7.異世界の町
第7話
異世界の町
目的の町に入ったが、道は舗装していないため、ホコリ臭い。
ホコリ臭さより、問題なのは、町の周辺は牧場が囲んでいるため、牛臭い。
町のあちこちに牛の排泄物が落ちている。
『道を、舗装しないのは砂かけて終わらせるためだろうな』と思うと、頭の中まで蝿が飛び交いそうだった。
また、町並みは“西部の荒野”の町なのだが、住民はというと、ビリー・ザ・キッドやカラミティ・ジェーンの様なガンマンが闊歩しているのかと思いきや、異世界ファンタジーの世界でお馴染みの剣に鎧、斧で武装している。
牛がブリブリをしている中、道を通り抜け、町案内用の地図を見つけると、町の中央にギルドと書かれた建物があるようだ!
オレは、早速、ギルドに行ってみることにした。
ギルドの中には……
どうやら、ここは、日本でいう役所のような機能を果たしているようだ。
異世界のハンターギルドやら商業ギルドといよりかは、町役場みたいな感じに見える。
具体的には、職業相談や斡旋、住宅相談に養子縁組の相談や斡旋も行っているらしい。
そして、牧場の町らしく、牛の売り買いや牛の健康管理についても教えてくれるようだ。
また、食堂や売店もあり、多目的な場所だな。
しかし、オレの目的はハッキリしている。
“カネだ!”
死んだばかりで、この世界のカネが無いのだ!
まずは、職業相談・斡旋コーナーに行くことにした。
職業相談・斡旋コーナーに行くと、多くの求人票が張り出されていた。
例えば、
【清掃員 日雇いで日給いくら、出来れば1週間以上の勤務を望む】といった具合だ。
中には、異世界らしく、討伐依頼も張り出されていた。
【西野山のブラックベアの討伐 ただしハンター資格はD以上 報酬は……】だとか、【東之山のオーガの討伐 ただしハンター資格D以上 報酬は1体……】等が張り出されていた。
討伐は報酬が良い!
しかし、オレには、ハンター資格など無いため、清掃員だろうがなんだろうがやるつもりだった。
そして、受付に並ぶこと数分で、自分の番がやってきたのだ。
受付嬢に軽く挨拶を済ませ、この世界で初仕事になることを伝えると、次のことを聞かれた。
「住宅は確保されてますか? また、どのぐらいこの町に留まりますか?」と言ったものであった。
「来たばかりで家は確保していない。期間も決めてはないが、ダメなのか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。
でしたら、当ギルドの宿舎をご利用ください。素泊まりで狭いですが、何泊でも出来ます」
「それは有難い」
「ただし、当ギルドの仕事をして頂くことが条件ですので、まずは、何らかの依頼を完了して頂くことになります」
「了解したッ」
「早速で申し訳ありませんが、求人票の中から、1つ選んでください」と受付嬢は言い、求人票の説明をしてくれた。
求人には資格の必要なもの、経験の必要なもの、装備が十分でないと受けられないものがあった。
先ほどの討伐は、ハンター資格が必要で、一定期間、求職紹介を受けギルド主催のハンター資格試験に合格する必要がある。
この町で発行しているハンター資格は、CからFランクで、基本的には大人はEから始めるらしい。
その上のSやA、Bの試験はというと、SとAは国家が行うらしい。
Bは複数都市が集まった地区で行うとのことだった。
ハンター資格を受験する者は多く、理由は『報酬に上乗せがあることが多い』ため、人気だそうだ。
同じ仕事をしても単価が違うなら、カネの貯まるのも早いと言うことだな。
最初の依頼を完了することが出来ないと、宿舎に泊まれず、今後の依頼にも影響が出るとのことなので、最も簡単な依頼を受付が用意してくれた。
「お姉さん、ありがとう。助かる」と感謝をし、求職依頼を見ると、予想通り清掃員だった……
まあ、掃除ぐらいなら出来るはずだ!?
しかも、依頼主がギルドの清掃課なので、すぐに依頼主のところへ行ける上、この依頼のみで宿舎に入ることが可能だそうだ。
あまりにも勤務時間が短い依頼だと、複数受けてもらうことになるそうだ。
確かに1時間の労働と1日では同じというわけには、イカンだろう。
兎も角、オレは、ギルドの衛生部清掃課に案内された。
次回の空手家は、うんちの清掃をします。