88.第三層の入り口
88.
第三層の入り口
プリンスオブホワイトの街のギルド支部は魔物に制圧された。
生きている者は、港へ走っている。
毒堀の傑作品のアルキメデス砲もオーガに運ばれている。
ギルド支部の屋上から、ハンターたちを攻撃するためだ。
アルキメデス砲が構えている中、SSランクのハンターの西の英雄:ヤマモトの乗る船が港に着こうとしていた。
さて、地下道のハンターと国軍の会議に決着がついたようだ。
幸いにもSランクハンターは9人残っている。
次、Sランクハンターが戦闘不能になった場合、撤退するというかなり消極的な判断だった。
そして、そのことが告げられると、
「それは危ないのではないのか?」
「そうじゃな。Sランクハンターが戦闘不能にならんと撤退の判断できんのじゃからな」と、オレと毒堀が言った。
オレは、ふと思い出した。専守防衛のどこぞの国を。
あの国は、「誰かが死なないと、専守防衛として軍事力を行使してはならない」らしい。
ハッキリ言って、ボケているな!
「闘いとは、先手である」とは、古の空手家:本部朝基の言葉だ。
ここで言う、先手とは、先に手を出すという意味ではない。
精神的に、相手を抑え込んだ状態にすることだ。
そして、本部朝基は、百戦錬磨の無敵の空手家であった。
それはさておき。
負傷者は、第三広間の治療班に任せ、討伐隊は進むことになった。
第三層に降りる階段が二つある。
どちらか一方を進めば、もう一方から敵が第三広間へ進行するのではないだろうか?
負傷者を手当てしている衛生兵が危ないことになる。
本来なら、それを食い止めるのが後発隊の役目なのだろうが、もう、先発隊も後発隊もなく、八班として動いている。
Sランクハンターが言った。
「後ろの二班を残して、手前の階段を降りることにしよう」
誰も、納得したわけではないのだが、頷いていた。
あまり、考えたくないのだろう。
面倒だ! と顔に書いてある。
そして、階段を降りると、小さい広間があり、さらに長い通路の奥には、リードのいる大広間だ。
「いよいよだ」
そして、大広間の手前の小さい広間に着いたが、魔物も、かなりの戦力を割いていた。
ゴーレムが突っ込んできた!
それを受け止めたのが、Sランクハンターのミスター タンクマンという男だった。
見るからに怪力自慢の男だ。
両手に大楯を持っている。
いや、普通、大楯とは一つで十分だろう!?
実は、このタンクマンの大楯は、両手に持つから威力を発揮するようだ。
つまり、挟んで相手を潰すようだ。
オレは、ゴーレムをペシャンコにしたところを初めて見た。
「なあ、毒堀! 今日は、ドリルを持ってきていたのか?」
「あぁ、残念じゃのぉ。残念じゃのぉ」
どうやら、武器をセールスする機会を失ったようだな。
ゴブリンライダーが、オレたちに突っ込んできたが、アニーのファイヤーと横綱の風魔法で、焼かれ、そして、飛ばされてしまった。
ここでは、ゴーレムが最上位の魔物なのだろうか?
無論、そんなはずはなかった。
街の北側の住人の多くは、コマンダーや豕喙人になってしまったのだから。
そう言えば、コマンダーと豕喙人は、どう違うのだろうか?
コマンダーの方が、戦闘力は高いのは分かるが、同じ元人間なのだが。
すると、敵陣から、ちょっと頭のおかしいのが出てきた。
「オレはコマンダーのトーマスだ。ハンターどもよ! オレは一夜にしてAランクやSランクハンターを超えた。魔人の力を手に入れたんだ。ハハハ」と、叫んでいた。
トーマスの後ろにも、コマンダーが二人いたが、「ヤレヤレ」と言う感じで見ていた。
「Sランクのハンターよ。オレの相手になれ!」と、エラそうに命令した。
また、後ろの二人のコマンダーが、「ヤレヤレ」をしていた。
さすがに、これは、“カチン”と来たのだろう。Sランクのハンター数人が前に出たが、フルプレートの男が、他を制した。
「オレにやらせてくれ」とでも言ったようだ。
個性あふれるハンターどもが、頷いている。この男には、それだけの威厳があるのか、皆が頷いていた。
「フルプレートか……重たいだろうに」と毒堀が言っている。
「それに、お金持ちだろうね」と、ビリーが付け足した。
そうだよな。
お金持ちでないと、こんなピカピカの鎧なんて着れないだろう。
そして、おしゃべりコマンダーは、軽い挑発をしているが、フルプレートは、黙って剣を抜き構えた。
「ほう、正当な西洋剣のようだ」
「で、おしゃべりコマンダーはモーニングスターか」
で、決着はなんと言うことはなかった。
フルプレートが、どんどん進みながら剣をふるうだけで、モーニングスターなど、気にもしていない感じだった。
防戦一方と言う奴だ。
おそらく、一振りが重たいのだろう。おしゃべりコマンダーは、下がり続けている。そして、後ろの二人のところまで下がってしまった。
ハンターたちから失笑が漏れる。
そして、おしゃべりコマンダーは、顔を赤らめていた。
「お前たちも、オレを笑うのかよ!」と、後ろのコマンダーに言い放った。
「ふん。口ほどにもない」
「あぁ、つまらん」と言うと、二人のうち一人が、ドンと背中を押した。
そして、トーマスと言うコマンダーは、前に出てしまい、フルプレートに斬られた。
「なんじゃ、口だけだったのぉ」
「ああ、オレが見たコマンダーは二人で、Aランクをボコボコに潰していたが、一人でも可能だと思うほどの実力だった。どうもコマンダーもピンキリのようだな」
そして、フルプレートの男は、もう一人とやるようだ。
二人のうち、一人を指さした。
「ふふ、お久しぶりですね。フルプレートのジョニーさん」
「そうだな。お前がうちのパーティーを辞めて、こんなところで会うとはな。アリソンとカーリー」
なんだ、こいつら知り合いなのか?
次回の空手家は、付き合うつもりはない。




