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86.儂は毒堀、武器商人なり

86.

 儂は毒堀、武器商人なり



 オレたちは、第二班の元に駆け戻ったが、第二班のハンターたちは、苦しそうに踊っていた。


「なんだ? どうしたんだ?」と、オレが声をかけるが、返事は「熱い。熱いんだ」と言う。


 おそらく、それは通路の奥にいる女二人のせいだろう。

 目を隠しているから魔人だ!


「アニー、耐熱魔法を!」

「やっているわ」と言うと、アニーはオレたちと、第二班の連中に耐熱魔法を掛けた。


 しかし、第二班のハンターたちは、息が切れ、酸欠なのか、おかしな呼吸をしていた。


――見るからに戦えそうにないな。炭酸ガス中毒かもしれない。


 すると、女二人の周りの影が揺らいだように感じた。

 次の瞬間、女二人は消えていた。


「どこだ?」


“ゴォォ---”と、オレは見えない熱攻撃を受けてしまった。

「うっ、熱い!」と言うと、オレは飛びのいた。


 アニーの額に汗が流れていた。

 渾身の耐熱魔法を掛けたにも拘らず、数秒後には熱さを感じたのだから。


 一方、オレは、焦っていた。


 見えないところから、見えない攻撃を食らったのだから、対処のしようがない。

 一体これは、どういう攻撃なのだ。熱いのだから、普通は熱か炎ではないのか?


 また、女の周りに影が揺らいだ。


 オレは、それを見て、危機を感じた。


「危ない伏せろ!」と言うと、オレはクーサンクーの形で伏せた。


 その時、オレは理解した。

 何が起こっていたのか!?

 

 そう、オレの髪の毛を、黒い炎が焦がしていったのだ。


 影が揺らいだり、女の姿が消えたのは、黒い炎が動いているからではないのか?

 そして、黒い影は光を通さないと。


 理屈が分かったとはいえ、この暗闇に完全に消えてしまった相手を探せない。居場所の見当もつかない。


 オレは、後ろのアニーを見ると、アニーのローブが少し焦げていた。

 その時、アニーが言った。

「光と影???」と。


「???」

「皆、伏せたままで!」というと、この狭い通路で、盛大にファイヤーをぶちまけた。


 うっ、酸欠になるではないか……

 オレもビリーも、口を押えていた。


 すると、ファイヤーの炎で通路全体が照らされたが、一部、黒いままの箇所が二か所あった。


 ここだ!


 すぐに、オレもビリーも投擲を行った。

 すると、一瞬だけ、女の顔が見えた。


「!!!」


「アニー、ナイスだ」

 しかし、アニーは頷く程度で、喜んではいない。決定打にならないことがわかっていたからだ。


 その証拠に、魔人は黒い炎攻撃を続けてきた。

 悔しいことに、この黒い炎が交わせない!


 アニメや漫画などでは、見えない相手には、目を閉じて、「心の声を聴け!」など言うが、そんな簡単にできるものではない。

 五感を最大限使って、分からないものが、その一つの眼感を閉じて、残り四つで対処できるものではない。

 眼を使わなければ、他の感覚が研ぎ澄まれるというのは、普段から行っていないとできるものではない。


 その証拠に、魔人どもは、ワザと音の出る石などを壁に投げたりしている。


 そして、オレたちは、アニーの魔法に頼り過ぎだ。

 これはヤバいのではないか?

 くそ、オレも息が上がってきた。酸素が少ないのではないのか?



***



 その頃、プリンスオブホワイトの街のギルド支部内には魔物が侵入していた。

 アルキメデス砲は、魔物たちから守ることが出来るのだろうか?


 いや、時間の問題だろう。

 ただ、希望はある!

 国内で二人しかいないSSランクのハンターのヤマモト率いるパーティーが、この街に向かっているのだ。

 間に合うのか?



***



 そんなアルキメデス砲の危機を知ってか知らずか、毒堀は疾走していた。

「ワハハハ、横綱よ! 儂のこのポンプを高く売ってやるぞ。見ていろよ。ワハハ」

「ワォォーン」



 そして、毒堀と横綱が到着した!


「おい、息を止めて動くな! 消石灰砲じゃ!」と言うと、石灰水が圧縮されたポンプから放たれた。


 あの黒い炎は、一瞬で消えた。そして、その一帯には二酸化炭素ガスで充満していた。

 オレたちは、一目散で口を閉じたまま、後退した。


 狭い通路で、火を焚いたり、石灰水をぶちまけるなど、炭酸ガス中毒になる寸前だったぜ。

「味方まで、見えない攻撃をしてくるのかよ!」とぼやかずにはいられなかった。


 しばらくして、横綱が風魔法で、この辺りの二酸化炭素を吹き飛ばしてくれた。


 すると、魔人の女二人は、眼元を抑えて苦しんでいた。

「眼が、眼が痛い」と言っている。※1


 すると、横綱とビリーが駆け出し、首元にとどめを刺した。


 しかし、毒堀がすぐさま、ハンマーで頭を砕いている。ゾンビにでもなられたら困るからだ。


 魔人二人を討伐出来て、正直、ホッとした。しかし、オレは手も足も出なかった。


 そして、第二班のハンターたちを見ると、息をしている者は、一人だけの様だった。

 これで、五班に再編成して、二班潰れたことになる。


 ハッキリ言って、Sランクも、当てにならないかもしれないなッ。


「ワハハハ、どうじゃ、儂の消石灰砲の消火能力は!」

石灰水で火を消し、発生した炭酸ガス、つまり、二酸化炭素でもう一度消す、二段構えらしいが、おかげで、オレたちまで死ぬところだった。


 いや、呼吸困難だった第二班の奴らのとどめを刺したのは、その消石灰砲ではないのか?


「商売繁盛じゃな。隼人よ!」

 いや、 オレは黙っておくぜ。



 次回の空手家は、これでは第三層まで行けるのか?



※1 石灰水:まともに喰らうと失明する。

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