3.出発
第3話
出発
何故だか、次の日も小屋の所有者は現れなかった。
まだ、食料もあるとはいえ、無くなってからでは、手遅れになるかもしれない。
『手は早めに打ちたい』と思い、オレは数日分の食料を持ち、この小屋周辺を探索することにした。
しかし、ひとつ判断しかねていた。
『武器はいるのだろうか?』と。
防具はともかく、ロングソードを持ち歩いていたら、警察に捕まるのではないか?
しかし、外はあの大型犬のような獣が闊歩しているわけだ。素手では心もとない。場合によっては、大型犬の他にも危ない獣がいるだろう。
取り敢えず、ロングソード、籠手、革鎧を装備し、ナイフも携帯することにした。ナイフは戦闘にも、調理にも使える優れ物だからだ。
水に食料…… 食料と言っても、干し肉、乾燥野菜といった保存食しかなく、後は塩を念の為、用意して、山小屋から出ることにした。
とはいえ、近辺の探索が目的だし、山小屋の所有者も、そう何日もオレをほっては置かないだろうから、すぐ戻るつもりであった。
この時点では。
山小屋を出ると、この山小屋から道が伸びており、一本道となっていた。
つまり、この道を通って来たはずなのだ。
そして、しばらく進むと墓地に出た。
墓地と言っても、日本の墓石が高く立っている墓地でなく、西洋風の低頭の墓石であった。
『あの山小屋は、この墓地の管理小屋なのでは?』という疑問が、オレの頭を掠めたが、まあ、進むしかない。
墓地の中を進むしか、通行できそうな道は眼前には無かったからだ。
***
西洋風の墓地を進む。かなり広大な敷地だ。
そして、この墓地は、どうやら一個人で1つの墓石を所有するらしい。
日本のように“○○家之墓”と言うものではないようだ。
名前の下には、生存期間が記載されていた。名前は日本人もいれば、他国の名前もあった。
そして、皆、死後、2、30年経過しているようだ。
オレが、そのような事を考えていたら、墓石の前には、白い土筆のような物が、数本生えているではないか!?
「なんだ?」と近づいてみると、白い土筆は、ズズズっと急成長した!
土筆ではなく、これは白骨の指だ!
そして、地中からガイコツが這い出てきた。
スケルトンだ!?
そのスケルトンは、カタカタと骨やら歯を鳴らして、立ち上がり、オレに近づいてくるではないか!
オレには、スケルトンのカタカタという音は、自身を威嚇している音のように感じていた。
動くガイコツ、スケルトンには驚かされたが、焦りはしていなかった。
そのお陰で、身体は、いつの間にか臨戦態勢を取っていた。
そして、ロングソードを抜き、構えた。
その間、スケルトンの後ろには、別のスケルトンが這い出て、数が、ドンドンと増えていく。
『これはマズい』と思い、目の前のスケルトンに「ハアッ」と大きく息を吐きながら、オレはスケルトンの鎖骨を袈裟斬りにした。
すると、スケルトンの身体はバラバラに砕け、白骨が地面に散らばった。
どうやら、ロングソードは刃物と言うより、叩くように使うらしい。その勢いで骨は砕け散ったようだ。
また、先が鋭いので、刺突にも使えるだろうが、スケルトンに突き刺す場所などないわけで、ぶっ壊すしかないようだ。
そうして、オレと十数体のスケルトンとの格闘が始まった。
次回の空手家は、墓に潜んでいたのはスケルトンだけではなかった。
こんな所で死んでしまうなら……