87.第三層に行くの?
87.
第三層に行くの?
「どうじゃ、どうじゃ! 儂の武器の威力はッ。ワハハハ」と、毒堀が武器自慢をしていると、ハンターたちが追い付いてきた。
「おい、氷魔法に水魔法が使える者を連れてきたぞ」と言う声が聞えた。
「おーい、ここじゃ。ここじゃわい」
ハンターたちが、かなり緊張した顔でやってきた。
そうだろう。Sランクの槍使いのアープが運ばれたのだ。
「あっ、これは第二班のAランクの……」
「息があるヤツの手当をしてやってくれ。他は、どうなのかはオレにはわからん。炭酸ガス中毒だと思う」
「それなら、息が亡くなった時点で死亡は確実だ」
「オレたちもめまいがする」
「酸素の多いところで休んでくれ。後は、オレたちでやるよ」
「頼む」と言うと、オレは後方で休むことにした。
時折、横綱が風魔法で、風を起こしてくれるので、通気が良くなった。
これだけで、気分が良くなるのだから、空気とは不思議なものだな。
すると、アニーが栄養剤の様なものを飲んでいた。
ポーションなのか?
「アニー、それは?」と聞いてみた。
「魔力を使ったので、回復薬よ」
やはり、ポーションなのか?
「いわゆる魔法薬なのか?」
そうだ!
ゲームやアニメでは、おなじみの魔力回復やら体力回復やら出来る小瓶に入ったヤツだ。
「そんなものは、伝説よ」と笑われてしまった。
「では、それは?」
実は、この液体は、魔力をためることが出来る蓄電池の様なものだった。
自分の魔力を液体に充電しておくことが出来るようだ。
ポーションと違う点は、自分の魔力を自分に使うものらしく、血液と同じで他人の血液が血液型など、自分に合わないこともあるように、魔力もそう言うものがあるらしい。
なんか、納得だな。
「魔力を多く使ったので補充しておくわ」
「すまんな。手こずってしまって」
「何言ってんのよ。相手は魔人、生きているだけでもすごいのに、倒したのよ」
「そうだな」と、笑ってしまった。
あぁ、笑うとスッキリした。
そのころ、Sランクハンターと国軍の兵士が話し合っていた。
「このまま、第三層へ行っても良いのか」と。
そう、正解は「待つ」だろう。
西の英雄が向かっているのだから。
しかし、そんなことは知らず、現場のハンターと兵士は、必死だった。
必死に考えていた。
「このまま、魔人を放置するわけにはいかない。しかし、全滅するかもしれない」と、誰しもが思っていた。
「もう、先発隊は三班しかいない。100人いた先発隊で戦闘が出来るものが15名だ」
「しかし、後発隊を併せると八班ある」
「後発隊は、BからDランクが中心だ。これからは魔人やコマンダーが相手になる」
「軍隊の考えですまないが、三割の戦力を喪失したら撤退が常識だ。普通なら撤退すべきた」
「じゃあ、魔物も魔人も放置なのか?」
「立て直しが必要だろう」
「他支部からの援軍が、見込めないのだ。港町かスロープシティで防衛するしかない」
「地元民としては、聞き捨てならない」
上層部の連中が、そんな話をしている間に、オレたちは、火傷の処置を兵站の担当者にしてもらっていた。
中には治療魔法が使える者がいた。
「軍隊とか、兵站とか、便利だな」と、オレたちは口々に言っていた。
「皆さんはのんきですね。上層部は喧々諤々ですけど」
「いや、オレたちは決まっている」
「何がです?」
「ラスボスからのラブコールが届いた時点で行くしかないのだよ」
「そうねぇ」
「だな」
「ワオン」
「えっ、皆さんは、第三層に行くつもりなんですか?」
「あぁ、そのつもりだ。議論するだけ無駄だ」と、オレは兵站の治療担当者に答えておいた。
次回の空手家は、ボスのいる第三層だ!




