前はエイダ・レディア!魔術部門3位だ!」


 栗色のボブヘアーで紫色の瞳が特徴的な小柄の女性が話しかけてきた。

 レディア?確か俺たちの故郷はレディアの街だったよな。ということは、


「ははっ!気付いたかい?面識はないが君達と同郷だよ!まさか、君達みたいなのがレディアに居るとは思わなかったよ!」

「まぁ、俺たちが住んでいたのはレディアの郊外だからな。まさか、領主様の娘さんが同じ特待生とは思わなかったよ」

「首席になれる自信はあったんだけどねぇ。まぁ!君が首席なら潔く負けを認めれるよ!!」

「これからは学友だ、よろしくな」


 清々しい人だ。


「おーい、席につけよー。」


 俺たちの後ろから中年の気だるそうな男が話しかけてきた。無精髭が特徴的な茶髪で茶色の瞳をした男だ。後ろに立たれたら声をかけられなくても気付く。

 だが、この男が声をかけるまで気付かなかった。簡単に後ろを取られた。只者じゃない。


 俺達は大人しく席に着いた。


「はーい、特待生の諸君初めまして。特待生クラス通称特別クラスの担任を無理矢理!任された。イグナス・ブレイドだ。よろしくー」


 皮肉だらけの自己紹介だな。イグナス・ブレイドか。


「あ、家名はあるが貴族じゃないぞー。堅苦しいのは無しだ、ダルいだけだし。なにか質問あるか?」

「はい!先生はなんで貴族じゃないのに家名があるんですか!?」


 エイダが手を挙げた。

 確かに、たまに貴族じゃないのに家名をもった人がいる。


「あー、これな、うちの先祖がなんかすごい人みたいでなー。確か、500年前魔神を倒したんだっけ?それで、どっかの王様からブレイドの家名を貰ったんだ。すげーよな」

「魔神を倒したって…勇者の家系ですか!?」


 驚いた、説明は適当だが、勇者の末裔だったとは…


「先祖はすごいが、俺は大したことないぞ。期待するな」


 嘘だな。適当な男だが彼がもつ戦闘力は計り知れない。どうやら、多大な功績を残すと家名を貰うことがあるらしい。

 近いところだと、アルカナムがそうだろう。話によると長年に渡って王国に上質な武具を提供したことで家名を賜ったらしい。


「まぁなんだ、このクラスからも家名を賜るような英雄が出てくるかもなー、じゃおまえら5位のやつから自己紹介しろ」


 唐突に自己紹介が始まった。


 まずは剣術部門から

 白髪の女性が剣術5位のジェイ。使う流派は亀剣流で今は中級を扱う。最終試験で身を乗り出していたやつだ。


 水色の髪の女性、剣術4位のノア。使う流派は虎剣流で中級を扱う。


 次の男はなんだか不穏な空気だ。深緑色の髪の男だ。


「俺はルーカス、鷹剣流を中級まで扱う。おい、魔術の首席。エキシビションマッチ見たぞ?魔術師が剣を振るなんて舐めたマネすんじゃねぇぞ。ランガンは初級しか扱えない雑魚だ。調子に乗るなよ?」


 に、睨まれた…初日早々嫌な感じだ。

 隣に座るエマがルーカスを睨んでいる。エマだけじゃない、カルマとソフィアもイライラしているようだ。


「次席ソフィア・イグナシアです。使う流派は虎剣流。上級まで扱えます。よろしくお願いします」


 淡々と終わらした。声色も心無しか冷たい。ルーカスに怒っているようだ。


「首席カルマだ。使う流派は鷹剣流。超級まで扱う。正直この中で剣術でライバルだと思えるのはアレクとソフィアだけだ。俺と対等に渡り合いたければ精進することだな。」


 おっと、カルマが想像以上にキレてるな。わざわざそんなこと言うやつじゃない、俺の名前を出したということはルーカスに対する牽制だろう。


「なっ…カルマ!!あんな魔術師をライバルだと認めるのか!?首席として恥ずかしくないのか!?」

「首席として恥ずかしい…?あのエキシビションマッチを見てもアレクを蔑むおまえが1番恥ずかしいと思うが?」

「同感ですね」

「くっ…!」


 ルーカスの言葉に対しカルマとソフィアが非難する。

 首席と次席に非難されルーカスは押し黙った。生徒の言い合いにイグナスはニヤニヤしている。

 なにが面白いんだが。


「じゃ、次は魔術部門なー」


 青髪で高身長の男、魔術5位テオ・アルカナム

 得意な属性は火、4元素は中級まで扱え、その他は初級らしい。


 金髪でやや身長が低めの男、魔術4位セオドア

 得意な属性は水、4元素に加え聖属性は中級まだ扱え、その他は初級らしい。


 先程自己紹介してくれた女性、魔術3位

 エイダ・レディア。

 得意な属性は岩、岩属性は上級、その他の属性は中級まで扱えるらしい。


 そして、エマの番だ。

「エ、エマです…得意な属性は風で、風属性は超級、各属性は上級まで扱えます…よろしくお願いします…」


 うん、エマにしては頑張った方だ。最近色んな人と交流する機会があったからだいぶ慣れたかな?


