90.二対一の闘い
90.
二対一の闘い
地下道では、ジョニーが昔の仲間と闘いを始めようとしていた頃、ギルド支部は魔物の手に落ちていた。
そして、アルキメデス砲を稼働させようとしている。
「なにから狙う?」
「ああ、国道を警備してるハンターとシェリフを焼き肉にしてやろうぜ」と、豕喙人が会話していると、港に船が付くのが見えた。
おそらく、時間からして、西の英雄であるヤマモトを乗せた船であろう。
「あの船、ちょうどいい大きさだぜ」
「ああ、ちょっと遠いが、どうだろう?」
「まあ、やってみようぜ」
というと、豕喙人たちは、アルキメデス砲を遠方の港に向けて、起動させていた。
「よし、船を燃やすぜ」というと、アルキメデス砲は船を照射しているでは!
さすがに遠方であったため、大爆発とはいかなかったが、火の手が上がり、立ち往生しているようだ。
港方向に逃げていたギルド職員たちが、あの船がヤマモトの乗る船と、気づくのには少々時間がかかったようだった……
さて、ジョニーはアリソンとカーリーと対峙することにした。
しかも、手出しは無用だ!
「ジョニー、お前が実力を隠していたから、オレたちはBランク止まりだったぜ」
「ああ、お前のせいだ!」と、アリソンとカーリーがぼやいた。
そして、どういう訳か、アリソンもカーリーも剣士だった。
「三人とも剣士のパーティー?」と言う疑問の声が漏れていたが、オレもそう思う。
ダメではない!
確かに、三人とも剣士で上手くいく場合もある。
ただ、偏りが生じる。
剣士の間合いとは、近距離からやや中間までだ。
槍や薙刀のように中間距離専門武器には劣る。
魔法や弓矢のように、遠距離が出来ないので、近づくまで数を減らせない。
ようは、バランスが悪いのでBランクどまりだったというのも納得だ。
ジョニーの腕が良いので、Bランクまでこれたのだろう。
被害者はジョニーなのでは?
ちなみに、うちがパーティーと思われているのは、バランスが良いせいだろう。
オレが格闘戦から近接戦闘までを行う。
ビリーも格闘戦から投擲という中間距離攻撃まで行える。
固定砲台のアニーが遠距離攻撃で数を減らす。
足が速い上、一撃で噛み殺せるウルフの横綱がかき乱すのだ。
そして、今は、何が出るかわからん毒堀がいる。
そう、毒堀の武器と言えば!
オレが今まで見た武器は、ハンマーや剣以外に、ロングボウに吹き矢、爆弾などの火薬、さっきは炭酸ガス中毒を起こす消火器もあったな。
他にどんな武器を用意しているのか、楽しみでならない。
さて、純粋に剣士同士が二対一で闘うのなら、数の有利が働くが、Sランクのハンターだ。
何も用意していない訳がない。
ジョニーに斬りかかったアンソニーが、盛大にぶっ飛んだ。
魔法を付与した爆裂剣の一種だ!
なんと、斬りかかったアンソニーの右腕から血が流れている。
「コマンダーって、血を流すのか?」と言う声が、口々に聞こえてきた。
サイボーグではあるまい、血は流れているだろう。
「な、なんだと。そんな技は、昔、使っていなかったぞ」とカーリーが言うと、また、ハンターたちから失笑が漏れた。
「そんなんだからBランク止まりだ」と言ってやりたかったが、オレは残念ながらCランクだ。
Aランクにならないと、言ってはダメだろうか?
だとすると残念だな!
すると、ジョニーが二人に言った。
「もう、良いか?」と。
これは、もうとどめを刺すということだな。
Sランクのハンターの動きを勉強させてもらうことにしよう。
他のハンターたちも静まり返っていた。
「ジョニー、悪かった。お前は正しい。だから、オレは魔人の力を得て、分かったんだ」
「何が、分かったんだ?」
「やはり、努力しないとダメだと。ジョニー、お前みたいに」と、カーリーと言う男が言った。
「おい、カーリー。オレを見捨てるのか?」と、右腕から流血しているアンソニーが叫んだ。
なんて安い連中だ。
カーリーという男がジョニーに頭を下げて、近づいてきた。
しかし、敵のコマンダーを味方にするわけにはイカンだろう。
「ジョニー、オレはお前の味方になるぜ。また、パーティーを組みたいんだ」と、握手を求めてきた。
なんと、ジョニーは、自分を裏切った男と顔を合わせると、と言ってもフルプレートだから、顔は見えないが、頷いている。
「マジかよ」という声が聞えてきた。
「いや、本当に受け入れるの?」
「……」
しかも、ジョニーは握手もするようだ。
カーリーは、ニヤリと笑い喜んだ。
すると、カーリーの右手は、「ドカーン」と言う音と共に、消し飛んだ。
実は、ジョニーは、籠手にも爆裂を仕込んでいたようだ。
爆裂剣ならぬ、爆裂拳だった。
握手をすると見せかけて、篭手で殴ったのだ。
「ほう、右手が消し飛んでも、生きておるわ。痛みで気を失うかと思ったんじゃけどな」
「さすがだな。コマンダー」
しかし、大量出血で戦闘不能になるのは時間の問題だろう。
すると、この隙に、先にやられたアンソニーが魔法石をもって逃げようとしている。
あの魔法石は!?
忘れもしない。牧場の町で見たアレと同じだ。
「ゴブリン、オーガ、フルフル。ハンターたちを襲え!」と命じた。
ドッと魔物たちが、ハンター目がけ襲ってきた。
しかし、前にいるジョニーは、ハンターたちのいるところに戻るのでなく、盛大に爆裂した。
すると、多くの魔物が吹っ飛んだ。
ジョニーが爆裂剣を地面にたたきつけたのだ。
「ほう、こんな使い方があったのか」
さすがだ。一人でSランクになっただけある。
広範囲攻撃もお手の物だったようだ。
すると、逃げるアンソニーの死体が、転がってきた。
今の爆裂攻撃で死んだわけではない。
その証拠に、腹に大きな穴が開いている。何が貫通したのだ。
そして、広間の後方から出てきた男は、
「オレはコマンダーはコマンダーでも、ジェネラルだ」と言い放った。
なんだ。
いつになったら最終章は終わるんだ。
次回の空手家は、ジェネラルがハンター退治をします。
次回もよろしくね!