「風属性が超級!?すごいなぁ、私ももっと頑張らなきゃ!」


 エイダのやる気が上がった。


 そして、俺の番だ。


「アレクサンダーです。得意な属性は火、各属性超級まで扱えます。よろしくお願いします」


 他の生徒が絶句している。


「ア、アレクサンダー君は、やっぱり規格外だね…勝てる気がしないや…」


 エイダのやる気が下がった。


 拍手を浴び、自己紹介を終える。すると、イグナスが口を開いた。


「ほぇー、10歳で全て超級かぁ、半端ねーな。ところでアレクサンダー、おまえは魔剣士と聞いたが、剣術はどこまで扱える?」


 うわぁ、ルーカスが睨んでる。イグナスを見るとニヤニヤしている。

 わかってやってるな、このおっさん。


「はぁ、一応各流派上級まで…」

「はっ!!とんだホラ吹きだな!!魔術師が俺より等級が上だと!?冗談も大概にしないと笑えないぞ?」


 ルーカスが真っ先に否定してきた。


「おー、ルーカス。納得いかねーか。納得いかないよなぁ」


 イグナスがニヤニヤしている。嫌な予感がする。


「先生!!こいつと俺を戦わせてくれ!二度と剣士を名乗れない様にぶちのめしてやる!!」

「いや、俺は剣士とは…」

「いいね!!ルーカスくん!!その意見聞き入れよう!!納得いかないなら納得させるまで!さぁ!やろう!」


 やっぱり、この人楽しんでる。ほんとに教師か?


「え!?いや!先生!授業は!?」


 剣術5位のジェイがイグナスを呼び止める。


「ジェイ!おまえは魔術師が剣士を名乗るのに納得しているのか!?」


 イグナスが答える前にルーカスがジェイに言った。


「いや…それは君が言っているだけだろ?僕はアレクサンダー君の剣術は素晴らしいと思ってるけど…」

「チッ、おまえもか…!ノアはどうなんだ!」

「アレクサンダーの剣術、私より強い」


 どうやらルーカス以外は俺を認めてくれているらしい。いいヤツらだな。


「くそ!プライドのないヤツらめ!」

「魔術師だと見下しているおまえのほうが剣士の恥さらしだ。さっさとぶちのめされてこい小物」


 おぉう、カルマはどうでもいい奴には辛辣だなぁ…


「いいだろう!俺があいつに引導を渡してやる!」

「いいね!やろうー!」


 ノリノリなのはルーカスとイグナスだけだ…

 俺達は授業と称して訓練場へと向かった。


 ◇◇◇


「いいかぁー殺しは無しだぞー、いいなー?アレクサンダー」

「うっ…わ、わかってますよ!」


 ランガンを殺そうとしていたのはイグナスはわかっていたらしい。殺気はランガンにしか向けてなかったはずだが、やはり只者じゃない。


「お互い使用する剣は木剣、自分の剣に近い形を選べよー、どちらかが参ったと言うまで戦い続けろーいいなー?」

「すぐに言わせてやるよ」


 ルーカスがニヤケながら言ってきた。


「そうか、腹減ったんだ。なるべく早く終わらせよう」

「舐めやがって…!」

「はーい、互いに剣を構えてー」


 ルーカスと俺は剣を構えた。


「はじめー」

「鷹剣流の圧倒的スピード見せてやる!!」


 そう言いルーカスは走った。

 さすが鷹剣流中級、スピードは良い方だな。10歳にしては。


「くらえ!!」


 ルーカスが四方八方から攻撃してくる。

 それに対して俺は1歩も動かない。


「はっはっは!!手も足も出な…うぐっ!?」


 一方的に攻撃しているはずのルーカスが一方的に傷を負っている。


「わかっていたことだが、アレクの圧勝だな」


 カルマがアレクの勝ちを確信した。


「え!?なんでルーカスだけ傷を負ってるの!?」

「よく見てみろ」


 ジェイの言葉にカルマが答えた。

 ジェイは目を凝らす。


「あれは…蛇剣流!?ルーカスの連続攻撃を全てカウンターしているの!?」

「そういうことだ」


「蛇剣流『明鏡止水』」


 迫る斬撃を正確に受け流し、その流れで相手へ攻撃する。無駄な動きが無くなれば無くなるほど技の制度が上がり。傍から見たら、攻撃者が勝手に傷を負っていくように見える。


「すごいな。あれほど洗練された明鏡止水を10歳の少年がやってしまうとは」


 そう言いイグナスは感心する。


 決着はすぐについた。カウンターを受け続けたルーカスの動きが鈍くなり、そして止まった。


「うぅ…なんだ…これ…」


 ルーカスの体はボロボロになり、あらゆる所に青アザができている。跪くルーカスを俺は睨む。


「俺はここから動いていないぞ」

「ひっ…ま、参りました…」


 その言葉をトドメにルーカスは萎縮し、負けを宣言した。俯くルーカスを横目にみんなの所へ戻った。


「すごい!すごい!1歩も動かずに勝っちゃった!!」


 ジェイは興奮を隠せずぴょんぴょん跳ねている。


「さすがアレクさんですね。もう一度虎剣流を見たかった気もしましたが…」

「俺は鷹剣流を期待していた」

「どっかで見れるだろ。これから5年間もあるからな」


 ソフィアとカルマは自分の流派を見たかったようだ。鷹剣流相手だと蛇剣流が1番楽だからな。人間楽な方に逃げたくなるものだ。


「アレク!さすがだね!」

「当たり前よ」


 そう言いエマとハイタッチした。

 後ろではクラスメイトが拍手していた。


 入学初日、波乱な幕開けだがこれからの冒険に胸を弾ませながら昼食へ向かった。

 午後からは自由だ、さっそく依頼を受けに行こう。


第13話ご閲覧ありがとうございます!


次話をお楽しみに!

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